■評価:★★★☆☆3.5
「田舎町の息苦しさと距離の近さから来る親近感の良さ」
【配信ドラマ】自由研究には向かない殺人のレビュー、批評、評価
2024年8月1日配信開始のNetflix制作の青春ミステリードラマ。
イギリスの女性作家、ホリー・ジャクソンによる2021年8月24日刊行の小説を原作とする。
【あらすじ】イギリスの小さな町で17歳の少女が殺害されてから5年。事件の真相を突き止め、真犯人を暴くべく、ひとりの生徒が謎解きに乗り出す。(Netflix引用)
私は好きな作品であっても、評判の良さによって後に制作された続編は、積極鑑賞をしていない。
(元々、3部作構想があり、1作目の評価を受けて続きが制作される等のケースは例外)
1作のみで完結を目指し、全力投球で作られているので、続編の2作目や3作目が、前作の面白さやクオリティを超えられる可能性は低いと思ってる。
よく映画界隈では、傑作の続編は失敗するイメージに付きまとわれている。
例えばソリッド・シチュエーション・スリラーの『ソウ』。
1作目の込み入ったシナリオに、クライマックスに訪れる大どんでん返しは最高に楽しませてくれた。
大ヒットを受けて作られた2作目は、ちょっとしたドンデン返しと、ハードな描写のみが再現されただけの平凡な作品に成り下がってる。
他にも革命的な設定が面白かったSF映画『マトリックス』、最高のコメディ映画『ハングオーバー』などのパッとしない続編は多い。
そのため、1作目がいくら面白くても、2作目以降は鑑賞価値は薄いと判断し、未鑑賞のシリーズものは多い。
本作は、本国イギリスやアメリカが大ヒットを記録し、『優等生は探偵に向かない』『卒業生に向かない真実』、本作の前日譚である『受験生は謎解きに向かない』の3作の続編が執筆された青春ミステリー小説。
とりあえず評判の1作目だけ読むか、くらいの軽いノリで手に取った。
期待を超える魅力があり、すぐに2作目を読むに至った。
まだ未読の残り2作を読破するのも時間の問題。
珍しく夢中になった小説シリーズの1作目がNetflixドラマになると聞きたら、鑑賞しない選択肢は皆無。
すぐに休眠中だったアカウントを叩き起こし、私に大好きなキャラクターたちの具現化した姿を見せていただいた。
原作の小説には出せなかったルックの良さに魅力された。
オシャレで連想する地域といえば、国際的なファッションショーのパリコレを開催するフランスを含めたヨーロッパだろう。
私達が日頃、よく目にするハリウッド映画、つまり、アメリカって意外とファッション的にはダサい。
『プラダを着た悪魔』のようなアパレルが題材の物語や、元グッチのデザイナーで、自身のブランドも世界的に成功を収めるトム・フォードの監督作品などは例外として、ハリウッド映画に出てくるキャラクターのファッションは平凡で、ファッション好きの私の目に留まることはほとんどない。
だが本作は、ハイブランドのバーバリーや、ロエベのデザイナーのJW アンダーソンを排出したイギリスがドラマ制作しているだけあって、キャラのファッションがめっちゃオシャレ。
まずシルエットが良い。
主人公のピップは丈の短く、オーバーサイズのカーキのMA1にインナーはタイトで腹がわずかに覗くTシャツ、パンツは太めと、くびれが強調された責めたシルエットのファッションを自然と着こなしている。
絶対にこんなオシャレさんは一般的なハリウッド映画では見られないので、服好きとしてはキャラたちの服装を眺めているだけで楽しい。
また、2024年現在のトレンドである古着のようなレトロカジュアルを取り入れているので、アイテム単体としても私は好きだった。
また原作の通りピップ、スクールカースト的には2軍、三軍に位置するさえない少女の設定。
ファッションはオシャレだけど、メイクは控えめだったりと、ピップの原作としてのポジションを上手く取る絶妙なバランスを取れている印象はあった。
(スクールカースト頂点に君臨するみんなが大好きで憧れる失踪中のホットガール、アンディと比べ)
また、舞台のロケーションも抜群。
深い緑の木々に覆われた森の傍らにある田舎町が舞台だ。
頻繁にピップらが赴く森、草原、湖といった自然の恵みは、東京に住む私からすると、思わず画面に手を伸ばしたくなる美しさだった。
見ているうちに私の頭から葉っぱでも生えて来るかと思った。
キャラクター造形について。
シナリオは五百ページの大長編をほぼそのまま描きている。
本シリーズの一番の魅力は、軽妙なユーモアセリフの応酬にあると思っている。
高校生連中(中には二十歳前後のキャラもいる)らしい、軽いユーモアを交わすシーンは可愛らしいし、面白いので凄く好き。
つまり、本作の一番の魅力はキャラクターにある。
キャラクターの魅力はおおむね、再現されていると思った。
原作にあるいくつかの好きなユーモアセリフは省かれていたが、健在の箇所も多い。
例えば、『賄賂マフィン』とか相棒のラヴィがピップを『巡査部長(原作では部長刑事)』と呼んだりなど。
若くはないが、ピップの父親のユーモアが控えめだったのは少し残念。
あと、原作のピップは少しふくよかな印象があった。
(ピザで尻がでかくなった、的な悩みを会話を父としている)
若干、芋っぽい印象のあった原作よりも、ドラマ版は洗練されているのが若干気にはなったが、許容範囲。
ただ、後半でとあるキャラの掴みどころのない面が露わになる重要なシーンがある。
ドラマ版では恐らく視聴者に分かりやすくするため、単純化されていたのがかなり違和感があった。
小説版ではこの複雑なキャラ造形が不気味に思えたので。
めちゃくちゃ絶賛、ってわけではないけど、ジュブナイル・ミステリーとしては悪くない出来栄えだった。
メインキャラは魅力的に描けていたので、ぜひ、全4作すべて映像化してほしい。
ユーモアに溢れる会話劇が面白いおすすめ作品はコチラ。
■ゴーストバスターズ/アフターライフ
自由研究には向かない殺人の作品情報
■監督:ドリー・ウェルズ
■出演者:エマ・マイヤーズ
ザイン・イクバル
インディア・リリー・デイヴィス
アシャ・バンクス
ヘンリー・アッシュトン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):82%
AUDIENCE SCORE(観客):69%
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