映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『雲のむこう、約束の場所』ネタバレなしの感想。エヴァに純愛要素を盛り込んだらこうなった

投稿日:6月 20, 2019 更新日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「エヴァと純情な男女の恋愛が合体したようなSFラブストーリー」

【映画】雲のむこう、約束の場のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

もうひとつの戦後の世界。1996年。日本はエゾ(北海道)と本州の南北に分断されていた。世界の半分を支配している共産国家群「ユニオン」はエゾを支配下に置き、謎の巨大な白い塔を建造していた。青県の津軽半島に住む中学3年生の藤沢浩紀と白川拓也は、雲をも突き抜ける巨大な塔に魅了され、バイトして稼いだ金で飛行機を作り、塔へ行く計画を立てる。内密に行っていた計画だが、同級生の沢渡佐由理に見つかってしまい……。

新海誠監督による2作目のアニメ映画。
観た感想としては、まだまだ発展途上の最中といった印象が強い。
彼の作品は「ほしのこえ」「秒速5センチメートル」「言の葉の庭」「君の名は。」の4作品を鑑賞済み。

性の匂いが一切しない、この上なく純で、自意識の強い少年少女の物語。
つまり「世界に私一人しかいない気がする」とか、そういういうことを平気で言うような、客観的な視点を持つ余裕がない精神的未成熟な子供たちがメインキャラクターとなる。
雰囲気はとてもシリアス。笑いは一切なし。

初期の新海作品はこの手のキャラが非常に多い。
本人がこういった青春期に辛い葛藤を経験しており、キレイな物語を描くことで自身を療養しているように思える。

次作「秒速5センチメートル」を3年後の2007年に発表し、半年にも及ぶロングランでスマッシュヒットを記録する。
(秒速5センチメートル:東京の小学校に通う貴樹と明里は、何となく精神的なつながりを感じ仲良くなる。しかし彼女が卒業と同時に栃木に転向してしまい、離ればなれとなる)
そのあと新海誠は結婚し、子供が2010年に産まれる。
言の葉の庭(2013)でようやく大人の女性がヒロインとして現れたので、自分の過去と向き合うことに一段落したのだろう。

2016年に公開された「君の名は。」ではおっぱいをギャグにするといったとんでもない進化を見せる。童貞の妄想映画ばかり作っていた新海が、まさか性を笑いにする演出をするとは思わなくて、劇場でびっくりした覚えがある。
おっぱいネタが繰り出されるたび、劇場では笑いが起きていたのが印象的だった。みんなおっぱい好きなんだなあと思った。私も例外ではない。

話を映画に戻すが、塔を目指すといったストーリーには惹かれる。
塔の起源は、現在確認されているものでは、紀元前8000年頃に作られたとされる古代都市イェリコ(パレスチナ)の監視塔だ。
つまり、塔は権力の象徴である。だからこそ私を含む人類は、圧倒的な高さを持つ塔に憧憬を抱くのだろう。
主人公らがカリン塔のごとく、天まで突き抜けた巨大な塔を目指すのは、明確な目的はないんだろうけど妙に納得してしまった。ただの冒険心だ。

しかし、シナリオのディティールが甘い部分が多く、画面にのめり込むほどの魅力はなかった。
塔には平行宇宙(パラレルワールド)を観測して未来予測をするシステムを備えている、といった仮説立てのもとストーリーは進む。

ある方法で、宇宙が平行宇宙に侵食されないように塔の活動を食い止めてる、といった流れなのだが、そもそも「平行宇宙に侵食されたら、世界はどうなってしまうのか?」といった前フリがされていないので、スリルはまったく感じられない。
序盤で、どっかの星が飲みこまれるような描写をしてもよかったように思える。
その時に動物たちが阿鼻叫喚をしながら消滅していく、など。

エヴァの影響を受けている感も強い。
オペレーターが興奮してまくしたてるように状況説明したり、黒い背景に白い明朝体のテキストが表示されたりなど。
既視感が強すぎるせいで、新海の作家性の邪魔をしている。
多少の既視感ならいいのだが、影響受けてる感が全面に出過ぎると、観客は「安直な演出だな」とがっかりしてしまう。

なぜユニオンはエゾに白い塔を建てたのか?
なぜ佐由理はあんなふうになったのか?
といった明かされない箇所も多く、難解と言わざるを得ない。魅力的な映画であれば難解であってもそれが味になるのだが、エヴァに引っ張られている印象を持ってしまった以上、まだまだこの時の新海は探りながら映画を作っていたのだろう。

実際にインタビューでも、デビュー作の「ほしのこえ」は一人で制作したのに対し、初めてチームで作った今作は原画の見方もわからなければ演出の仕方もわからない。などといった逼迫した状況だったことを語っている。

あなたは新海誠の初期作をどう思うのだろうか?
新海の良さは観ていて恥ずかしくなるような青臭い男女の青春ものだ。本作もその要素を押してはいるのだが、物語のディティールが甘い以外にも、そんな世界観に大人の道具である銃が頻繁に出てくるのも違和感を覚える。要素の盛り込みすぎだ。恋愛を見せたいのか、アクションを見せたいのか、SFとしての面白さを描きたいのか、新海が何を描きたいのか分からない。
余談だが、最新作「天気の子」でも予告で銃の存在が確認され、私は少し心配である。

映像の美しさは片鱗を見せているし、新海に強い関心があるなら観てもいいと思う。
「君の名は。」のようなテンポが良くてコミカルで、明るい男女の恋愛物を期待すると肩透かしを食らうので要注意。

雲のむこう、約束の場所のスタッフ、キャスト

■監督:新海誠
■出演者:吉岡秀隆 萩原聖人 南里侑香
■Wikipedia:雲のむこう、約束の場所
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):80%
AUDIENCE SCORE(観客):80%

雲のむこう、約束の場所を見れる配信サイト

U-NEXT:
Hulu:
Amazonビデオ:
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:
※2019年6月現在

雲のむこう、約束の場所と関連性の高いおすすめ映画

雲のむこう、約束の場所の裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『バクマン。』★★★☆☆3.5
現在、書籍の売り上げの40%弱が漫画雑誌とその単行本だ。そんな漫画雑誌の頂点に君臨する週刊少年ジャンプは、1995年に635万部という驚異的な記録を叩きだし、未だに破られていない。高校2年生の真城最高は小学校から一緒だった亜豆美保に片思いをしており、授業中も彼女の似顔絵を描いていた。ある日、そんな彼の絵に魅了された高木秋人に「俺と組んで一緒に漫画を描こう!俺が物語を考えるから、お前は絵を描いてくれ!」と頼まれる。

週刊少年ジャンプを題材とした、週刊少年ジャンプに掲載されていた同名タイトルの実写映画版。
とにかく熱い。サカナクションが本作のために書き下ろした「新宝島」の主題歌もいい。
特にお気に入りはエンドロール。「最後まで楽しませよう」といった大根監督の気持ちが伝わってくる。

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonビデオ:
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:
※2019年6月現在

-②金の羊毛

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。