■評価:★★★★☆4
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「真実を見抜く力を磨かなくてはならない」
【ノンフィクション本】でっちあげのレビュー、批評、評価
ジャーナリストの福田 ますみによる2007年1月17日刊行のノンフィクション本。
第6回「新潮ドキュメント賞」受賞。
【あらすじ】2003年、全国で初めて「教師による児童へのいじめ」と認定される体罰事件が福岡市で起きた。地元の新聞報道をきっかけに、週刊誌やワイドショーが大々的に報じ、担当教諭は、停職処分に。児童側はさらに民事裁判を起こし、舞台は法廷へ映り、正義の鉄槌が下るはずだったが、待ち受けていたのは予想だにしない展開と、驚愕の事実であった……。(Amazon引用)
2017年頃、あまりノンフィクション本に触れたことない当時の私は、同僚の勧めで『殺人犯はそこにいる』を手渡された。
500ページの分厚い文庫本ではあったが、あまりに衝撃的な内容で一気読みした。
不祥事のニュースをたびたび耳にする警察も、命を奪った犯人に対しては正義のもと、徹底的に追いかけて捕まえるイメージが私にはあった。
だが、その本は聖人のような美しい警察のイメージを粉々に破壊したのだ。
私は幼かった。
自ら思考することを止め、楽して人や人の発言を信じることの危険さを身にしみて感じた。
その同僚からは、『殺人犯はそこにいる』と同じくらいの衝撃があると、同じノンフィクション本の本作『でっちあげ』を教えてもらった。
Kindleで購入し、積ん読状態が長らく続いた。
2025/6/27に映画化されると知り、すぐに読んだ。
結論から言うととんでもない作品だった。
最初に言っておく。
ネタバレしないように配慮して紹介するが、意表をつく展開に度肝を抜かされるタイプの作品なので、もしあなたが余すことなく楽しみたいと思っているなら、今すぐにサイトを閉じて本を購入することをおすすめする。
構成がおぞましい。
まるで読者が、当時の事件の当事者として巻き込むような構成で描かれている。
事件が世間に広く知られるきっかけとなった朝日新聞と週刊文春の記事が要約されたような内容から、本作は始まる。
目がひん剥くようなおぞましい教諭による児童への体罰の数々に、読んでる私は気分が悪くなった。
しかもこの事件、福岡市教育委員会の調査によって全国初の『教師によるいじめ』が認定されている。
まるで無知の事件だが、わいせつ行為だったり、様々な問題を起こすきもい教師はたびたびニュースで目にするので、あり得ない話ではない。
だが、読み進めていくうちに、とんでもない衝撃の事実が次々と明らかになる。
弱い立場の人間にだったら何をしても許される、と思っている連中は少なからずいる。
例えば、店員に無茶な要求するカスタマー。
ちょっとした不祥事で立場が弱くなった芸能人を叩きまくるX民やヤフコメ民など。
本作は、今も何かと話題となる、この手の弱者叩きを加熱化させた人の温かみを失った連中に対して問題提起する内容。
本事件は2003年に発生している。
人は本当に学習ができない愚かな生き物である。
それは私も含め。
まるで読者の真実を見抜く力を試されるようなエッジの効いた構成には感服した。
あと、私があまり好きではない、国際映画祭で評価されたとある邦画が、本事件を丸パクリしたようなストーリーだったのには驚いた。
さすがにインスパイアでは誤魔化せない踏襲っぷりではないだろうか。
その作品のタイトルをあげるとネタバレになるので伏せるが、あの映画がしっくり来なかった理由を強固にしてくれた。
あの映画は終始、『観客が感動する作品を作ってやろう』といった薄っぺらさが鼻についた。
話を戻すが、本作は人類必読レベルの傑作だった。
自分が間違いをおかさないためにも、自分を律するきっかけ作りとして手に取ると良い。
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■母という呪縛 娘という牢獄
■墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便
でっちあげの作品情報
■著者:福田 ますみ
■Wikipedia:でっちあげ(映画版)
■Amazon:こちら
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