映画の海

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②金の羊毛

映画『ペンギン・ハイウェイ』ネタバレなしの感想。難解なシナリオの意図を紐解く

投稿日:6月 19, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「少年とお姉さんによるひと夏の冒険譚」

【映画】ペンギン・ハイウェイのネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

小学4年生のアオヤマ君の住む町で、ある日突然、ペンギンが大量発生する。常日頃から研究することを趣味とする研究者気質のアオヤマ君は、「ペンギン・ハイウェイ研究」と称し、この現象を原因を探ることとなる。ある日、通っている近所の歯科医の受付のお姉さんがたまたまペンギンを出現させるシーンを目撃する。さらにクラスのハシモトさんが、森の奥に広がっている草原に「海」と称した謎の浮かぶ球体を発見し……。

夏の映画は切ないものが多い。
今作もそうだ。観終わったあと切ない思いで胸がいっぱいになった。

夏は暑いので冬と比べると行動的になったり、イベントが多かったり、景色も服装も明るくなったり、汗をかくことで生を実感できるなど科学的な理由も存在するとのこと。
夏は出会いと別れの季節でもあるので、それらと相まって儚い季節なんだろう。

話は映画に戻すが、「面白いけどよくわからない」と思ったのが正直な感想だ。
あまりに浮いた設定、発言等が多すぎる。つまり伏線を回収していないのでもやもやが残るのだ。
お姉さんが出すペンギンや、謎の球体「海」や、途中で出てくるジャバウォックなど、これらの関連性は明かされるのだが。

とは言っても見所が非常に多い。
主人公は理知的で、将来のことを考えて勉強熱心だ。何かあっても落ち着いて頭を働かすイヤミっぽくも映るタイプ。しかしおっぱいにも興味津々である。クールな彼に対して、ペンギンを出すお姉さんはやたらとノリが軽い。彼女は、そんな冷めた少年の子供の側面を突っついて彼を弄ぶ。
このやり取りは非常に癒されるし、延々と見てられる。
この二人のやりとりと可愛らしいルックスのペンギンが、この映画の難解さを霞ませるくらいに魅力的なのだ。

おっさんと女の子の組み合わせは良く見るが、お姉さんと少年の組み合わせって何か新鮮でいい。
そしてこのお姉さんの声がやたらとクセが強い。
声が低く、色気がない。最初聞いてて「ん?」と違和感を覚えたくらいだ。

女性声優にありがちな男に媚びた甘い声ではないのだが、それにしても色気がなさすぎる。
しかしこの違和感のある声質や喋り方がどんどんクセになってくるから不思議だ。誰かと思って調べたら2019年、大きな話題となった蒼井優だった。さすがである。
声に色気はないが、巨乳。そしてイジワル気質。バランスをうまく取られていてキャラ立ちしている。
実際に近くにいたら私はメロメロになってしまいそうだ。好き放題弄ばれて最後に捨てられるのだろう。悲しい話である。

そして後半、アオヤマ君とお姉さんとペンギンズが織り成すダイナミックな映像。
この映画の一番の見どころであるあのシーンは、ふと思い立ったときに見返したくなるほどに迫力がある。きっと少年の頃の私やあなたがあんな体験をしたらめちゃくちゃテンションあがっていたはずだ。ちょっと怖いかもしれないが、きっと大丈夫。そこにはお姉さんと、彼女が出すペンギンズがいるから。

完全補完するには原作が必読だと思われるが、作者は恐らく理解させる気はないだろう。
この映画の原作者、森見登美彦の本は「四畳半神話大系」だけ読了しているが、これもまたクセが強い。しかし尾を引くものがあるのも事実。普通のエンタメは書きたくない人なんだろう。
摩訶不思議な世界に読者に迷い込ませ、「あれは一体なんだったんだ?」といった読後感を与えたい印象が強い。
なのでこの映画も完全理解しようと思わない方がいい。感覚で楽しむのが正解だ。

原作者のインタビューでは、あくまでこの物語は、子どものころに妄想していたようなことをてんこ盛りにした小説で、その中心のアイディアには「世界の果て」があるとのこと。
ペンギンは「ペンギン・ハイウェイ」というワードをテレビで聞いて気に入って用いたらしい。

劇中での死生観についての言及は、執筆の途中に浮かんできて盛り込んだとのこと。
この映画で印象の強かったシーンの1つに、ある日の夜、アオヤマ君が寝ているときに妹いきなりやってきて「いつかお母さんはいなくなっちゃうの?」と言って泣き崩れるシーンがある。胸を打たれた。
私も子供の頃、同じようなことも思ってひどく落ち込んだ経験があるからだ。
ふとその時の思いが蘇って、再びみんないずれ天に召されることを考えてしまい、少し心が暗くなった。
こういった死生観に迫っているところも、この作品の重要な肉付けとなっている。

死を意識するからこそ、生が大きな価値を生む。
かなり感覚的なことだが、人によっては「どんなx逝き方をしたいか」を考えて逆算的にモチベーションにつなげる人もいる。それだけ重要なことだ。
死は、つまり世界の果て。劇中は世界の果てをビジュアルで見せているシーンがある。世界の果てを目の当たりにしたアオヤマ君は何を思うのか。

あなたは興味は湧いただろうか?
いろいろ書いたがダイナミックな映像と、少年とお姉さんの冒険譚として気楽に楽しめる作品には仕上がっている。
「あの人は、なぜここにやってきたのか」
この映画最大の疑問を描いてはいないが、深く追求する意味はない。ここをぼやかしているからこそ、少年とお姉さんのひと夏の不思議な冒険譚として心に残るように、作者やこの映画の監督は仕組んでいる。

公開当時は、劇場に大量のペンギングッズが売られたがほとんどが一瞬で完売してしまったとのこと。私もマグカップとか欲しかった。非常に悔しい。

ペンギン・ハイウェイのスタッフ、キャスト

■監督:石田祐康
■出演者:北香那 蒼井優
■Wikipedia:ペンギン・ハイウェイ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):100%
AUDIENCE SCORE(観客):64%

ペンギン・ハイウェイを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年6月現在

ペンギン・ハイウェイと関連性の高いおすすめ映画

ペンギン・ハイウェイの裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『ちはやふる 上の句』★★★★☆4
高校に入学したかるたを愛する千早は、かるた部を立ち上げる。幼なじみで昔かるた教室で一緒だった太一と再会し、強引に入部させる。しかし正式に部活として認められるには5人の部員が必要なため、千早は部員集めに奮闘することに。

広瀬すず主演のアイドル映画の印象が強いが、千早のキャラクターがぴったり合っていて、なかなか見ごたえがある。
続編にライバル役として登場する松岡茉優の怪演も見所。

U-NEXT:
Hulu:
Amazonビデオ:
ビデオパス:
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。