映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『スリー・ビルボード』ネタバレなしの感想。子供を奪われた母の逆襲

投稿日:6月 6, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「復讐者となった凶暴な母と差別意識に翻弄される男の物語」

【映画】スリー・ビルボードのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

ミズーリ州エビングで、女子高生のアンジェラ・ヘイズが強姦されたあと、焼かれて命を奪われる残忍な事件が発生する。7ヶ月後、一向に捜査が進展しないことに苛立った彼女の母親ミルドレッド・ヘイズは、町外れの道路沿いの事件現場付近にある3枚の広告板(スリー・ビルボード)に5000ドル支払い、「娘はレイプされて焼かれた」「未だに犯人が捕まらない」「どうして、ウィロビー署長?」といったメッセージを載せた。みんなから愛される署長を名指しで批判する広告を出したミルドレッドは、町民から多くの批判を浴びるようになり……。

この映画、観始めて10分で面白いことを確信した。
復讐の覚悟を決めたミルドレッドが5000ドル支払って警察を煽る広告を出す。
広告を見たディクソン巡査が慌てふためき、広告代理店の男を避難する。
ウィビー署長は彼女の家を訪問し、冷静に彼女を諭そうとするが「全国の男の血液でも採取しろ」と無理難題を押し付ける。

序盤で、メインキャラ3人のキャラ性を分かりやすくかつテンポよく提示し、それ以外の余計な要素は省いている。
広告板を巡り、それぞれのキャラがどんなリアクションをするのか、で描いているのだ。
非常に良くできたオープニングだ。
余談だが、映画「ロード・オブ・ザ、リング」では、指輪を前にしたそれぞれのキャラクターのリアクションでキャラ性を描いている。指輪を欲しがったり、誘惑に打ち勝とうとしたり、自分の手から放そうとしたりなど。

それと、この物語の本質はヒューマンドラマなので、ミステリーとして見ない方がいい。
あくまで物語のエンジンとして謎解き要素を活用しているだけなので、キャラクターの変化に注目して物語を楽しんでもらいたい。

最近こういう類の映画と良く遭遇する。
そもそもミステリーはネタ明かしのカタルシスのみが楽しみのようなジャンルで、一度観たらそれっきりのジャンクフード的映画だ。それに対してキャラクターの変化を描くヒューマンドラマは、何度も観返されることを目的としている。
物語への吸引力の強い謎解き要素を持つミステリー + 繰り返しの鑑賞に堪えられるヒューマンドラマをミックスさせ、いいとこどりを目指す、といった意図があるのだろう。

ジャンルをミックスすることは観客が楽しみ方を誤ってしまう恐れがあり、あまり良いとされてはいないのだが、このサイトを通して、あなたには出来る限り正しい観方を提示していきたい。
ちなみにこの映画は、「犯人探し」といったポイントをあまり全面的に押し出していないところには好感を持てる。

舞台はミズーリ州の架空の町エビング。
ウィンターズ・ボーン」の記事でも伝えたが、この町はヒルビリーと呼ばれるアイルランド系移民が暮らしている貧困地域だ。
人種差別が根強く残っている一方で、ミズーリ州に住む白人もまたエリート層から「アメリカの負け犬白人」などと揶揄されており、劣等感を抱えている住人が多いのも特徴である。

ミルドレッドが広告を出したことに端を発し、町が大きく動き出す。
警察は躍起になってあらゆる方法を駆使して広告をやめさせようとする。
町民に愛されているウィビー署長がディスられとのことで、ミルドレッドは多くの人から批判を受けることに。
ある日、ミルドレッドは歯医者に行くのだが、彼女に腹を立てた歯科医が麻酔なしで歯を引っこ抜こうとする。
この後の展開はかなり面白いので、期待して観てもらいたい。

とにかくミルドレッドはパワフルで、イカれた行動を繰り返す。
息子を学校に送っていくと、ミルドレッドが運転する車に、学生が缶を投げつけてくる。
当然、彼女は何の躊躇もなく仕返しをしちゃうのだから爽快感を覚える。

中盤辺りでミルドレッドに謎の協力者が現れ、その後、ある人物が思い切った行動を取る。
これをきっかけに物語は更なる展開を見せるのだ。

恐らく観客は、ミルドレッドより敵役であるディクソン巡査に感情移入するだろう。
彼が持っている多層的な人間性がしっかり描れており、劇中で一番分かりやすい変化を見せてくれるからだ。

田舎町でおきる凶悪事件ものって何かいい。
Netflixドラマ「リバーデイル」もそうだが、平穏で何もない町で陰惨な事件が発生し、それきっかけで町の日常が少しずつ瓦解していく……といった流れは、その後の展開に目を見張るものがある。
(リバーデイル:平和な田舎町で人気者の男子高校生が命を奪われる事件が発生し、町の闇が徐々に浮き彫りとなってる)

不満点を挙げるとしたらこの映画、本質的な箇所の面白さが分かりにくい。偏差値の高い映画といったところ。
キャラクターは分かりやすく魅力的だし、看板を利用して警察をけしかける展開もユニークだ。会話に難しい言葉が出てくることもない。
しかし、キャラクターたちの本質的な行動原理がわかりづらい。
ちょっとした会話、行動、表情などから、観客がくみ取っていく必要がある。
説明を徹底的に排しているので映画的ではあるし、だからこそ見終わったあとに考察欲をかき立てられるとも言える。
2度3度、繰り返し観て彼らの理解を深めていく映画だ。観れば観るほど、理解すればするほど評価が上がってくタイプだ。

ネタバレしないように私の考察で言うと、ミルドレッドとディクソンは行動原理は違うにしても似ているところがある。感情で物事を解決しようとするなど。
ラストに見せるミルドレッドの表情が、彼女が変化したことを示唆している描写だが、それはディクソンと同じものである。
では、一体どんな変化をもたらしたのか?
それは中盤辺りでウィロビー署長がディクソンに送った手紙だ。

ネタバレなしで言えるのはこの辺りが限界だ。
キャラがとにかく魅力的なので、キャラ立ちした物語が好きな人は見てもらいたい。

スリー・ビルボードのスタッフ、キャスト

■監督:マーティン・マクドナー
■出演者:フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン サム・ロックウェル
■Wikipedia:スリー・ビルボード
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):90%
AUDIENCE SCORE(観客):86%

スリー・ビルボードを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

スリー・ビルボードと関連性の高いおすすめ映画

スリー・ビルボードの裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『ロスト・イン・トランスレーション』★★★☆☆3.5
ハリウッド俳優のボブ・ハリスはサントリーウイスキーのCM撮影のため、来日することに。ボブは慣れない東京でのホテル暮らしと、25年の結婚生活への疲れが相俟って眠れずにいた。一方で写真家の夫の付き添いでやってきた同じホテルに滞在するシャーロットも、彼に放置され、寂しさを覚えていた。そんな二人がある日の夜、ホテルのバーで出会い……。

ハリウッド資本の日本を舞台にした、いわゆる中年の危機を描いた映画。
とにかく東京をこれでもかってくらい美しく描いている。
幻想的な東京の映像を満喫してもらいたい。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(DVD)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年6月現在

-⑤人生の節目

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。