■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「最新ツールを使った私人捜査の面白さ」
【小説】優等生に探偵は向かないのレビュー、批評、評価
ホリー・ジャクソンによる2022年7月20日刊行の青春ミステリー小説。
同著者による『自由研究には向かない殺人』の続編となる。
【あらすじ】高校生のピップは、友人のコナーから失踪した兄の行方を探してくれと依頼される。兄のジェイミーは、2週間ほど前から様子がおかしかったらしい。コナーの希望で、ピップはポッドキャストで調査の進捗を配信し、リスナーから手がかりを集めていく。関係者へのインタビューやSNSなども丹念に調べることで、少しずつ明らかになっていく、失踪までのジェイミーの行動。ピップの類い稀な推理が、事件の恐るべき真相を暴きだす。(Amazon引用)
前作の『自由研究には向かない殺人』は、個人的には最高に大好きなミステリー小説の1つ。
前作のあらすじは、小さな町に住む17才の女子高校生のピップが近所のお兄さん的存在のサルという男の子が自らの恋人アンディの命を奪う事件が発生する。サル自身は自決し遺書を残して、幕を閉じたのだが、ピップは疑問を抱いていた。
本当にサルはアンディの命を奪ったのか。
町民から犯罪者のレッテルを貼られた亡き友人のサルの汚名を返上するため、自由研究の題材として、事件の真相を調べる話。
自由研究という名目で事件を調べるのが、青春作品としての斬新さがあって、非常に素晴らしい題材選択だと思った。
特に良かったのが会話劇。
ピップとその友人たちが交わすユーモア溢れる会話の応酬が軽妙で最高だった。
そのため、読み終えてからはロスが強く、すぐに続編である本作を購入した。
『優等生には向かない探偵』は、前作の事件の関係者の裁判シーンから始まる。
前作のネタバレ前回の内容なので、本シリーズは1作目の『自由研究には向かない殺人』から読むことを推奨する。
本作では、ピップはサルの事件の尾を引きずっている。
というのも、前の事件では真相に迫る代償として、ピップも大切なものを奪われる。
自分や自分の家族の被害を被る結果を避けるため、探偵活動は二度としないと決め込んでいた。
そんな中、ピップの親友の一人のコナーの兄ジェイミーが失踪する。
コナーから兄の捜索依頼を受け、悩みながらも親友の頼みという経緯もあり、請け負うことになる。
果たしてピップは、ジェイミーを見つけることができるのか。
ジェイミーは生きているか。
また、今回こそは、誰も傷つかず、平和な結末を迎えることが出来るのか。
感想として、今回も前回と同様の会話劇が最高だった。
特にメッセージのやり取りで、文面の最後に『X』を入れるのがかわいい。
英語圏でキスを意味するらしく、仲良し同士だとXが増える。
日本には馴染みのない文化に、触れられるのも海外小説を読む醍醐味。
セリフのテンポも良いので、いかにも青春小説を読んでるって感じがする。
実際の事件も、今どきのテクノロジーを駆使して真相に迫って行く流れも、前回と同様+、今作ではアレンジを利かして鮮度を与えている。
ピップは前回の事件について、ポッドキャストで情報を配信していた。
ポッドキャストはYouTubeの音声版で、リアルタイムではないラジオといったところ。
前作で名探偵っぷりを発揮して事件解決に至ったピップのチャンネルは非常に人気があり、何十万人も視聴者がいる。
そのため、ポッドキャストを駆使して、ジェイミーの失踪当日の情報を収集していく。
この新しい流れは良かったし、情報がどんどん入ってくるので、物語の進展も早く、テンポが良かった。
また思わぬ人物が情報を持っていたりと、意表を突く展開も多め。
続編なので、評価は控えめの★3.5にしているが、前作のファンは間違いなく楽しめる良作となっていて嬉しかった。
やっぱり、読み終わるとロスに陥る。
頑固でユーモラスなピップ。
彼女を取り巻く愉快な仲間たち。
彼女らとまた会いたくて、本作もまた繰り返し読みたくなる。
ピップシリーズの最終巻『卒業生には向かない真実』をいつ読むか考えどころ。
4作目として『受験生に謎解きは向かない』もあるんたが、こちらは一作目の前日譚なので、個人的にはロスを慰める効能は低いと思ってる。
やっぱり、ファンとしては最新の時系列の話が欲しいもの。
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■でぃすぺる
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