映画『首』ネタバレなしの感想。武将や忍び等の様々な人物の野心が入り乱れ本能寺の変に向かう

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■評価:★★★☆☆3.5

「新しい解釈で描かれる戦国時代の人物たち」

【映画】首のレビュー、批評、評価

『その男、凶暴につき』『あの夏、いちばん静かな海。』『ソナチネ』『キッズ・リターン』『HANA-BI』『菊次郎の夏』『BROTHER』『座頭市』『アウトレイジ』シリーズの北野武監督による2023年11月23日公開の時代劇映画。

【あらすじ】天下統一のために激戦を繰り広げる織田信長。そんな中、彼の家臣・荒木村重が反乱を起こし、姿をくらます。そこで、信長は自らの跡目相続を餌に家臣を集め、村重の捜索命令を出す。

北野武監督の映画作品は、個人的にはかなり思い入れがある。
無駄がなく、余計なことを語らず、哲学的で深みのある作品が多いイメージが有り、好きな作品が多い。

反社会勢力を題材としたバイオレンス作品が多く、中でも私は『BROTHER』が好み。
『ソナチネ』や大ヒットした『アウトレイジシリーズ』では、日本を舞台としている。
『BROTHER』は日本の凶悪な反社連中がなんと、アメリカに移住するのだ。
異国でシノギで稼ぎ、徐々に勢力を拡大していく野心感が個人的にはかなりツボで、何度も観返している。
またタイトルにもなっているテーマの兄弟の絆の素晴らしさも、インパクトのあるシーンの連続で描かれていて好み。

また、バイオレンス性が控えめな青春映画『キッズ・リターン』も最高すぎる。
ラストシーンに吐かれるあの一言の威力が凄まじい。
私は41だが、おっさんになっても染みる最高のセリフ。
人は天に召される瞬間までずっと、あの一言を忘れてはいけない。

本作に話を戻すが、北野武によって新解釈された戦国時代が描かれる時代劇となる。
時代劇はどこかお堅くとっつきにくいネガティブな印象がある。
他のジャンルと比べると、観る機会が極端に少ない。
『鎌倉殿』とか、話題になっている大河ドラマもチェックしたいんだが、先行イメージに邪魔をされ、手を付けられずにいる。

だが本作は、北野武が「大河ドラマみたいな綺麗事は描きたくない。戦国時代はもっと醜悪な世界だ」とインタビューで語っていて、非常に強い関心が湧いた。
刺激的な予告も鑑賞意欲を煽られ、今回、配信でだが、視聴するに至った。

全体的にキャラクターが魅力的だった。
冒頭から加瀬亮扮する織田信長が見せる、下品な傍若無人っぷりがたまらない。
聞き取りづらい酷い訛りで、喋り方も挑発的で見苦しい。
わがままな子供がそのまま大人になった民度の低い人間が権力を振り回りしており、先に待つ不穏な展開に期待を煽られる。

北野武扮する秀吉も、信長から「サル」とバカにされつつ、狡猾に天下を狙う悪い感じが生々しくて良い。
秀吉のメンヘラちっくな感情の起伏に振り回される弟の秀長扮する大森南朋と、浅野忠信が演じた黒田官兵衛も不憫で可愛い。
時折、見られる3人のアドリブシーンは特に好き。
(北野映画は、よっぽどのことがない限りは一発撮りのため、参加する俳優陣の本番に向けての緊迫感はえげつないそう。
そんな中で陽気にアドリブをかましてくる北野に対し、大森南朋はもう本当に勘弁してくれ、と心で嘆いていたとインタビューで語っていた。
第三者の私からすると笑えた(ごめんね))

お堅いキャラはほとんどおらず、みんながみんな、天下や出世の欲望がダダ漏れな醜さ全開で、私の凝り固まった頭がイメージする時代劇をぶっ壊してくれた。
クリエイターとして、北野武は素晴らしいと思う。

北野武はインタビューで語ってたが、戦国時代は何十ものたくさんの解釈があり、その中の一つが教科書に載るに過ぎない。
こういう柔軟な発想で作られる時代劇があっても面白いし、間口が広まって多くの人に楽しまれる気がする。
結果的に歴史に関心を持つ人も増える。

ただ本作は、北野武作品に求める緊迫感に欠け、あまりツボではなかった。
北野武作品のバイオレンス映画は瞬サツ劇にこだわっている。
戦闘シーンに入れば、キャラたちの余計な言動は皆無で、次のシーンにはどっちかが命を落とす異様なスピード感がある。
戦い演出が物凄くリアルなのだ。

良くアクション作品って、ダラダラとじゃれ合ったり、あるいは、銃撃をすり抜けてなかなか撃たれなかったり、間延びさせることが多い。
だが、北野武作品はアクション映画ではなく、バイオレンス映画のため、瞬きする内に勝敗が決する。
常軌を逸する緊迫感があり、目が離せないのだ。
次のシーンにはそれまでたっぷり描かれた重要人物があっさり退場することも良くある。

だが、本作は戦闘がダラダラしていた。
また、斬りもしないのに、むやみに刀を抜くのもイヤだった。
少年ジャンプの『ワンピース』でも、「ピストルを抜いたからには命かけろよ」なんて名シーンがある。
刀を抜くのは覚悟を持って行って欲しいし、抜いたからには必ず、命を奪い合ってほしい。
むやみに刀を抜かれると「どうせ斬り合いしないでしょ」と思ってしまい、緊迫感が失われる。
北野武の過去作の『座頭市』はもっとスリルに描かれていた気がする。

本作は、北野武映画ではなくビートたけし映画の印象。
個人的にはやや期待外れだった。

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■地面師たち

■ブラッシュアップライフ

首の作品情報

■監督:北野武
■出演者:ビートたけし
西島秀俊
加瀬亮
中村獅童
木村祐一
浅野忠信
大森南朋
小林薫
岸部一徳
■Wikipedia:
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):75%
AUDIENCE SCORE(観客):-

首を見れる配信サイト

Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(有料)○(Blu-ray)、原作はコチラ
Netflix:○(見放題)
※2024年8月現在

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。休みの日は映画、読書を楽しみつつ、エンタメ小説を書いています。腹括って執筆しているので、応募した新人賞に落ちると絶望してます。

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