■評価:★★★☆☆3
■読みやすさ:★★★☆☆3
「冒険心という初心を忘れた大人にはなりたくない」
【小説】霧のむこうのふしぎな町のレビュー、批評、評価
『千と千尋の神隠し』の元ネタとなった1975年刊行の児童小説で、柏葉幸子のデビュー作。
当初、宮崎駿は『霧のむこうのふしぎな町』の映画化を取り組んだが断念し、影響を反映する形で『千と千尋の神隠し』の制作に至ったそう。
読んでみてびっくり。
世界観は千と千尋そのままである。
【B】【あらすじ】6年生の夏休み。リナは一人で旅に出た。霧の谷の森を抜け、霧が晴れると、赤やクリーム色の洋館が姿を見せる。きれいでどこか風変わりな町が現れた。リナと霧の谷の町(めちゃくちゃ通り)に住むへんてこな住人達との交流を描く。
誰も命を落とすことはないし、誰も苦しむことはない。
恐怖や怒りといった深刻な負の感情が存在しないゆるやかな世界。
少女がただ、異世界に迷い込んで働かされ、成長する物語。
久しぶりにこんな平和な物語を手に取った。
まず、良かったのが最初のページに書かれているマップ。
ミステリー小説やファンタジー小説によく掲載されているマップにも私はワクワクさせられる。
上記の大人向けの小説とは違い、本作のマップは小学生が自分が住みたい町を妄想して書いたようなカジュアル感がある。
地図の画像は以下。

町の名前は『めちゃくちゃ通り』。
いったいこの町でどんな物語が展開されるのか、好奇心を煽られる。
面倒になる屋敷のバーさんがやたら性格が悪そうなのも良かった。
このバーさんがなぜか、主人公のリナに当たりがきつい。
そのため、リナがこの町でうまくやっていけるように、自然と読者は応援したくなるのだ。
だから、バーさんの命令によって派遣されて行った先の店で仕事をして、そこで仲間ができたりすると嬉しい気持ちになる。
全体的にキャラクターの魅力に欠ける。
海外ファンタジー小説やファンタジー映画でよく見かけるんだが、ぶっ飛んだ理解不能な行動を取るキャラクターが多い。
本作は、そんな感じのなぜそんな行動を取るのか意味がよくわからないキャラクターばかりである。
私は伏線・あるいはメタファーだったりと、意味不明な何かにも、ちゃんと理由が存在してもらいたいと思うタイプである。
なので、本作のキャラ達にはあまり魅力を感じることはできなかった。
そのため、後半は興味深くなれず、読むスピードが落ちてしまった。
児童小説なので仕方ないが、ひらがなが非常に多くて読みづらかった。
ここまでひらがなが多いと、文字を目にしたときにスムーズに映像をイメージできない。
ストーリーも大きな事件があるわけではない。
淡々と主人公がミッションをこなしていく様が描かれる。
大人の私には物足りなかった。
だが子供らしい、わんぱくな世界観は素晴らしかった。
私はハリーポッターの映画にハマっていた時期があった。
ハリーポッターは人の生死が関わる、刺激の強いファンタジーなので大人でも夢中になれる。
本作は良くも悪くも子供向けである。
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