■評価:★★☆☆☆2
「家庭不和の果て」
【映画】落下の解剖学のレビュー、批評、評価
2024年2月23日公開のフランス制作のドラマ映画。
【あらすじ】雪深い人里離れた山荘で、視覚障がいのある11歳の少年が、転落し命を落とした父の亡骸を発見する。最初は事故かと思われたが、捜査が進むにつれていくつもの謎が浮かび上がっていく。
本作は2023年、世界三大国際映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した。
カンヌ国際映画祭は1946年から開催している歴史のある映画祭。
日本は2018年に是枝裕和監督の『万引き家族』を含む、たった5作しかパルムドールを獲得していない。
日本は先進国だし、世界的に見ても映画が多く作られている国に分類されるだろう。
そのためカンヌで評価されるというのは、とてつもないハードルの高さを感じる。
同時に、パルムドール作品には大きな期待を抱かさせられる。
けたたましい音楽が流れる中で、主人公の中年女性サンドラが自宅の山荘にて、出版した小説のインタビューを受けるシーンから始まる。
サンドラの旦那、サミュエルが屋根裏で音楽を流しながら改装作業をしているらしい。
あまりにうるさい音楽には攻撃の色があり、冒頭からどこか不穏な空気が流れる。
そして、サミュエルは落下する。
積もった雪に覆われた地面に横たわるサミュエルの骸を、盲目の息子、ダニエルが発見する。
展開が早く、山荘での事件ということもあって、古典的なミステリーを期待させられる。
たが、結論から言うと、本作はまるで楽しめなかった。
冒頭から意味深な情報がいくつか提示される。
・やけに煩い音楽が聞こえてくるのだが、夫のサミュエルは地面に横たわる姿が発見されるまで一切姿を見せない。
・盲目のダニエルは壁に貼られたテープの感触で、今いる場所を特定する。
・落下したサミュエルは頭に謎の殴打跡があり、また現場には奇妙な場所にサミュエルの血痕が残される。
これらの情報に加えて、どんな新事実が提示され、サミュエルの事件の真相に迫っていくのか、を期待して鑑賞した。
だが、本作はミステリーではなく、家庭不和を描く地味なドラマ作品だった。
本作は裁判シーンがメインとなる。
上記で挙げた以上の事件現場や、事件当日の新しい情報はまるで追加提示されない。
あくまで新しく導入されるのは、事件以前の主人公サンドラとサミュエルのもつれのみ。
本作は何を描きたかったのだろうか。
サミュエルが命を落としたことで、裁判を通じて関係性が悪かったサンドラと息子ダニエルとの関係が回復していく、というのなら分かる。
だが、そもそも2人が仲悪そうには見えない。
サミュエルが命を落としたことでサンドラとダニエルに何か変化が起きたわけではない。
2時間半という長尺にも関わらず。
映画に詳しい誰かに解説してもらいたい。
特段、魅力的なキャラが出てくる訳でもないので、自分から調べようという気にはなれない。
先日レビューした『怪物』しかり、カンヌに対する信頼はかなり低くなった印象。
家庭不和を題材とした作品のおすすめコチラ。
■極悪女王
落下の解剖学の作品情報
■監督:落下の解剖学
■出演者:ザンドラ・ヒュラー
スワン・アルロー
ミロ・マシャド・グラネール
アントワーヌ・レナルツ
■Wikipedia:落下の解剖学
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):96%
AUDIENCE SCORE(観客):90%
落下の解剖学を見れる配信サイト
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)、○(Blu-ray)
Netflix:-
※2024年12月現在
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