■評価:★★★☆☆3.5
「奥さんの言葉には耳を傾けなければならない」
【映画】コンクリート・ユートピアのレビュー、批評、評価
2024年1月5日公開の韓国制作のサバイバル・スリラー映画。
【あらすじ】大災害により荒れ果てた韓国・ソウル。唯一残ったマンションに生存者たちが集まる中、彼らは秩序を取り戻すため住民代表者を選ぶことにする。
突如、自然災害によって街(国)が崩壊し、厳しい環境下でサバイバル生活を強いられる設定は、めちゃくちゃ魅力的。
理由としては、我々が住む日常が瓦解する最悪の展開はリアリティが感じられるから。
『自分だったらどうやって生き延びるのか』あるいは『諦めて自ら命を断つかも知れない』と、妄想しやすい。
本作の設定から真っ先に連想した作品は、謎の大地震に襲われ、修学旅行中に新幹線に乗っていた中学生の主人公らがトンネルに閉じ込められるヤングマガジンの漫画『ドラゴンヘッド』。
『ドラゴンヘッド』は意味不明な謎の結末を迎えてどうもしっくりこないまま幕が降りるのだが、冒頭の絶望感は最高で、未だに読み返したくなる。
話を戻すが、本作は大地震的な自然災害で、主人公たちが住む団地のような大きなマンションのみが原型を留める。
治安維持のため、居住者たちはリーダーをヨンタクという男に決める。
結成された保安部隊は冷酷に部外者を追っ払い、日常生活を守ろうとする。
設定が面白い。
この手のサバイバルものでは、生き残るためにユートピアを探しに旅立つロードムービーものになりがち。
だが本作は、奇跡的に生き残ったマンション内での厳しい生存競争が描かれる。
終末もので、一つを舞台に展開される物語って意外と観たことがないので鮮度を感じられて良かった。
やっぱり大きすぎる権力は危険。
日本でも国の権力を三つに分ける三権分立が採用されているが、権力を与えられた人を見張る監視者がいないとろくなことにならない。
本作でも、ヨンタクは次第に正気とは思えない行動を取る。
だが、限られた食糧やインフラ下の生活を強いられているため、極限状態に陥った住民のほとんどは、ヨンタクの狂った言動を疑わず、ヨンタクの指示に従い、共犯者になっていく。
夫婦や家族が素晴らしさが描かれていたのが良かった。
視点人物の一人である若い男、ミンソンは周りに影響されやすく、暴走しがち。
時には人に暴力を振るったりと、危険な行動をとることもある。
毎回、奥さんのミョンファは「それって間違っているんじゃない?」と疑問を投げかける。
ミョンファのアドバイスを無視しがちなミンソンは、浅い思考で間違った選択を取り続ける。
でも、奥さんは、何があってもずっとミンソンの味方であり続ける。
もちろん生き延びるためには、ミンソンが取るちょっと過激な行動は、必要なのかもしれない。
だからミョンファもミンソンを頭ごなしには否定しない。
とはいえ、結果的に最悪な状況になっても、決してミョンファはミンソンを突き放したりしない。
ミョンファの無償の愛が素晴らしくて、私としてはすごく魅力的なキャラに映った。
個人的には、もっと二人が議論するシーンを観たかったと思った。
ミョンファはミンソンの意見を問答無用に受け入れ過ぎるため。
ミョンファがミンソンを見捨てずにいる理由が欲しかった。
もっとヨンタクがユニークな暴挙に出て欲しかったかなと思う。
確かにやばい挙動は多いんだけど、個人的には本作で発生する事件はやや物足りない。
とはいえ、世界観・設定は魅力的ではあるので、終末ものが好きな人にはオススメしたい。
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■横浜駅SF
コンクリート・ユートピアの作品情報
■監督:オム・テファ
■出演者:パク・ボヨン
パク・ジフ
イ・ビョンホン
パク・ソジュ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):77%
コンクリート・ユートピアを見れる配信サイト
Hulu:○(有料)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、○(Blu-ray)
Netflix:-
※2024年11月現在
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