映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑦なぜやったのか?

映画『祈りの幕が下りる時』ネタバレなしの感想。ミステリーという体裁の中でドラマを描くのに限界を感じる

投稿日:6月 28, 2019 更新日:

■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):-

■評価:★★★☆☆3.5

「ドラマ性の強いミステリーが好きな人向けの東野圭吾原作映画」

【映画】祈りの幕が下りる時のネタバレなしの感想、レビュー、批評、評価

東京都葛飾区の小菅という土地のアパートで、滋賀県在住の押谷道子の腐乱遺体が見つかる。アパートの住人は越川睦夫という男のものだが、現在行方不明となっている。捜査一課の松宮は、この事件の犯行時期や現場の近さから、新小岩で発生したホームレスが焼かれて亡くなった事件との関連性を疑う。さらに松宮は道子が住む滋賀県の町で聞き込みを行うと、彼女は中学の同級生で舞台演出家の浅居博美を訊ねて上京していたことを知る。管轄違いだが、松宮はいとこの日本橋署の刑事・加賀に意見を求めると、博美は加賀の知り合いであることが判明し……。

とんでもないプロットだ。
(プロット:あらすじのようなもの)

良くも悪くもだが、この作品は映像より小説向きである。
プロットが複雑だからだ。
小説であれば自分のペースで読み進められるが、私のようなチンパンジー並みの理解力だと垂れ流しの映像媒体で完全に理解するのは厳しい。

特に登場人物が多く、相関関係も複雑である。
押谷道子の腐乱遺体や、別件でのホームレスの遺体が繋がりを見せたり、ある人物が偽名を使っていたり、ある人物とある人物に実は接点があったりと、とにかく手の込んだ作りとなっている。

時間軸に関しては、そこまで入り組んでいないのが救いだ。
私は何度も巻き戻し、理解したら先に進み……といったことを繰り返しながら視聴した。
一応折り返し地点で、加賀が相関関係を再確認するシーンが挿入されており、置いてきぼりにならないような工夫はされている。

内容としては胸を打たれるものがある。
よくもまあこんな悲しい物語を思いついたものだと。
レビューを見ると松本清張の「砂の器」との共通点が多いらしく、原作者の東野圭吾や映画制作陣も意識しているとのことだが、私は未読なので言及は控える。

本作は、東野圭吾原作の加賀恭一郎シリーズの最終章だ。
①卒業
②眠りの森
③どちらかが彼女を殺した
④悪意
⑤私が彼を殺した
⑥嘘をもうひとつだけ
⑦赤い指
⑧新参者
⑨麒麟の翼
⑩祈りの幕が下りる時

全10作品が敢行されているが、特に過去作を知らなくても楽しめる。
私は「赤い指」の小説だけ読んでいたが、物語に関連性はないので物語には難なく入り込めた。

本作はワイダニット(why done it:なぜやったのか)だ。
つまり、動機面にフューチャーしたミステリーとなる。
他にはフーダニット(why done it:誰がやったのか)、ハウダニット(how done it:どうやってやったのか)がある。

具体的な感想に入ろう。
この映画、確かに心を揺されぶられるものがあるが、東野圭吾作品を読んでいてたびたび思うことがある。「その動機には無理がある」と。今作も例外ではない。

動機が判明したとき、「犯行に手を染めなくても解決できるだろう」と思ってしまった。すぐにその別の方法はイメージできたくらいに。
最後、犯人は手をかけた相手に「ある言葉」を口にするのだが違和感でしかない。「だったら別の手段を取れよ」と観客は思う。
犯人は金にも困ってなさそうなので、さまざまな解決法を提示できたはずだ。

東野圭吾はこの原作小説を描くにあたって、ドラマを描きたかったのだろう。
しかし、ミステリーでドラマを描くには限界がある。
ミステリーは流れが決まってるからだ。
誰かの命を奪い、トリックが明かされ、犯人は逮捕される。
悲劇しか描けないのも特徴。
こういった狭い枠組みでドラマを描くとパターン化してしまい、映画や小説にたくさん触れている人ほど鮮度が感じられなくなる。

ドラマを描きたいのなら、ミステリーといった縛りのきついジャンル物の中ではなく、ノンジャンルで描いた方がいい。
世の中にはあまりにミステリーは出回りすぎている。

あなたはこの映画に関心は湧いただろうか。
私としては毎回、東野圭吾作品のドラマ部分を期待して読むんだが、今回も突き抜けるものはなかった。東野圭吾作品にありがちな鑑賞後感(読後感)といったところ。
批判的な意見が多くなってしまったが、内容は面白い。非常に作りこまれており、よく出来た作品であることに間違いはない。

余談だが、私が彼の著作で唯一突知ってから観た映画では序盤から号泣だった。
違和感も完全に無いわけではないのだが、動機はわりと自然だし、何よりトリックがあまりに突き抜けすぎている。このトリックが強烈にドラマ性を与えてくれた。直木賞の受き抜けるものを挙げるとするならば、容疑者Xの献身である。
これは本でも泣いたし、すべてを賞に納得の会心作だ。
もし関心が湧いたら本を手に取ってもらいたい。
本に馴れていなくても大丈夫。かなり読みやすいので一瞬で読み切れる。
映画も面白いのだが、端折られてしまった箇所がメインキャラクターの石神を描くのにかなり重要なため、原作本をおすすめしたい。

祈りの幕が下りる時の作品情報

■監督:福澤克雄
■出演者:阿部寛 松嶋菜々子 飯豊まりえ 桜田ひより 溝端淳平
■Wikipedia:祈りの幕が下りる時

祈りの幕が下りる時を見れる配信サイト

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:原作本
ビデオパス:
TSUTAYA TV:
Netflix:-
※2019年6月現在

祈りの幕が下りる時と関連性の高いおすすめ映画

祈りの幕が下りる時の裏ジャンルである【なぜやったのか?】に分類される映画。

『アヒルと鴨のコインロッカー』★★★★☆4
春から大学生となる椎名は、東京から仙台にあるアパートに引っ越してきた。部屋の前で段ボールをまとめていると、隣人の河崎と名乗る男に声をかけられる。次第に仲良くなった彼からある日、「本屋に行って広辞苑を奪おう」という話を持ちかけられる。

伊坂幸太郎の同名小説の実写版。
叙述トリックを用いたミステリーだ。
叙述トリックとは、普通のトリックとは違い、文章で読者の先入観や思い込みを利用し、読者を騙すタイプのもの。
男キャラと見せかけて実は女性だったとか。現在だと思ってたら実は過去や未来だったなど。
叙述トリックでは、トリックが明かされても登場人物は驚かない。なぜなら彼らは知っているから。驚くのは読者だけである。

こういった属性なので基本的には、映像化不可能である。画として映すと観客にバレるので。
映像化する際は、相当なアイディアを捻る必要がある。
この映画は、シンプルな方法でクリアしているが、私が推したい箇所はキャラクターの魅力である。
映画も面白いし、原作はもっと魅力に溢れている。
特にブータン人が出てくるのだが、日本語訛りが非常に可愛く、異様なインパクトを持っている。

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:原作本
ビデオパス:
TSUTAYA TV:
Netflix:
※2019年6月現在

-⑦なぜやったのか?

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。