■評価:★★★☆☆3.5
「実話系ミステリー映画」

【映画】カエル少年失踪殺人事件のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価
舞台はテグ市の田舎町。地方議会選挙の日、大人たちは投票所のあるトクソ小学校に向かっていた。少年ジョンホは友達4人と合流し、カエルを探しにトアプ山付近まで行くが、そのまま行方知れずとなる。親たちは警察に通報するが、選挙だけで手一杯だと言われて追い返されてしまう。3週間が経ち、ようやく捜査本部が置かれることに。5年後、TV局ディレクターのカン・ジスンは鹿のドキュメンタリーで賞を取るが、ヤラセがバレて地方のテグ放送局に左遷される。そこでは5年前の少年5人の未解決失踪事件を未だに取材しており……。
良くできたミステリーだ。
特に私はタイトルに惹かれた。「カエル」というのがいい。
私は神奈川県小田原市出身の田舎育ちなので、カエルは身近な存在だ。子供の頃は、良く近所の田んぼにカエルの子供であるおたまじゃくしを取りにいったものだ。昔の私は、近所で評判の可愛い子供であったことはあなたもご存じの通りだと思うので、臨場感を覚える恐ろしい事件である。
それと開始数分で事件が発生するのも、テンポが早くていい。
あまりに早すぎたせいで、ちょっと巻き戻して二度見したくらいだ。
この映画の題材となった「カエル少年事件」は「華城連続殺人事件」「イ・ヒョンホ誘拐殺人事件」と並び、韓国三大未解決事件として有名だ。
この3つの事件は1991年にすべて発生している。
実に興味深い符号だ。同じ時期に凶悪な未解決事件が3件も発生するなんて。
とはいっても理由は大体判明している。
民衆の蜂起による光州事件などを経て、1988年にソウルオリンピックの開催が決まったこともあいまって、民主化の要求が高まる。
1987年に16年振りとなる民主的選挙が行われ、盧泰愚(ノ・テウ
韓国は1980年代半まで政治面で、独裁体制が取られていた。)が1988年に大統領に就任する。
90年前後の韓国は、独裁政権から民主政権に移り変わる時代の過渡期。国民はもちろん、警察などの行政機関も変化を要求される激動の時期だった。国が不安定であれば、国民も先行きに不安を覚えるのは当然である。
話を映画に戻すが、主人公カン・ジスンは左遷されてテグ市の田舎町に飛ばされてきたテレビマンだ。
視聴者を泣かせるためならヤラセも辞さない冷徹な男である。
カンは歓迎会で、5年前のカエル少年失踪事件に関連するいかにも視聴率の取れなさそうな地味な報道をしていることを知り、おちょくると、局の上司に物凄い形相で叱られる。そして興味がわく。「なぜ地元の人はこんな昔の事件にこだわっているのか」と。
この映画を楽しみやすいポイントの1つは、カンが事件について無知なことだ。
都会から左遷されたカンは事件について何も知らないため、観客も彼と一緒になって一から知っていける。
序盤では「どうせ誰かに誘拐されて失踪してるんだろうなあ」と観客は思う。
しかしカンが当時の事件に関するVTRを漁っていると、投票日に失踪事件が発生したこともあり、「親に投票させないために誰かが子供を誘拐した」といった仮説立てをする心理学の大学教授もいたのだ。(このVTRは一度も放送されなかった)
これは「妨害」という観点での仮説だ。
この意外性は面白い。
失踪後は身代金要求などもなかったので、この仮説が正しかったら闇深いものとなる。不謹慎だがワクワクさせられる展開だ。
しかし、考え方の視点1つでこうも物事の印象が変わるのか、と考えると恐ろしい。
少しずつ分かる真実。
この地域は選挙が接戦していたことや、失踪したジョンホの母はなぜか子供が遊びに出掛けて数時間後のまだ午前中に「子供が失踪した」と町を散策しはじめる。この年代の子供なら、一日中遊んで夕方帰って来るくらいなのが当たり前なのにだ。
このように、真実や新たな謎が重箱のように次々と重なっていく。構成が良くできており、観客は一気に物語に入り込んでしまう。
基本的にはカンが、VTRに出ていた大学教授にところに通って少しずつ事件の情報を得たり、それに基づいた仮説を聞く。その話を刑事に持ち込む。といったことを繰り返しながら物語が進展していく。
演出としてうまいと思ったのが、大学教授との会話は非常にシリアス。それに対して刑事はやたらおちょくるようなコミカルな態度を取る。
重すぎず、軽すぎずのいいバランスでストーリーを追える。
特に大学教授のオーラが凄い。華のある顔立ちではないが荘厳な雰囲気が漂っており、セリフ一つ一つに説得力がある。なので、一言でも聞き逃したくないと、思わず画面に見いってしまう。
あまりにもお堅いキャラなので、真剣に捜査しているときに落とし穴にでも落としたいって思ったのは私だけではないはず。
物語が進展するたびに出てくる謎が、どれも意味不明なものではなく、想像力を掻き立ててくるような内容だ。明らかに犯人を連想させるような意味深な謎である。
例えそれがミスリードだったとしても、観ている側はどんどん物語に引っ張られていく。
不満点を挙げるならば尻つぼみであるという点。
特に後半、犯人が絡む辺りから一気に物語のテンションが下がっている。犯人の動機付けも甘い。主人公に暗雲が漂う雰囲気は悪くはないのだが、未解決事件が題材ということもあってこの辺りが限界か。
あなたはこの映画に関心が沸いただろうか。
オーソドックスな謎解きものだが、主人公カンの変化も描いており、ミステリー映画としての平均値は高い。
余談だが、韓国三大未解決事件のその他二つも映画化されている。
華城連続殺人事件→「殺人の追憶」
イ・ヒョンホ誘拐殺人事件→「あいつの声」
といったタイトルだ。あなたの琴線に触れたら観てみるといい。
特に前者は評価が高く、顔面ハートフルでおなじみソン・ガンホ主演。
カエル少年失踪殺人事件の作品情報
■監督:イ・ギュマン
■出演者:パク・ヨンウ リュ・スンリョン
■Wikipedia:カエル少年失踪殺人事件
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):73%
カエル少年失踪殺人事件を見れる配信サイト
U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonビデオ:○(字幕)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年6月現在
カエル少年失踪殺人事件と関連性の高いおすすめ映画
カエル少年失踪殺人事件の裏ジャンルである【なぜやったのか?】に分類される映画。

『羊たちの沈黙』★★★★☆4
アメリカ各地で女性に皮膚が剥がされて命を奪われるという連続猟奇事件が発生するが発生する。犯人は“バッファロー・ビル”と呼ばれていた。FBIアカデミーの実習生クラリス・スターリングはある日、訓練中にクロフォード主任捜査官から1つの任務を課される。それはバッファロー・ビル事件を解決するため、刑務所に収容されている元精神科医で囚人のハンニバル・レクターに捜査協力させること。
第64回アカデミー賞で主要5部門を受賞。
人気ヴィラン(悪役)であるハンニバル・レクターが世に広まったタイトル。
アンソニー・ホプキンス扮するレクター博士の異様なオーラは普通ではない。118分の上映時間に対して、登場時間はわずか11分というのが驚きである。
U-NEXT:○
Hulu:○
Amazonビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年6月現在