映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑥バディとの友情

映画『天気の子』ネタバレなしの感想。賛否両論の理由

投稿日:7月 24, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「新海誠作品を観たことがない人向けの純愛ファンタジー」

【映画】天気の子のネタバレなしのレビュー、批評、評価

伊豆諸島の島に住む高校1年生・森嶋帆高は家出して東京本土にやってくる。ネットカフェやマクドナルドで暮らす日々を送るが金が尽きてしまい、上京の際にフェリーで知り合ったライターの須賀圭介を頼って彼を尋ねる。そこは姪の夏美と2人だけで運営する零細編集社で、帆高は住み込み・食事付きといった条件に惹かれて入社することに。

期待せずに観に行ったが、思った以上にがっかりさせられた結果となった。
面白いとは思うが、この映画、言葉にすると「面白風」である。
ハライチ 岩井がゴッドタンという番組で、全く面白くないことに演者がバカみたいに笑っているような番組を「お笑い風」なんて称していたが、それの映画版といったところ。

好きなところもたくさんある。
帆高がヒロイン・陽菜とビジネスをする流れはめっちゃくちゃワクワクする。このシチュエーションはかなり好き。
帆高は家出している身だし、陽菜も弟と二人暮らしをしているのでサバイバル感もあっていい。

何より花火のシーンは素晴らしかった。
アニメにしか出来ないアクロバットなカメラアングルによる映像で興奮させられた。恐らくエヴァの影響だろう。
音楽も良かったし、特に三浦透子が歌った「グランドエスケープ」の高揚感は凄まじいものがある。映像の美しさも相俟って思わず息を呑んだ。

だが、それら良い部分が全部食われるくらい気になる点が多い。
まずスポンサーが多すぎるし、露骨。スポンサーの商品を「うまいうまい」言いながら食ってる姿がわざとらしく見えて気持ち悪い。作品に邪魔。映画から意識が離れる。

雲のむこう、約束の場所」の記事でも書いたが、銃もファンタジーな純愛要素との噛み合わせが悪い。やけに銃が生々しく見えて違和感を覚える。別のもので展開させて欲しい。

あと、前作の「君の名は。」は入れ替わりという特性上、二人が一緒のシーンは実は少ない。
それゆえに新海色が強くなりすぎなかったのが結果的に功を奏した。
今作は早い段階で二人は出会い、かなりの時間を共にするので、いかにも男が理想とする女性描写の連続にしつこさを感じてしまった。これだと女性は敬遠してしまうのでは?

一番無視できないのは前作の引きづり具合。
これはちょっとひどい。新海本人は理解してるのだろうか?
やけに新作が早いなって思ったが観て納得した。「君の名は。」とやってることは全く一緒である。何も進化してない。

老人や宗教に頼ったストーリーの補強、須賀の抱える秘密、胸ネタ、運命によるお姫様の幽閉(セカイ系)などなど。これらすべて前作でやってるのでここからは離れてほしい。
新しさがなければ新作なんて作る必要はない。もはや新作ではなく、リブートだ。

新海誠はもしかしたら短編の方が向いてるかもしれない。彼が描く、男目線の純愛映画は長編だとちょっと胃もたれする。
秒速五センチメートル(63分)、言の葉の庭(46分)なんてコンパクトで程よかった。

今作はそこそこ売れるんだろうけど、あまりに浅はか。ちょっと幻滅してしまった。
というか過去作でもエヴァやジブリのガワだけを切り取ってシールのように貼りつけた世界観の映画も存在したので、新海の才能の枯渇を感じてしまう。そもそも彼は才能なんて持っていたのだろうか。そこすら疑ってしまう。
今後の彼は君の名は。の呪縛に飲まれるだろう。
君の名は。を越える作品を産み出すのは不可能かもしれない。

あと、公開前からインタビューで答えていた「彼は自分勝手な選択をするので賛否がわかれるかも」なんて言ってたが、正直大したことない。心底、過去を捨てる覚悟を決められなかった印象がこのシーンとラストを観て決定づけられた。
そもそも「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」なんて数百倍イカれた終わり方を見せる。このくらいやってから賛否の心配をしてほしい。賛否どころか否しかなさそうだが。

胸ネタをまたやるのかってことも問題だが、またやるにしても、まあ君の名は。に比べてマイルドなこと。
君の名は 。 の胸ネタは一部では「気持ち悪い」なんて言われていたが、私は振り切っていて好きだった。周りの声に萎縮しすぎでは?
そのせいか、本作のコミカルな描写は劇場ではだだスベリ。同じ日に見た「存在のない子供たち」の方が笑いが起きていたのは印象的だ。

もし本気ですごい作品を作りたいのなら、早急に川村元気やRADWIMPSと別離して、新世界に足を踏み込むべき。
新しいことをやり続けない限り人間は育たない。保身に走る人間は魅力的ではない。

確かに前作があれだけのヒットをしたら、次作品へのプレッシャーは強烈なものがあっただろう。我々一般人では到底経験することのないレベルで。
しかし、こうも踏襲箇所が多いと擁護できない。新海の弱さがモロに出てしまった。批判を恐れるなよ。痛みを恐がるな。

別に「童貞少年の純愛物語」や「美しい風景描写」といった新海の作家性に拘るのはいいと思う。
女性向けの恋愛映画が氾濫する中で、男向けの純愛映画は貴重だし、ニーズはある。
だからこそ、もっといろんなアプローチで見せて欲しい。セカイ系のファンタジーが続いたから、いっそのこと海外を舞台にした現実劇として描いてみてはどうだろうか? あるいは、規模を縮小して学園や田舎の村のみで完結する物語でもいい。
自分がやったことのない世界観を用いて上記のテーマを追求してもらいたい。正直、こんなにもあざとい映画が生まれるとは思わなかった。

天気の子の作品情報

■監督:新海誠
■出演者:醍醐虎汰朗 森七菜 小栗旬 本田翼
■Wikipedia:天気の子
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):-

天気の子を見れる配信サイト

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Netflix:-
※2019年7月現在

天気の子と関連性の高いおすすめ映画

天気の子の裏ジャンルである【バディとの友情】に分類される映画。

『愛のむきだし』★★★☆☆3.5
クリスチャンの家庭に育った高校生・本田悠。亡くなった母からは「いつかマリア様のような人をみつけなさい」という言葉が胸に刻み、日々を過ごしていた。ある日、神父の父・テツにカオリという愛人ができ、彼は彼女に溺れていく。しかしカオリはテツから離れてしまい、優しかった父は性格が一変、悠に毎日「懺悔」を要求するようになる。悠は父とのつながりを保つため、罪作りに励むようになる。次第に女性ばかりを狙う盗撮魔となり……。

キリスト教モチーフがいいアクセントとなっており、神父である父に懺悔をするため盗撮をするといった流れが非常にユニークで素晴らしい。
園子温は当たり外れが非常にはっきりした監督だが、今作はもちろん当たりである。
満島ひかり出世作。

U-NEXT:○(最長版あり、見放題)
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Netflix:○(見放題)
※2019年7月現在

-⑥バディとの友情

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。