映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『レディ・バード』ネタバレなしの感想。反抗期の女子高生が奮闘する

投稿日:5月 17, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「不器用すぎる母娘の物語」

【映画】レディ・バードのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

舞台は2002年、レディ・バードは田舎町サクラメントのカトリック系の高校に通う女子高生。ニューヨークの大学に進むことを望む彼女に対し、母マリオンは地元の大学への入学を求め、いつも口論となっていた。彼女はカリフォルニア大学バークレー校(アメリカの公立大学ランキング1位の実績あり)を卒業しながらもスーパーでフリーターをしている兄ミゲル(養子)、うつ病でリストラ寸前の父、家庭を支える精神科の勤務医として働く母と、貧乏な生活をしていた。ある日、レディ・バードはシスターの勧めで参加したミュージカルのオーディションで、ダニーという生徒に一目惚れし……。

オープニングが最高だ。
母マリオンとレディ・バードの二人は大学見学の帰り「怒りの葡萄(貧しい一家が蔑まされながらも立ち向かう話)」という小説の朗読テープを車で聞いて感動し、涙する。
直後、進学のことで意見が別れて言い合い、レディ・バードは怒って車から飛び降る。母発狂。
ここまで四分だ。
この四分という短い時間に二人のキャラ性、関係性を凝縮させている。
感情の変化があまりに激しくて笑えてしまう。
こういった些細なことでぶつかり合うのも、親子っぽいくていい。

最初レディバードはただの痛いヤツなのかなって思った。
車から飛び降りる自傷的な行動を取るし、髪は赤く染めていて周囲から浮いている。
何ならレディ・バードは本名ではなく、自分で勝手に名乗っているだけの中二病的な行動を見せている。
実際は、そんな表層的なことではなく、何かと自分の行動をコントロールしてくるマリオンに対して、反抗心を見せて心を折りたいのだ。
レディバードの本名であるクリスティーンはキリスト教に由来しており、母がつけたであろう自分の名前も否定し、宗教にも不真面目。
シスターの車にはイタズラしたり、中絶反対をテーマとしたセミナーでも反抗心を見せて停学処分を食らう。
荒くれることに熱心なレディ・バードだが、恋愛には関心が強く、
パーティで好きな男子と二人きりになったら、泊まりに行く予定だった友達を無理やり先に帰し、二人きりの時間を過ごそうとする可愛らしい一面もある。

家族の問題、友情、恋愛、いろんな題材のエピソードが盛り込まれているが、メインテーマは「母と娘」だ。
それぞれ相手に対して思うことがあるのだが、上手く表現することはできない。
マリオンはレールを敷き、娘を乗せたがる。自分の気に入らない言動を見せる娘をおさえつける。
娘は、そんな母は自分が嫌いだと信じて疑わない。
この母の抑圧的な教育、不器用な愛情表現の理由は最後にさらっと明かされる。

彼女は早く大人になりたくて仕方ないだろうな、と思う。
私も親に何かと口うるさく育てられたのだが、そのときにいつも思っていたのが「早く大人になりたい」だ。親から解放され、自由に生きたいのだ。
マリオンはレディ・バードが子供であることをいいことに「誰が学費を払ってるんだ?誰がご飯作ってるんだ?」と親の特権を振りかざして制圧する。
しかし、子供という生き物は成長が早く、親が思ってる以上に周り見て、色々と考えてるものだ。そんな薄っぺらな言葉でコントロールされるほどバカじゃない。
だからぶつかり合い、彼女は地元の田舎町サクラメントを抜け出すことに執着する。

監督権脚本を手がけたグレタ・ガーウィグ(女性)による母と娘の物語で女性向きではあるが、キャラクターが素晴らしく男でも楽しめる。
何より、キャラ造形があまりに緻密でびっくりした。
主人公が美人すぎないのも味があっていい。振り回されているときの哀愁が強くなる。
安易に美人をキャスティングしていたら、物語としての説得力は生まれなかったに違いない。

ところで観客は、この映画を観ていると1つの疑問が浮かぶだろう。
「レディ・バード」ってどういう意味?と。
lady birdはてんとう虫を指し、
キリスト教において、てんとう虫は聖母マリアの遣いとされる虫でありながら、「浮気な女、移り気な女」といった意味のスラングも併せ持っている。
母マリオンor生まれ育ったサクラメントの町を象徴するキリスト教に傾くのか、あるいはそれに反抗心を見せるのか。
人生の節目に立つ彼女にぴったりの名前だ。

レディ・バードの作品情報

■監督:グレタ・ガーウィグ
■出演者:シアーシャ・ローナン ローリー・メトカーフ ルーカス・ヘッジズ
■Wikipedia:レディ・バード
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):99%
AUDIENCE SCORE(観客):79%

レディ・バードを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・見放題)○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

関連性の高いおすすめ映画

レディ・バードの裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『純喫茶磯辺』★★★★☆4.5
高校生の磯辺咲子は片親であるグータラな父、裕次郎といがみ合いなら日々を平和に過ごしていた。ある日、祖父が亡くなって遺産が入ったことで裕次郎は仕事を辞める。裕次郎はたまたま立ち寄った喫茶店でマスターが女性客と楽しそうに話している様子を羨み、ノリで「純喫茶磯辺」を開業する。ダサい店にうんざりする咲子は仕方なく、夏休みの間、店を手伝うことになり……。

仲里依紗がとにかく輝いているのだが、父役の宮迫もまた様になりすぎていて、さながら本物の父娘だ。
コメディタッチで観やすく、十回以上リピートしている数少ない映画の1つ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(DVD)
dTV:-
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年5月現在

『シークレット・サンシャイン』★★★★☆4
夫を亡くした39歳のシネは一人息子と共に、夫の故郷である密陽市に引っ越す。商店街でピアノ教室を開いたシネを、近所で薬局を営むキム夫妻、弁論教室の講師をするドソプらが食事会を開催してくれる。町の人に同情しされたくないシネは強がって裕福であるかのように装う。ある日の夜、息子が行方をくらましてしまい……。

シネに片想いし、不孝な生い立ちの彼女をひたすら献身する自動車修理工場を経営するジョンチャンに扮したソン・ガンホのキャラ性が良い。
田舎町が舞台ということもあって穏やかな雰囲気だが、ストーリーは鬼畜である。THE韓国映画といった感じ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(DVD)
dTV:-
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年5月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。