映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『勝手にふるえてろ』ネタバレなしの感想。松岡茉優が荒れ狂う

投稿日:6月 17, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「自意識過剰になりがちな人に向け恋愛映画」

【映画】勝手にふるえてろのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

恋愛経験ゼロの24歳、ヨシカは日々、中学時代から片想いをしている一宮(イチ)との脳内恋愛を楽しんでいた。そんな彼女だが、ある日の会社の飲み会で同僚の霧島(二)に告白をされる。初めて告白されるということを経験し、喜ぶヨシカだが、まだ残っているイチへの思いを捨てきれずにいて……。

多方面から割といい評価を得ていた今作。
期待して観たのだが、「世界観のクセが強い」と思ったのが第一印象だ。

ヨシカの勤める会社の女子社員は昼食後、みんなで一斉に歯磨きをする。
そのあと二十畳くらいある畳の部屋でくつろいだあと、電気を消してみんなで昼寝を取る。
序盤にこのシーンが流されるのだが、すでにムチャクチャな世界観だ。

その後、ヨシカは自分が片想いをしているイチについての熱い思いを街中の人に一人一人に呟いていく。Twitterではなく、見知らぬ人にだ。この演出もクセが強い。
それ以外にも、巨大なアンモナイトのレプリカか何かを自分宛に送って届いたことに、めちゃくちゃ喜んだりする。もはやアッパー系のクスリを決め込んでるキチガイとしか思えない。

会社の飲み会に誘われると、「今日は金曜だし、タモリ倶楽部が観たいから」と言って断る。
これはまあわかる。
私も今では割と社交的になったが、昔は世界一の人見知りで、高校生のときは一人で電車に乗るのも怖かったくらいだった。社会人になってからも、ゲームしたいがために会社の社長からの飲みの誘いを断りまくった経験もあるので、共感できる。

とにかく序盤は、終始調子悪いときの堤幸彦ドラマといった感じだ。
独りよがりとも取れる演出の数々は、完全に観客の感覚とズレていて、「このまま見続けて大丈夫なのか」と私はひどく心配した。

しかし、ある地点でそういった思いは一変する。
イチと再会するために、自身で開いた同窓会あたりから、彼女は現実的な行動を見せるようになるのだ。
不思議展開が急に息を潜め、序盤で彼女が否定していた「本能に任せた行動」を見せはじめる。ここで主人公の変化が見られる。

その後、どんでん返しが起こる。このシーンは大いにうなずけた。「だから、この映画が多くの人に愛されるのか」と納得できる非常に重要なシーンだ。
つまり、序盤のクセの強い謎の演出やヨシカの奇行の数々はすべて、このシーンのための伏線となっている。
この映画の一番の見所なので、あなた自身で観て確かめてもらいたい。

「万人ウケを狙わず、ヨシカ的な人に届けよう」といった思いでこの映画を作ったことを監督はインタビューで答えており、序盤で脱落する人がいてもおかまいなし、といった感じで突き進んでいたのだ。すべて意図があっての演出であり、見事なまでに成功している。

他に印象に残っているシーンを挙げるとすると、後半、子供っぽい行動を起こすヨシカに対して、ある人物が大人な対応をする。冷徹なまでに精神年齢の差を痛感させられ、観ていて辛くなる。
この対比は非常に痛々しいし、精神が成熟していく過程で私を含む、あなたや多くの人が経験したことであり、共感できるポイントだ。
他にもヨシカは自分がされてイヤなことを平気で人にしていたりとか、とにかく精神的な未成熟さが吐露するシーンはある意味ホラーだ。目を塞ぎたくなる。

そういえば、自分と偉人であるジャンヌダルクを比べるズレた感覚の発言に対して、霧島(二)のツッコミはちょっと面白かった。
このようなコミカルな発言もたびたび挟まれ、観客を笑かしてくれるのはいい。
監督はもともとはお笑い芸人志望だったこともあり、笑いがシリアス感を緩和してくれることを熟知しての演出だろう。もちろんこういったアホ丸出しな発言は、ヨシカのキャラ立ちにも一役買ってくれる。

結末は正直、首をかしげるものがあったのが残念。もう一歩踏み込むべきだ。
というのもこの映画、ヨシカが持つ自意識の強さで自分を振り回し、自分を追い込んでいたりするのだが、現実的な痛みはほぼ描かれてない。
一瞬あるとは言えるのだが、正直あれだけだとぬるい。現実を生きる私もあなたも、もっとハードな痛みを経験しているはずだ。
もっとそういった辛い経験を乗り越えた上での、あのラストなら納得できる。

しかしまあ松岡茉優は感情の起伏の激しいヨシカは上手く演じていたし、モー娘オタクといった側面もこの役にはぴったり合う。
女性作家原作による、女性監督が撮った女性主人公の映画だが、自意識過剰になりがちであれば男女問わずでヨシカに共感できる。
タイトルや、アンモナイトと自分の人間性を紐付けするセンスもいい。
ファッションのバランス感覚がズレていてがダサいのも、客観性に欠けている彼女っぽくていい。
不満点はありながらも純文学が原作だけあって、人間描写の優れたいい映画だ。

勝手にふるえてろのスタッフ、キャスト

■監督:大九明子
■出演者:松岡茉優 北村匠海 渡辺大知
■Wikipedia:勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年10月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。