映画の海

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⑨組織のなかで

映画『エル・クラン』ネタバレなしの感想。アルゼンチンにおける軍事独裁政権末期の実話

投稿日:5月 8, 2019 更新日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「アルゼンチン国民における邦画」

【映画】エル・クランのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

軍事独裁政権が終焉を迎え、民主制を取り戻したアルゼンチン。1982年、アメフト選手のアレックスは友人のリカルドと車に乗っていると何者かに銃をつきつけられ、誘拐されてしまう。友人はトランクに押し込められ、アレックスは助手席に乗せられる。車の運転をしているのはアレックスので父で国家情報局に勤めるアルキメデスだった。アルキメデスは息子に協力させ、金持ちの子供を誘拐することで大金を手にしていた。

第72回ヴェネツィア国際映画祭、銀獅子賞(監督賞)受賞作品。

アルゼンチンは1976年~1983年の間、軍事政権が行った国家テロ「汚い戦争」によって、一般市民3万人が拷問され、命を奪われた。
左翼弾圧を名目として行ったとのことだが、経済政策に失敗し、民衆の支持を獲得する目的で行った戦争にも敗戦して、軍事政権が幕を閉じ、国民は民主制を獲得する。
物語の舞台は1982年、軍事政権末期下で政権側に勤める主人公で家族の大黒柱アルキメデスが、左翼ゲリラを名乗って誘拐を繰り返すといった内容である。

自国民に向けたアルゼンチン映画といった印象が強く、
あまりに歴史背景が日本と異なりすぎていて、物語の世界に没入しがたい。
アルゼンチンの歴史に造形の深い人間か、あるいはこういった外国史に関心のある人向けの映画だ。
誘拐と始末を繰り返すハードな内容の割にポップな曲が流れたりするのだが、
史実ということもあって、想定外の展開が訪れるわけでもなく、エンタメ性もさほど感じられなかった。

なぜアルキメデスは誘拐しないといけないのか、具体的な解説がされないのだが、
軍事政権が転覆することがほぼ確定している中で行っているので、
仕事にあぶれ、それでも今の生活を守るために仕方なく行ったといった具合だろう。
でも本当に誘拐しか手段がなかったのだろうか?
さらに歴史背景を深ぼっていかないと、彼らの行動原理を理解しきれないため、なかなかこの映画を楽しむのは難しい。

誘拐生活と、その事実を知らない母や娘たちとの普通の暮らしが共存しているのもなかなか凄い。
娘が勉強している隣の隣の浴室で監禁しているのだから、理解に苦しむ。
彼らの居住区は富裕層のため、生活レベルを落とすことに抵抗があったのだろうか。
疑問ばかりが残る。

特に印象に残っているのが、アルキメデスの誘拐の標的が、大学生の息子の友人ばかりを狙う点だ。
息子に協力させることで共犯意識を芽生えさせようとしているのかもしれないが、
息子の心の痛みよりも金の方が大事なのだろうか。
家族の生活を守りたかったのか、金が欲しかったのか、大統領万歳的な行動なのか。
最後まで理解・共感が出来ず、後味の悪いままエンディングを迎えてしまった。

エル・クランの作品情報

■監督:パブロ・トラペロ
■出演者:ギレルモ・フランチェラ ペテル・ランサーニ リリー・ポポヴィッチ
■Wikipedia:エル・クラン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):86%
AUDIENCE SCORE(観客):77%

エル・クランを見れる配信サイト

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※2019年5月現在

関連性の高いおすすめ映画

エル・クランの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類されるおすすめ映画。

『BROTHER』★★★★☆4
武闘派のヤクザである山本は、組を追われ、ロサンゼルスに逃亡して弟であるケンを頼って訪ねる。ある日、ドラッグの売人をしているケンは取引先に一方的な値上げをされてしまい揉めてしまう。そんな様子を見かねた山本が彼らに暴行を加える。山本は報復の対象とされるが、マフィアのボスらを血祭りにあげ、勢力を拡大していく。

北野武映画といったらアウトレイジのイメージが強いが、
アメリカが舞台であるBROTHERと比べ、前者は日本なので世界観が縮小してしまったように感じてしまい、思ったほど楽しめなかった。私の中の北野映画といったらこのBROTHERだ。
国を跨いでも暴れ回る様子は、観ていて爽快である。むしろやりすぎ。いや、完全にやりすぎである。

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『イキガミ』★★★★☆4.5
命の尊さを再確認させるため、国は「国家繁栄維持法」を制定した。18歳~24歳の国民1000人に1人を無作為に選び、逝紙(イキガミ)を渡される。この通知を受け取った者は24時間以内に命を落としてしまう。そんなイキガミを受け取った3人の話である。

国に命を奪われる形で治安維持がなされるという、バトルロワイアルと似た世界観。
原作越えを果たした稀有な例。
命のカウントダウンが始まった3人の行動が切ない。思わず「自分が彼らの立場だったらどうするか」と考えてしまう。

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※2019年5月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。