■評価:★★★☆☆3.5
■読みやすさ:★★★☆☆3.5
「刹那的な明治時代を生き抜くのは一苦労」
【小説】イクサガミ 地(二巻)のレビュー、批評、評価
『羽州ぼろ鳶組』シリーズ、『童の神』『八本目の槍』『じんかん』『塞王の楯』の今村翔吾による2023年5月16日刊行のアクション時代小説。
イクサガミシリーズの第二巻。
【あらすじ】東京を目指し、共に旅路を行く少女・双葉が攫われた。
夜半、剣客・愁二郎を待ち受けていたのは、十三年ぶりに顔を合わせる義弟・祇園三助。
東海道を舞台にした大金を巡る死闘「蠱毒」に、兄弟の宿命が絡み合う――。
文明開化の世、侍たちの『最後の戦い』を描く明治三部作。待望の第2巻!(Amazon引用)
一巻目は期待していたのもあってか、まるで心を動かされなかった。
『HUNTER×HUNTER』や『るろうに剣心』といった過去の名作漫画の影を踏みすぎるオマージュというにはていの良すぎる作風に、既視感ばかりで何の新しさも感じられなかった。
今の時代に執筆された必然性は皆無の二番煎じ作品の印象だった。
まとめて全4巻を購入してしまったので、仕方なく2巻目を手に取った。
意外や意外、面白かった。
本作と肝となるのが『幻刀斎』という存在だ。
元人斬りの主人公の愁二郎の剣の流派には8人の兄弟同士で命を奪い合い、それぞれが持つ奥義を継承する、継承戦がある。
この時点でHUNTER×HUNTERの王位継承戦の丸パクリで幻滅するんだが。
(現在連載中のHUNTER×HUNTERでは、念能力を駆使して14人の王子同士が命を奪い合う王位継承戦を繰り広げている(別名、蠱毒)。明言されていないが、今まで提示された情報から察するに、おそらく勝ち残った王子がすべての王子の念能力(厳密には念獣)を手にすることができるもの)
愁二郎は兄弟と命を奪うのが嫌で継承戦から逃げた。
そのせいで中断している継承戦の継承者を始末する、継承戦の見守り人が幻刀斎。
ただでさえ、兄弟たちが数人でまとまってかかっても勝てない強敵だ。
幻刀斎という異物が本作のメインストーリー『蠱毒』に混じることで、先の展開が読みづらくなっているのがいい。
さらに二巻では蠱毒に加え、蠱毒の首謀者たちを暴くサイドストーリーも展開される。
実在する歴史上の有名人物も絡んできて、いかにも時代小説を読んでいる感がして興奮した。
あまり本作を評価しなかった理由について。
ストーリーは面白いが、戦闘がまるで楽しめなかった。
これは好みなんだろうけど、戦デフォルメの強い漫画的演出の戦闘で好みではなかった。
例えば
この奥義を持ってるから強いとか。
Aは強いけどBはAより強いからBめっちゃやばい、みたいな。
戦闘の勝敗を決するための情報量が少なすぎて、子供向け漫画感が強く、私は好みではない。
また、Aは噛ませ犬としてはBを引き立てる役割として機能するが、これをやると引き立て役のAが一瞬で死ぬ。
概念の意味で。
読者からすると一気にAは魅力を失う。
『鬼滅の刃』もこっち。
そのため、私は戦闘が退屈で戦闘シーンを読む意味を見出せなかった鬼滅の刃をまるでハマれなかった。
鬼滅はキャラは魅力的だと思うが。
漫画はいいけど、個人的に細かい描写ができる小説には、戦闘のデフォルメは求めていない。
そのため、本作の戦闘は、戦いが始まった瞬間的、決着が読めることが多い。
戦闘シーンは惰性で読み進めて問題ない感じが残念だった。
今の時代、凝った漫画の戦闘は、対立するキャラの心理などの多くの情報を含めた戦いになっている印象。
例えば敵味方の長短、敵味方の精神状態、敵味方の人数、戦う場所、時間、敵の事前情報がどこまであるか、こっちの情報はどこまで敵に知られているかなど。
ありとあらゆる情報を駆使した緻密な戦いは、言うなら戦闘2.0。
今の時代は現実でも実際に攻撃しない情報戦が主な戦い。
本作は歴史小説かもしれないが、旧時代的すぎる。
本作はラノベのような軽い読みものを目指しているかもしれない。
とはいえ、魅力的なキャラも多いし、前述の通り、先に読めない展開が繰り広げられているので、ストーリーは面白かった。
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■テスカトリポカ



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