映画の海

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⑨組織のなかで

映画『日本で一番悪い奴ら』ネタバレなしの感想。TKO木下の迷演技を見よ

投稿日:5月 31, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「生々しいノンフィクションを極上のエンタメに仕上げた会心の一作」

【映画】日本で一番悪い奴らのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

柔道の腕を買われて北海道県警の刑事となった諸星は、正義感が強くて熱い男だ。そんな真面目な彼に、先輩刑事の村井は「警察官は点数がすべて。裏社会の人間との接点を作ってS(スパイ)を作れ」とアドバイスをする。その言葉を鵜呑みにした諸星は暴力団の黒岩と密に接するようになり……。

2002年7月に発覚した稲葉事件をモチーフにし、北海道県警の刑事の悪事を描いた映画である。
いかにも欲にまみれた悪徳刑事の村井(ピエール瀧)は、マジメに調書をせかせかと書いている諸星に目をつける。
「調書なんてやんなくていいんだよ。ほっときゃ誰かがやる。」と言って彼をキャバクラに連れていき、「刑事は点数がすべてだ」と助言しながら、キャバ嬢の胸をもみしごく。
ピエール瀧は毎回、白石監督作品常連のむっちりした巨乳女優の胸をもみしごいている。心のそこからズルいと思う。

話を戻すが、村井自身がSと親密に交流するところを諸星に見せる。
純粋バカの諸星は真に受け、Sを作りのためパチンコ屋にいたチンピラをしばき倒す。彼からクスリを持つヤクザの情報を仕入れ、令状なしでそのヤクザにガサ入れする。
抵抗するヤクザに躊躇なく暴行を加え、部屋を探索するとあっさりクスリと拳銃を見つけてしまった。その成果から道警に表彰される。
味をしめた諸星の行動はどんどんエスカレートしていくのだ。
綺麗なキャバ嬢を女にしたり、Sとなった黒岩からソープおごってもらったりと、私生活も派手になる。
夜の街を歩けばヤクザに頭を下げられ、お水の女からは媚びへつらわれたりと、優越感から悦に入る。

このように展開が分かりやすく、万人が見ても楽しめる親切設計となっている。
主人公の属性がアホなので、想像通りに落ちていくさまが滑稽で面白い。
人の言葉を疑いもなく真に受けたらダメだなってことを、改めて思い知らされるいい教訓となる側面もある。

しかし、この物語が実話ベースというのは恐ろしい。
銃器対策室に配属された諸星は、銃強化月間にSにチャカを調達させて点数を稼ぐといった、もはや治安維持を目的とする警察の本質からズレる行為に、何の疑いもなく走るようになる。
ちなみにこんなのは序の口で、もっとひどい展開となるので期待していい。

警察の悪事を暴くこの映画を見ていると、いやでも一冊のノンフィクション本を連想してしまう。
「文庫X」はご存じだろうか。
この映画が公開された翌月の2016年7月「さわや書店フェザン店」という岩手県盛岡市の本屋に、「文庫X」と銘打たれたカバーの文庫本が平積みされる。
この本が当時ニュースで取り上げられて話題となり、私もしばらくしてから読んだのだが、筆舌しがたい衝撃的な内容にただただ圧倒された。

日本テレビに勤めている清水潔はある日、上司から報道特番のネタを探すように指示される。
テーマは「日本を動かす」。
そこで未解決事件に絞って資料をむさぼっていると、「横山ゆかりちゃん誘拐事件」に目が止まる。
パチンコ店のソファーに座っておにぎりを食べているゆかりちゃんの元に怪しい男が近づき、そのまま手を繋いで外に連れ出す防犯カメラの映像を、彼はTVで何度も見ていたため、よく覚えていたのだ。
この事件について深掘りしていくと、数年に一度の割合で、直径20キロ圏内で過去に4件の幼女誘拐事件が発生していることに気づき、清水は関連している事件だと予測する。
さらに時系列順に2番目の松田真美ちゃんの事件(足利事件)だけ犯人が捕まっていることが判明するが、犯人の菅家は冤罪を主張しているとのこと。
清水はまず、この事件から調査を開始するのだが、とんでもない事実が次々と明らかになり……。

といったあらすじだ。
日本という国が信用出来なくなる覚悟があるなら読んでみるといい。
文庫Xの中身は「殺人犯はそこにいる」というタイトルの本だ。
よく作者は、生きていられるなあと思う。そう思わざるを得ないくらい衝撃的な事実を告発している本なのだ。
ある意味こういう本が誰にでも手に入るというのは、報道の自由が守られている証拠でもあるので、日本はまだ救いがある。
地上波では難しいのでNetflix資本で映画化してもらいたいところ。
正直、稲葉事件よりも衝撃レベルは高いので両方楽しみたい場合は前者を先に観ることをおすすめする。

映画に話を戻すが、一個だけ気になる点がある。
木下がヤクザ役で出てくるんだが、違和感がありすぎて笑えてしまうのは私だけだろうか。場を一瞬にしてコント化した瞬間だ。
でもまあこの映画は全編を通して素晴らしい出来栄えなので、この程度の失態で良い印象が揺らぐことはない。屈強な男に対して魚肉ソーセージでしばき倒そうとしているようなものだ。

諸星の舎弟を演じたYOUNG DAISは非常に良かった。
終始ニヤニヤしている感じがいい意味でザコキャラっぽく、舎弟感がある。
あるシーンでのギャップの見せ方も良かった。

白石和彌監督の前作「凶悪」に対して、こちらはテンポが良く、キャラのノリも軽かったりとポップに描いているので女性でも楽しみやすい口触りだ。
この映画の原作本「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」の著者、稲葉圭昭は稲葉事件を引き起こした本人である。(=諸星)

スタッフ、キャスト

■監督:白石和彌
■出演者:綾野剛 YOUNG DAIS デニス 植野行雄 矢吹春奈
■Wikipedia:日本で一番悪い奴ら
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-%
AUDIENCE SCORE(観客):100%

日本で一番悪い奴らを見れる配信サイト

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※2019年5月現在

関連性の高いおすすめ映画

日本で一番悪い奴らの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』★★★★☆4
1954年、レイ・クロックは自身で開発したミルクシェイクのミキサーを販売していたが、なかなかうだつがあがらない。ある日。カリフォルニア州南部の都市サンバーナーディーノのドライブインの店から大量の注文が入る。気になったレイはその店舗に足を運んでみると、回転が早いのに接客は丁寧で味もいい、マクドナルド兄弟が経営するハンバーガー屋だった。

タイトルに名前が隠されてるが大人の事情だろう。
これはマクドナルドの物語だ。
正確には、マクドナルドを世界最大のファーストフードチェーンに成長させたレイ・クロックの伝記映画である。
なぜタイトルに「マクドナルド」という文字がないのか、なぜマクドナルドが世界で突き抜ける存在となれたのか、中身を見たら一目瞭然だ。

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『シンドラーのリスト』★★★★☆4
1939年9月、ドイツ軍によりポーランドは占領される。ユダヤ人を差別するナチス党政権下のドイツ軍は、クラクフのユダヤ人をクラクフ・ゲットー(ユダヤ人隔離居住区)へと追放していた。ナチス党員でもある実業家オスカー・シンドラーは戦争を利用して一儲けしようとクラクフの町へやってくるのだが……

英雄オスカー・シンドラーの伝記映画。
シンドラーの人間として理想的な生き方に感銘を受ける。
集団で生きる人間の本質的な取るべき行動は、相手に尽くすことだと私は思ってる。
自分だけの利益を考えたら人は孤立する。
人に尽くすことで、自分も人から尽くされるようになり、幸せが連鎖するのだ。
でも相手に要求せず、淡々と尽くすって難しい。だからこそ感動する一作だ。

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※2019年5月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。