小説『リカ』ネタバレなしの感想。出会い系で知り合った怪物のような女性リカに追い詰められる男を描く

ホラー

■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★★☆4.5

「出会い系サイト(マッチングアプリ)って怖い」

【小説】リカのレビュー、批評、評価

『パパとムスメの7日間』の五十嵐貴久による2002年2月に刊行されたホラーサスペンス小説

【あらすじ】妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。(Amazon引用)

以前の職場で同僚の映画好きの女性に「『リカ』ってドラマが面白かった」と勧められたことがある。
あらすじを聞いたら無茶苦茶面白そうで、後日調べたら原作小説の存在を知った。
ドラマ版よりもよりグロテスクであるとの情報があったので、さらなる興味を抱いた。

全五巻からなるSF超大作『三体』を読んだ後だったのも相俟ってライトなエンタメ作品を欲していたので、本作を手に取った。

子供もいる平和な家庭を築く夫が主人公。
ちょっとした刺激欲しさに出会い系サイト(今で言うマッチングアプリ)を始めると、とんでもないストーカー女、リカのターゲットにされるサイコホラー小説。

古典的なホラーストーリーの王道の流れで、とても入り込みやすかった。

高校生がキャンプに行き、彼女と性的な運動を始めると、サイコキラーに命を奪われる、といった流れがある。
キャラクターが罪を犯すと、命を奪われるのがホラーのステレオタイプな展開。

高校生からすると、異性との肉体関係を持つ行為は、どこか背徳感や後ろめたさがある。
本作でも、主人公は奥さんや子供がいながら出会い系で浮気相手を探す、罪を犯すので、読者からすると彼が痛い目を見る結果に納得する。
しかし出会い系サイトという舞台がノスタルジーを感じさせて私は良かった。
ネット上の出会いは、2024年現在はスマホのマッチングアプリが主流。
平成に青春時代を送った40代の私からすると、懐かしさに浸れて良い。

話を小説の内容に戻すが、とにかくリカがぶっ飛んでる。
自称28才なのだが、実際は中年女性にも見えるようなやつれた顔貌をしている。
とはいえ、若い頃はキレイだったと思われる面影もあり、顔立ちは整っている。
皮と骨だけのような細身体系だが、走るとめっちゃ早い。(草)
体臭や口臭が酷く、近くにいるだけで鼻がぶっ壊れそうになる。(臭)
病的な嘘つき、妄想癖があり、発する言葉は支離滅裂。
一貫性もなくて、とても信用出来るタイプではない。
酷い依存体質で、気に入った男性を見つけると自分のものにするまで手段を選ばず、徹底的に追い求める。
そのため、一度リカのターゲットにされたらアウト。人生の終わりが確定する。
男からしたら最高最悪の悪役。

ストーリーの展開も良かった。
ただリカの言動が怖いだけではない。
主人公の友達で、協力関係にある探偵がリカの過去を探る。
少しずつ明かされるリカの謎も面白くて、先へ先へとページをめくらされた。

とはいえ、全体的なそこそこの満足度。
斜め上をいく斬新なストーリーがあるわけでもない。
ホラー作品をある程度観てきた人なら、「あ、次、こいつ消えるな」などと先の展開が想像できる。
そのため、面白いけど読後感はだいぶ軽い。
王道の展開を忠実に守っているので、出来ればぶっ壊すような流れを見せてほしかった。

かなり読みやすい小説なので、本を読み慣れていない人にはおすすめしたい。
1日でサクっと読めるライト文芸。

リカのキャラクターは魅力的たったので、ドラマ版も鑑賞したくなる。

ちょっとした罪の代償がオーバーキルすぎるおすすめ作品はコチラ。

■祝山

リカの作品情報

■著者:五十嵐貴久
■Wikipedia:リカ (小説)
■Amazon:こちら

この記事書いた人
柴田

子供の頃は大の活字嫌い。18歳で初めて自分で購入した小説『バトルロワイアル』に初期衝動を食らう。実写映画版も30回くらい観て、映画と小説に開花する。スリラー、SF、ホラー、青春、コメディ、ゾンビ、ノンフィクション辺りが好き。小説の添削でボコボコに批判されて凹みがち。

【オールタイムベスト】小説
■プロジェクト・ヘイル・メアリー
■三体
■永遠の0
■ガダラの豚
■容疑者Xの献身
■煙か土か食い物
■クリムゾンの迷宮
■玩具修理者(酔歩する男)
■バトル・ロワイアル

【オールタイムベスト】ノンフィクション本
■母という呪縛 娘という牢獄
■墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便
■殺人犯はそこにいる

柴田をフォローする
ホラー
柴田をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました