小説『タイタンの妖女』ネタバレなしの感想。富豪の男が神のような力を持つ男と出会う

SF

■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★☆☆☆2.5

「自由意志」

【小説】タイタンの妖女のレビュー、批評、評価

『猫のゆりかご』『スローターハウス5』のカート・ヴォネガットによる1972年刊行のSF小説。

【あらすじ】時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは?(Amazon引用)

SF小説やアニメ、漫画、映画等をを独自の視点で批評する、私が尊敬してやまないおじさん、岡田斗司夫がYouTubeで本作を熱くおすすめしていたので読むに至った。

当該動画は以下。

本作は、お笑い芸人コンビ、爆笑問題の太田さんの愛読書としても有名で、彼が所属し、彼の妻が運営する芸能事務所『タイタン』は、本作のタイトルから取られていることも良く知られている。

太田さんは常にボケている狂った男の印象がある。
一方で知的で哲学的でもあり、普通のお笑い芸人とは一線を画す存在。

岡田斗司夫のおすすめ図書というのも相俟って、大きな期待を持って本書を手に取った。

ストーリーは、火星旅行していたラムファードという男が、時間等曲率漏斗といった現象に巻き込まれ、波動現象となる。

上記は本作の文庫本の裏側に書かれたストーリーなのだが、意味が良く分からない。
そもそも波動現象って何なんだ。

実際に読んでみると、やっぱり難しい。

読みやすいは読みやすい。
全体的に平易な文体でも書かれてきて、難解な専門用語もたまにちらっと顔を出す程度。
だが、回りくどい癖のある文体と、フリがない唐突感の強い展開の連続で、一体、作者のカート・ヴォネガットが何を言いたかったのかが非常に分かりづらい。

読了後に考えてみたが、答えは出そうにないので、YouTubeで本書を解説している動画をたくさん見て、何となく理解した。

ざっくり言うと、ラムファードという男がいた。
ラムフォードは宇宙旅行中に色々あって波動現象となり、たまに実体化して、地球に現れたりする。
尚且つ、ラムファードは過去未来すべてを知り、もうひとりの主人公であるコンスタントに、さまざまな予言をする。
コンスタントはラムフォードの予言が当たる様を肌で感じていく。
果たしてコンスタントにはどんな未来が待ち構えているのか、といった内容。

本作の主題は自由意思。
作者のカート・ヴォネガットが若いうちに戦争で理不尽に人が命を失っていく惨劇を目の当たりにしており、本作の執筆に至ったそう。

この主題が顕著に描かれているのが、中盤を過ぎた辺りで、ラムファードが地球人を団結させるために設立した「徹底的に無関心な神の教会」の信念。
地球人のほとんどが信仰しているこの宗教は徹底的な平等主義を謳っている。
健康的な人間には、重たい重りがついた足枷を付けさせられる。
イケメンはボロボロのきったない服を着させられる。

こんな感じで人類を無理くり平等にさせようとする宗教であり、無茶苦茶興味深い。

現実問題、人類は平等じゃない。
顔、身長、体型等の見た目は人それぞれ。
障害を持った五体不満足な人もいる。
親を選べないから、生まれた環境も他人とはまるで異なる。
東大生の親の平均年収は一千万を超えるなんて話を聞くし、人は生まれながらにして不公正を押し付けられている。
親ガチャなんてワードが流行るくらい、人は不平等なのが真実だ。

だからこそ真の平等を成し遂げた世界観は無茶苦茶興味深かった。
平等を達成した連中の仕事の様子、恋愛、日常生活を見てみたい。
このシーンは全体的にごくわずかな描写で終わるのが残念だった。
平等をテーマに一冊描いて欲しかったくらい。

本作は、結末が近づくにつれて難解さが加速する。
今の私の人生経験と読解力では本作を完全理解することは難しいので、十年後くらいに再読してみたい。
しかし、爆笑問題の太田さん大学時代に本作に感銘を受けたらしきので、天才的な感性の持ち主なんだろうなと思う。

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タイタンの妖女の作品情報

■著者:カート・ヴォネガット
■Wikipedia:タイタンの妖女(ネタバレあり)
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

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