■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★★☆4
「異世界金稼ぎは面白い」
【小説】裏世界ピクニックのレビュー、批評、評価
ストルガツキー兄弟の『ストーカー』を着想元とする宮澤伊織による2017年2月23日刊行のSFサバイバル青春小説。
【あらすじ】仁科鳥子と出逢ったのは〈裏側〉で〝あれ”を目にして死にかけていたときだった――その日を境に、くたびれた女子大生・紙越空魚の人生は一変する。「くねくね」や「八尺様」など実話怪談として語られる危険な存在が出現する、この現実と隣合わせで謎だらけの裏世界。研究とお金稼ぎ、そして大切な人を探すため、鳥子と空魚は非日常へと足を踏み入れる――気鋭のエンタメSF作家が贈る、女子ふたり怪異探検サバイバル!(Amazon引用)
SF小説のおすすめをGoogleで調べたところ、どこかのサイトに本作が挙げられていたので読むに至った。
コンセプトは、ネット怪談(都市伝説)×異世界サバイバル。
オカルトや都市伝説、更にはサバイバルものが大好きな私にとってはドンピシャそうだったので、かなり期待して本屋で手に取った。
通称、裏側(異世界)の湿地で主人公の女子高校生、空魚(そらを)が横たわるシーンから始まる。
早々に、ネット怪談ではお馴染みらしい、白い人型の存在『くねくね』と遭遇し、慌てふためく。
私は名前くらいしか知らない存在なのだが、伝承と同様らしく、裏側に存在するくねくねも見続けたり、存在を理解すると頭がおかしくなる。
分かりやすい敵の特徴が良い。
更に何がいいって、異世界で出会って仲間になった鳥子と共に早々にくねくねを倒すのだが、謎の鏡石をドロップする。
現実世界に持ち帰ると、裏側を研究する女性・小桜が1個百万で買い取ってくれる。
そのため、空魚と鳥子は、金稼ぎのために何度も裏側に入ろうとするのだ。
冴月という裏側で姿を消した鳥子の親友探しがメインストーリーではあるんだが、金稼ぎという読者が共感できるサバイバル要素が良かった。
若干、金額は安い気もするが。
物語が少し進むと、敵を退治するのが命掛けになってくる。
命を掛けで折半した五十万の報酬は、割に合っていない感がある。
他にも尺八様とか、ネット怪談由来のいろんな敵が出てくるんだが、ドロップアイテムとその換金額をリスト化して提示してくれたら分かりやすいし、読者としてはもっとワクワクできたと思う。
次はどんな敵と遭遇し、どんな風に倒すのかが、より関心を持って読めたと思われる。
軽妙な会話劇が個人的には、一番好きだった。
ビビリな空魚に対して、怖さへの耐性がある鳥子との対立が、ユーモアに溢れていて面白かった。
本作は2024/9現在で、9巻まで刊行されている。
キャラが魅力的だと、続きを読みたくなるので、シリーズ化されて長く続いているのは納得。
ストーリーは正直、微妙だった。
怪談や都市伝説要素がある裏側という舞台設定は良い。
でも舞台そのものが、あんまり魅力には感じなかった。
裏側の仕組みもレイヤー構造っぽくなっているんだが、イマイチ理解しづらい不思議な設定だった。
そのせいか、あんまり先が気になるような話ではなかった。
また敵の特徴もくねくね以降は分かりづらい。
読みながら『こいつはどうやって倒したらいいんだろう』的な妄想を、読者にもさせてほしかった。
敵の能力がいまいち分かりづらいので、上記の妄想をするに至らなかった。
後、作者の感性が少し不思議。
キャラはユーモアに溢れていて良かったんだけど、時折、理解不明な言動が見られる。
伏線なのかなって思ったけど、回収されるわけでもない。
またストーリーの展開も何となく尖りすぎてて、読者が楽しめる範疇に収まっていないと思える箇所も、いくつかあった。
全体的に変な話だなって感じ。
キャラは魅力的だけど、続編を読むかは悩みどころ。
世界観が魅力的なおすすめ作品はコチラ。
■横浜駅SF
コメント