映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』ネタバレなしの感想。韓国版サニーとの違い

投稿日:6月 2, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「韓国発、名作青春映画の日本版リメイク」

【映画】SUNNY 強い気持ち・強い愛のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

専業主婦の奈美は15年性交渉がなく会話も少ない夫と、折り合いがつかない高校生の娘と3人暮らし。ある日、母のお見舞いで病院に行くと、高校生時代の親友だった芹香と偶然再会することに。彼女は末期がんで1か月の寿命と宣告されており、奈美に「SUNNYのメンバーにもう一度会いたい」とお願いする。SUNNYは90年代の当時、仲良しだった6人の女子高生グループだ。奈美はメンバーの情報を得るため、母校を訪ねることに。

2011年の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』を原作としてリメイクした作品。
もともと私は原作にどハマリしており、日本版は鬼才大根仁監督が手がけるということもあって、どのように演出するのか楽しみにしていた一本だ。

この物語は、奈美を主観とした現在と高校時代の二つの時間軸を交互に見せる形で進行していく。
序盤、田舎から都会に引っ越してきた訛り全開の芋娘、奈美が転校初日に学校への坂道を上るシーンは見所の1つ。地味な奈美に対して、都会の女子高生の彼女らは、みんなが明るい髪に細い眉毛、ルーズソックスといったコギャルファッションに身を包んでおり、彼女らが久保田利伸の「LA・LA・LA・LA LOVE SONG」をバックにミュージカルのように踊り出す。
この時代を生きた人にはたまらない演出なんじゃないかなあと思う。まるで彼女らが「おかえり」と言っているかのようだ。
私は若干世代がズレているのだが、それでも彼女たちがカメラ目線で楽しそうに踊っている姿を眺めていると、不思議とこのノスタルジックな世界に吸い込まれる。

ただちょっと、この追憶演出は押し付けがましさも感じる。
踊りの後もコギャルたちのやかましいテンションによる教室シーンに、当時流行っていた音楽が若干大き目のボリュームで流れながら売店のパンの争奪戦、昼休みにはギャル雑誌EGGからテレクラやルーズソックスなどのワードが飛び交い、さらに奈美が家に帰ると、弟が熱心にエヴァンゲリオンを観ており、「エヴァは無敵なんだー!」的なことを奈美に熱弁する。一応キャラクターを描きながらこれらを描いているとはいえ、怒涛のごり押しで観客は胃もたれすること必至だ。

あと肝心のSUNNYのメンツが、みんなコギャルファッションに身を包んでいるのも気になる。
分かりやすいキャラ設定をするのはいいんだが、みんなが同じ方向なので没個性となっており、愛着がわかない。完全にオリジナル版の方がキャラ立ちしている。こういったコギャルファッションが席巻していた時代だからこそ、流行りに流されない子や、何なら関心すらない子がいてもいいのではないだろうか。
もしかしたら後者のキャラを出すことで逆にコギャル系の子が立たなくなり、あえてルックス面は均一化を図ったのかもしれないが。ちょっと残念なポイントだ。
ただし、現在の時間軸での小池栄子が演じる裕子だけは原作越えしている。パワフルすぎて何度も声に出して笑ってしまった。ちょっと小池栄子のファンになりそう。

田舎からやってきた奈美に扮した広瀬すずも、美少女すぎるので違和感を覚える。
恐らく彼女を主演としたプロジェクトとしてこの映画は企画されたんだろうけど、適役とは言い難い。垢抜けすぎていて芋感が圧倒的に足りないのだ。
対して原作のナミの神がかり的な芋っぽさだ。
薄い系の顔立ちで、たまに可愛く見えるんだが基本的には田舎者丸出しの風貌だ。恰好も地獄的にダサい。よくこんな女優を見つけてきたものだ。時折CGでほっぺが赤くなる演出は、男として守りたい感がくすぐられる。

ストーリーに関しては、奈美は寿命1か月の芹香の頼みを受け、SUNNYのメンバーの所在地などの情報を求めて、かつて通っていた高校に向かう。
そこで梅の現在地を知り、彼女と接触する。
彼女もまた、仕事が上手くいかず、家庭不和にも陥っていて悩んでいた。
更に興信所で他のメンバーも探すことに。次々と再会を果たすのだが、当時は何もかもが楽しかったのに対して、今を生きる彼女らはそれぞれの生活に苦悩していることが分かる。
消息のつかめないメンバーもおり、謎解き要素として物語のエンジンの1つとなっている。

一つ響いたセリフがある。
現在の時間軸で、みんなと店で話しているとき、店内にいた今のおとなしい高校生集団を見かける。やかましかった当時の自分たちを思い返し、「(当時は)何があんなに楽しかったんだろうなあ」と奈美がポロっとこぼしたセリフには深みを感じた。真理をぶち抜いてる。
今思えば、学生時代に友達と遊んでいてくだらないことでアホみたいに笑ったりしていたけど、大して面白いことなんてしてない。ただ仲の良いみんなと何かを共有しているだけで楽しいだけなのだ。これが幸せだったりする。
大人になると、何もかも戦略的に動こうとしすぎる。たまに、このときみたいに感覚だけで時間を過ごしたい。

そして、中盤辺りで芹香に渡されたDVDを奈美が観るシーンがあるのだが、そのDVD内で高校時代の奈美がある台詞を言う。これこそがこの物語のテーマで、一番伝えたいことだ。
この物語がなぜこんなにもみんなに支持されるのか、その理由を彼女が一言で示している。
ぜひ、直接観て確認してもらいたい。

もう一つ好きなところがある。駆け足気味ではあるが、 この映画は青春のすべてを描いている。
喜びや楽しいことだけではなく、青春には痛みも付き物だ。
高校時代の奈美が痛みに苦しむシーンもあるのだが、やけに美しく見える。
なぜなのか?
上記にも書いたのだが、大人になると経験したことのある痛みは昔に比べると辛くはないし、何より傷つかないように戦略的に動いてしまう。
だから、捨て身でぶつかり、傷ついて涙する彼女を見ていると心が浄化されるのだ。

厳しい感想も多くなってしまったが、心からいいシナリオだと思う。
構造が本当に素晴らしい。
思い通りにいかず落ち込んだりするとき、私も時々思い出してしまうことがある。「一番楽しかったあのときの仲間は何してるだろうか」と。
きっと原作の脚本家もこういうことを考えたから、それを起点として作り上げたのだろう。

私は原作に対する愛が強いからこそ、差異が気になってしまったが、この映画が初見の人は、間違いなく原作を知っている人より楽しめる。原作に従順な脚本なので一定の面白さは担保されており、おすすめであることに変わりはない。
この記事を書いていたら原作の愛しさに勢いづいてしまい、思わず今アマゾンで原作ブルーレイ買ってしまったので、暇なときにゆっくりと鑑賞したい。物減らしたいって思ってる時ほど増えてしまうジレンマ。
男である私がこんなに楽しめるので、女性はもっと楽しめるはず。あまりの面白さに泡吹いてぶっ倒れるだろう。

SUNNY 強い気持ち・強い愛の作品情報

■監督:大根仁
■出演者:篠原涼子 広瀬すず
■Wikipedia:SUNNY 強い気持ち・強い愛

SUNNY 強い気持ち・強い愛を見れる配信サイト

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonビデオ:
ビデオパス:○
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

関連性の高いおすすめ映画

SUNNY 強い気持ち・強い愛の裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『カラフル』★★★★☆4
一度天に召されたはずの「ぼく」は、あの世で天使のプラプラに「抽選に当たりました!」と言われ、小林真という中学生として人生をやり直すチャンスを与えられる。

これはボロボロ泣いてしまった。
親との確執を経験した人は大きく感情を揺さぶられること必至。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

『HAZARD/ハザード』★★★★☆4
大学生のシンは日本のぬるい日常にうんざりしていた。ある日思い立ったかのように、すべてを捨ててニューヨークに旅立つ。現地で日系ハーフのリーや日本人のタケダと知り合うことになるが……。

中二病全開の青春映画。
勢いのみで突き進むこの感じがたまらない。リーのキャラ立ちが強烈。
個人的にだが、海外が舞台の邦画は惹かれる作品が多い。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

-⑤人生の節目

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。