映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

①家のなかのモンスター

映画『ゲット・アウト』ネタバレなしの感想。差別意識を利用したコメディホラーの傑作

投稿日:4月 28, 2019 更新日:

評価:★★★★☆4.5

「ブラックジョークまみれ」

【映画】ゲット・アウトのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

黒人のクリスは恋人である白人女性のローズの実家に週末、遊びに行くことになる。ローズは両親に自分が黒人であることを伝えておらず、クリスは心配するが、彼女は「両親は人種を気にしたりしないから大丈夫」と彼を安心させる。家に到着すると、彼女の両親から手厚い歓迎を受けるが、なぜか黒人の使用人が何人もおり……。

面白すぎる。なんなんだこの映画。
クリスは黒人であり、差別を受けた経験もあるためか、序盤でその心配を指摘する。
「なぜ俺が黒人であることを両親に伝えないんだ?」と。
この指摘は、この物語において非常に重要なポイントであり、観客は「黒人差別」といったキーワードが念頭に置かれた状態で物語が始まる。
次に訪れる差別を連想させるシーンが、実家に向かう道中で鹿を轢いてしまった際、呼んだ警官の対応。
その次は、実家の豪邸で働く使用人の黒人たち。
ここで、多くの観客はこんなことを思うだろう。
この家族は、黒人を差別しているのでは?
しかしクリスが話しかけた黒人の使用人たちは、彼の杞憂を悟って否定する。
「いや、私は自分のやりたいことしかしない」と。
どういうことなんだろう? 意味がわからない。
だったらこの違和感は何なんだ。

家族全員が怪しい。
いや、一人を除く全員といっていい。
もちろん一人は彼女だ。
彼女だけはクリスを安心させてくれてる唯一の理解者となってくれる。
思わず観客は彼女にすがりたくなる。安心させてくれ。味方で在り続けてくれ。
彼女以外のみんなは、どこかズレていて、物語が進むにつれて違和感が積み重なっていく。
それは不安となって増大し、期待と緊張を煽る。
クリスも同様で、観客が思うそれらの負の感情を共に抱きながら、彼も一緒になって戸惑うのだ。

父親も黒人を受け入れており、「オバマに3期目があれば投票している」と言う。
精神科医である母親は煙草を吸うクリスの体をとても心配し、催眠による治療も希望があれば施すとのこと。
ローズの弟も家に帰ってくるのだが、今にもトラブルを引き起こしそうなステレオタイプの悪役顔だ。
しかし彼は黒人を尊敬している。「黒人は高い身体能力を持っているビーストだ」と。
そして翌日、祖父のパーティが行われ、黒人のクリスはさらに多くの白人たちに囲まれる。
ますます孤立感を覚え、不安にさいなまれるようになる。
しかし、みんなクリスには優しい。

このように寸暇を惜しまず、違和感を与え続けるのだから面白い。
先が気になりすぎて画面にのめり込み、気づいたらエンディングを迎えている。理想的な映画体験だ。
私が一番面白かった演出は、実家に向かう際、彼女が運転する車が鹿を跳ねてしまい、警察を呼ぶ。
警察は彼女だけではなく、黒人であるクリスにもIDの提示を要求する。
そして彼女は怒る。
観終わったあと、このシーンを思い返してほしい。

この映画はコメディアンによる初監督作品で、
監督曰く、コメディの技術がスリラー映画として役立ったとのこと。
「構成や演出で観客を誘導する点」や「タイミングを計って斜め上を行く手法」など。
にしても、初めての映画とは思えない完成度だ。
お笑い芸人の視点はやはり凄い。
原作や続編ばかりに頼った保守的な映画人は、このオリジナルの脚本の映画を見てさぞかしハっとさせられるだろう。
黒人差別がテーマとなっている以上、日本人には絶対に作れないし、お笑い芸人ならではの分かりやすい展開もいい。

ゲット・アウトの作品情報

■監督:ジョーダン・ピール
■出演者:ダニエル・カルーヤ アリソン・ウィリアムズ
■Wikipedia:ゲット・アウト
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):98%
AUDIENCE SCORE(観客):86%

ゲット・アウトを見れる配信サイト

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Amazonビデオ:○(吹替版)○(字幕版)
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ビデオパス:
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※2019年5月現在

関連性の高いおすすめ映画

ゲット・アウトの裏ジャンルである【家のなかのモンスター】に分類されるおすすめ映画。

『ヒメアノ~ル』★★★★★5
冴えない男、岡田には夢も彼女もなく、ビル清掃のアルバイトをしながら鬱屈した日々を生きている。ある日、同じようなオーラを放つ職場の先輩である安藤にこの悩みを打ち明けると、「自分を責めたら駄目だ。俺は恋をしている」と言われる。彼が一目ぼれした相手は、カフェの店員ユカだった。店には、岡田が高校時代の同級生だった森田が客として来ており、安藤は「あいつは彼女のストーカーだ」と言って警戒している。

劇場で観たのだが、終わったあと涙が止まらなくて立ち上がれなかった。
森田役を演じた、V6森田の振り切った演技は当時大きな話題を呼んでおり、
ジャニーズ以外の俳優でも敬遠するであろうハードな役柄を見事に演じきっている。
ショッキングなシーンが多く、R15+指定を食らっている。原作は稲中でお馴染みの古谷実。

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※2019年5月現在

『ミスト』★★★★☆4
台風に襲われた翌朝、湖のほとりに住むデヴィッドは私有するボート小屋が破壊されていることに気づく。買い出しのため、息子ビリーと隣人のブレントと共に近所のスーパーに出向く。やがて停電し、スーパーの周りは霧で覆われてしまう。店の外では、パトカーや救急車が鳴り止まない。しばらくすると霧の中から鼻血を流した男が現れ、スーパーに逃げ込んでくる。彼はこう言った。「霧の中に何かがいる」と。

後味悪い系映画の代名詞としてよくあげられるが、見所は緊張感の煽りが巧みなところ。
スリラー映画としてのレベルが非常に高く、霧の中に潜む何者かの凶悪さをイメージさせられる。
そしてスーパー内での人間同士の対立も見所の一つ。
この辺りは監督であるフランク・ダラボンが企画し、ドラマ化された「ウォーキング・デッド 」と共通するところがある。
原作はスティーヴン・キングの「霧」だが、結末は監督が映画用に脚色しており、
キングはダラボンの新しい結末を賞賛したのこと。

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※2019年5月現在

-①家のなかのモンスター

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。