映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『星を追う子ども』ネタバレなしの感想。新海誠という男を考察する

投稿日:6月 21, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「ジブリ風ファンタジー冒険譚」

【映画】星を追う子どものネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

田舎に住む女学生のアスナはある日、近所の山に自分で作った秘密基地に向かっていた。道中で謎の怪獣に襲われるが、突如現れた「アガルタ」という地からきたシュンと名乗る少年に助けられる。後日再会の約束をするが、彼は遺体で発見される。ある日、新任教師の森崎が授業でアガルタというワードを口にする。実は森崎は、亡くなった者を復活させる技術を持つアガルタを探し当て、亡くした妻を蘇らせる目的を持っていた。その後、アスナはシュンと瓜二つの少年シンと出会い……。

新海誠監督による「秒速5センチメートル」の次作のアニメ映画。
率直な感想は、向いてないことを無理していやっていて中途半端、といったところだ。

旧来のファンからも賛否両論が酷く、ショックを受けた新海は寝込んでしまったとのこと。
可愛らしい男である。こういった繊細さがあるからこそ、いい映画を作る感性が育まれるとも言える。

主人公は女学生アスナ。設定では11~12歳とのこと。中高生くらいかと思ってたので少しビックリした。
序盤で、アスナはもののけ姫のタタリ神のような怪物に襲われる。
彼女を助けるために颯爽と現れるヒーロー、シュンが持つものはラピュタの飛行石のような光るペンダントだ。
最初からジブリの幕の内弁当である。
よくもまあこんな露骨に天下のジブリ様から拝借する気になったものだなあと違和感を覚えるが、映像は綺麗なので何となく観れてしまう。

ちなみに新海映画には珍しくアクションもあるが、もっさりしていて無理してる感が否めない

アスナは2人暮らしで、家を空けがちな母の代わりに家事に奮闘したり、放課後は近所の山に作った秘密基地でラジオを聞いて過ごすといった平凡な日々を過ごしている。
そんな彼女だが、見たこともない獰猛な気ち悪い怪物を倒したり、高所から飛び降りてもピンピンしてる、明らかに超自然な男シュンを何の疑いもなく受け入れるから不思議だ。普通はもっと警戒するだろう。
あるいは声を荒げて問いただしたり、石を投げて追っ払ってもいいものだ。あまりに見た目がタイプだったのだろうか。

序盤でシュンは命を落とすのだが、遺体となった彼には怪物との戦闘で傷ついた腕を止血するためのアスナの制服のスカーフが巻かれている。
しかし、なぜかそのスカーフがアスナのものだと母は知っており、彼女を心配する。完全にエスパーである。
このようにディティールがあまりにずさんだ。
脚本制作の段階でチェックされるべき点があまりに多すぎる。

中盤に差しかかったあたりの、アガルタを巡る展開は悔しいがワクワクさせられる。
しかし、すぐにまたやってしまう。
シュンと瓜二つのシンがアスナを探し当てるときなど、ご都合主義がひどい。「何やねんその見つけ方」と観客は頭の中で突っ込むだろう。
とにかく全編に渡ってディテールがひどく、物語への没入を阻止してくる。ストーリーよりも粗探しをしたくなってしまう。
究極に細かいことを言うと、猫のミミの声優が人間臭くてヘタすぎる。

遺体を食べる謎の巨像や、形状変化させる飛行機など、節々のアイディは光るものがある。
良い部分もあれば、ダメなところはとことんダメといった感じでムチャクチャだ。

他の気になるところを挙げると、明らかに主人公のアスナより、旅の同行者である森崎の方が変化を見せている。
彼の方が根深い葛藤を抱えており、いわばこの旅は、森崎の人生の節目的冒険譚となっている。
アスナはただのお供のペットのようなものだ。
いや、ペットの役割すらはたしていない。
もっとお互いに足りないものを補い合うような関係性を作ったほうが自然で良かっただろう。じゃないと一緒に旅する必然性が低い。

そもそも主人公である彼女のキャラ性があまりに弱すぎるので、テコ入れも必要だろう。
後半、森崎はアスナに「君には命を落としてもらいたくない」なんて台詞を放つのだが、説得力もない。彼が彼女にこんな想いを抱くようになった具体的な描写もないのだ。

あなたはこの映画をどう思うのだろうか。
ジブリっぽい冒険譚が好きだったり、新海の映像美を堪能できたら満足できる人向けだ。展開に多少のワクワク感を煽るものはあるが、期待しない方がいい。

何だか映画をボロクソに言っているが、私は新海誠を愛している。私は男だがゲイではない。
ロックバンド「新生かまってちゃん」を見守っているのに近い。
「新生かまってちゃん」のギターボーカルの「の子」は精神疾患者で、いじめなどを経験している。
そういった思春期の葛藤を音楽という武器を使って戦っているのだ。

元SMAPの中居がやっていた生放送の音楽番組で歌わずにカメラにナルトを貼りつけたり、シングルCDでイジメたやつの実名でを上げたり、ライブ中にリストカットしたりなど、ムチャクチャやっていた。
今ではすっかりそういった葛藤は消えたのか、爽やかな曲ばかり作っている。
私としては嬉しい反面寂しさもあり、最近はすっかり聞かなくなってしまった。

青春パンクバンドのGOING STEADY(現:銀杏BOYZ)の峯田にも同じような感覚を持って曲を聞いていた時期もあった。

新海は攻撃的なの子とは正反対で、過去と向き合い方は美しい映像、美しい物語を描くことだ。
青少年をユニークに引き離して欲しい。出来るなら大きな規模の危機を添えて。さらにとびっきりのキレイな映像で。
観客が新海に期待するところはそれだが、当の本人は「秒速5センチメートル」以降では脱皮を試みている。
何だか切なさを感じる。

そして「君の名は。」で再びボーイミーツガールを描くのだが、明らかに今までとは異なる終わり方を見せる。実に爽やかな終わり方だ。
ここにも切なさを感じる。
新海は思春期の葛藤と、本当の意味でのお別れをしてしまったのだ。
そして天気の子はどんなストーリーとなるのか。内容もそうだが、特に終わり方が気になるものだ。

星を追う子どもの作品情報

■監督:新海誠
■出演者:金元寿子 入野自由
■Wikipedia:星を追う子ども
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):69%

星を追う子どもを見れる配信サイト

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonビデオ:
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

-②金の羊毛

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。