映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『万引き家族』ネタバレなしの感想。パルムドールに輝いた是枝監督の最高傑作

投稿日:5月 2, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「新しい形の家族を描いた映画」

【映画】万引き家族のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

日雇い労働者の柴田治、クリーニング屋でパートをしている妻信代、息子の翔太、信代の妹でJK見学店(風俗の一歩手前のような店)で働く亜紀、治の母の初枝ら五人は、東京下町の古家に住んでいた。表向きは初枝一人が住んでいることになっており、五人は彼女の年金と、夫婦のわずかな給料、足りなくなったらスーパー等で万引きをし、ぎりぎりの生活を送りながらも、笑顔の絶えない日々を過ごしていた。ある日、治と翔太は万引きの帰りにマンションのバルコニーで、震えている幼女を見つけ、見かねて連れて帰るが……。

第71回カンヌ国際映画祭、最高賞であるパルム・ドールを受賞。
パルム・ドール自体に特別な関心は持っておらず、
是枝監督作品の過去作が割と好みが多かったので、その動機で視聴したのだが、
今作は明らかに突出したクオリティとなっていた。
特に後半は衝撃すぎる展開に、思わず一時停止して一息ついてしまった。
私は何の前情報も入れずに観たのだが、
Wikipediaの万引き家族項目の一番上にそのことが書かれてしまっているので、
この衝撃を楽しみたい方は、このブログ程度の情報に留めて観ることをおすすめする。

それ以外にも、多くのミステリー要素がちりばめられており、少しずつ明かされながら物語が進んでいく。
例えば、なぜ初枝を誰かが訪ねてきたら、みんな家から隠れたり、外に出たりと同居人の存在を隠そうとするのか?など。
一度観るだけでは把握できないくらいに多くの謎があり、
何なら直接言及されないところも多々あるため、観終わったあとに考察に楽しむ余地が残されていると言える。
伏線を回収していないと言えばそれまでなのだが、
恐らく是枝監督の中に、それぞれの答えがあり、
すべてを明かすことは野暮ったいと思っての、あえての作劇だと思われる。

村上春樹作品もそういう作りになっていることが多く、読みやすいが物語は難解だと言われることが多い。
しかし村上春樹はノープランで書いているので(多くのエッセイ本にて言及されている)
是枝監督とはスタンスが大きく異なる。

序盤は、家族が貧乏なので共有する時間が多く、
絆の強さを自然と感じることができたので、発想が新しくて観ていて面白かった。
確かに金持ちは、家族団らんを犠牲にして仕事に明け暮れていがちである。
ラオスの幸福度が高い理由と共通点する箇所があるのだろう。
この物語のテーマは「家族の絆」であり、
徐々にそれぞれのキャラと家族との間にある絆を構成する要素に違いがあることが見えてくる。
「金」「血」「心」
もちろんそこは人間なので、一人ひとつといった短絡的なものではなく、
それぞれ違ったバランスで絆が構成されており、
物語が進むにつれて、キャラは変化し成長を遂げ、そのバランスも変わってくる。
ここがおそらく、監督がこの映画で一番描きたかったところだ。

晴天がほとんどないのもいい。
家族全員で海に行くシーンがあるのだが、ビックリするほどの曇天だ。
なのにノー天気で笑う家族は微笑ましい。
雨のシーンも多く、どうもこのしっとり感が、家族の絆を密に感じられる補助として作用しているようにも思える。
そしてあのバイオハザードに出てくるような風呂。
幸せそうな笑顔で湯船に浸かっていたが、むしろ入らない方が清潔感を保てるだろう。

しかし、なぜ是枝作品はこんなにも役者が美しく見えるのだろうか。
彼の作品は強いテーマ性を持ちながらも、脚本にちゃんと起伏があるのでエンタメ性も担保されていて観やすい。
観やすい理由はそれだけではなく、
役者に魂が宿ってる感が強いのだ。本当にそこに、彼らが住んでいるように思えてしまう。
誰一人として日本映画で良く見かける過剰な演技はしていない点が挙げられるのだが、
もしかしてアドリブが多いのだろうか?
創られている感がビックリするほど感じられないのだ。
インタビューを見ると安藤サクラは「是枝組はチームが出来上がっていて温かい」なんてことを話していたのだが、
そういった環境下だからこそ、のびのびと自然に演技できているのかもしれない。

万引き家族の作品情報

■監督:是枝裕和
■出演者:リリー・フランキー 安藤サクラ 松岡茉優 樹木希林
■Wikipedia:万引き家族
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):90%

万引き家族を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

関連性の高いおすすめ映画

万引き家族の裏ジャンルである【組織のなかで】に分類されるおすすめ映画。

『アメリカン・ビューティー』★★★★☆4
シカゴ郊外に住むレスターは一見幸せそうな家庭を築いているように見えるが、見栄っ張りで仕事を成功させることに躍起になっている妻キャロライン、自分を嫌う高校生のジェーンとギクシャクした日々を過ごしていた。彼自身も中年の危機に悩まされていたが、ある日娘のチアリーディングを見に行くと、彼女の親友であるアンジェラに一目ぼれしてしまい……。

中年の危機とは、加齢による肉体の変化や、子供の成長や親の介護など家族ライフサイクルの変化、職場での変化などによって引き起こされる中年期特有の鬱病や不安障害を指す。
深刻な映画のように見えるのだが、実はコメディ映画で、
レスター役のケヴィン・スペイシーがはちゃめちゃにやってくれるので観ていて滑稽で面白い。
そんなコメディ映画が詩的かつ、美しい映像美で描かれる。
第72回アカデミー賞で作品賞を受賞。

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonビデオ:○(吹替版)○(字幕版)
dTV:○
ビデオパス:
TSUTAYA TV:
Netflix:
※2019年5月現在

『カメラを止めるな!』★★★★☆4
ある廃墟で、ゾンビ映画の撮影が行われていた。その建物はかつて日本軍が遺体を蘇らせる実験が行われていたという噂話があった。クライマックスの撮影中、監督はヒロインに恐怖の演技が足りないと怒号を上げ、屋上に禁忌のサインを書いてしまう。すると本物のゾンビが現れてしまい……。

ネタバレすればするほど面白さが削がれてしまうので、この程度のあらすじを確認するに留めて観ることをおすすめする。
こういった面白いインディーズ映画を見ていると、とても幸せな気持ちになれる。

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonビデオ:
dTV:○
ビデオパス:
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年5月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。