映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『ラヂオの時間』ネタバレなしの感想。三谷幸喜の才能にただただ圧巻

投稿日:7月 31, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「ワンシチュエーションコメディの傑作」

【映画】ラヂオの時間のネタバレなしのレビュー、批評、評価

ラジオ局「ラジオ弁天」で、平凡な主婦・鈴木みやこが応募した脚本が生放送のラジオドラマに採用されることとなった。内容は熱海を舞台とした漁師とパチンコ屋でパートをしている主婦のラブストーリー。リハーサルも無事に終わり、あとは本番を迎えるだけとなったが、主演女優の千本のっこのわがままに端を発し、放送直前で次々と脚本の内容に変更が加えられていくことに。

あまりに完成度の高いストーリーに圧倒されてしまった。
凄まじい才能である。ちょっと分けて欲しい。
ラジオドラマは今の時代ではあまり目に触れることはないが、序盤であるキャラがTVドラマとの違い・面白いポイントを解説してくれるので、スムーズに物語に入りこめる。もちろんこの解説が、今後の波乱の前フリにもなっている。

この映画は、ほぼラジオ局内のみで展開されるワンセットドラマだ。
シチュエーションの規模が小さい分、画が変わらない代償として、いかにアイディアを凝らして様々なアクシデントを起こさせ、観客を飽きさせないかが重要となってくる。つまり脚本家の力が最も問われる設定だ。
監督・脚本を担当した三谷幸喜は自分で自分を追い込んでいるようなものなので、ただのドMである。

だが、本作は見事にその厳しいハードルを乗り切っている。
この小さな舞台に大量のキャラを投入し、見事にさばききる手腕は圧巻。しかもそれぞれに色を与え、くすむことなく混じり合わせることに成功している。

ヒロインは平凡な主婦・みやこ。腰の低いおばさんで相手の顔色ばかり伺う弱気な人。
やたらと彼女に噛みつく若手ディレクター・工藤が本作の主演だ。
自分の演じるキャラの名前に文句をつける偉そうな女優・のっこ。さらにそんなのっこを良く思っていない俳優などもおり、いかにもフラストレーションが増幅していくような現場である。

ヒエラルキーにも注目してもらいたい。
主婦には偉そうな若手ディレクター・工藤も、編成部長・堀ノ内には無視をされる。
プロデューサー・牛島は主婦・みやこには寄り添う様相を呈するものの、のっこのワガママには押し切られ、彼女の要望を何よりも優先する。
彼女がワガママになってしまうのも、業界ならではのちょっとした理由に端を発しており、面白い。

しかし、なぜみんなでひとつの作品を作ろうとするのにドタバタしてしまうのか。
それは、人(この映画では肩書き)によって目的・優先順位が異なるからだ。番組を成立させたい者、ただプライドを守りたい者など。
多くのキャラが目まぐるしく、それぞれの目的を持って動き回る。些細なことがボタンの掛け違いとなり、事態がどんどん悪化していくのだ。

個人的に好きなのが、主婦・みやこと、彼女に噛みつく若手ディレクター・工藤との距離感。
この距離感の変化に注目してもらいたいのと、工藤が持つ多面性にも目を向けてもらいたい。なぜ彼は噛みつくのか。

更に、放送しているラジオドラマを聞いている人の視点も入れているのは素晴らしい。
これによって、彼らが奮闘してることに意味が出てくる。
聞いてる人がいないと、投げやりになってムチャクチャな台本にしても成立してしまうからだ。つまり、奮闘の理由がなくなる。
ラジオドラマを聞いているトラックの運ちゃんは、様々なリアクションを見せてくれる。観客はついつい彼に最後まで楽しんでもらいたいと願ってしまう。
果たして、生放送は上手くいくのか。

あなたはこの映画、観たことはあるだろうか?
この記事を読むことで、もしかしたら気づくかもしれない。
まるで少し前に大ヒットしたある映画を彷彿とさせるプロットだ。
私がこの映画を観ようと思ったのは、その映画と本作のコンセプトが似ているという情報を耳にしたため。

これほどまで、レベルの高い脚本はなかなかお目にかかれない。
ワンシチュエーションだからこそ、脚本力が際立っている。三谷幸喜はこの脚本を作るにあたって相当苦労したはず。

ラヂオの時間の作品情報

■監督:三谷幸喜(新選組!、みんなのいえ、THE 有頂天ホテル)
■出演者:唐沢寿明 鈴木京香 西村雅彦

ラヂオの時間を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年7月現在

ラヂオの時間と関連性の高いおすすめ映画

ラヂオの時間の裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『THE WAVE ウェイヴ』★★★☆☆3.5
高校の体育教師をしているライナー・ベンガーはある日、独裁についてクラスで教えることとなる。クラスを独裁国家に見立てた心理実験のような授業で、表決の結果、ベンガーが指導者を担うこととなる。生徒たちは先生をベンガー様と呼ぶこととなるが……。

十年近く前に一度だけ観た映画だが、未だに記憶に残っている。それほど強烈なインパクトを持つ映画だ。
あなたも一度観たら忘れられない一作となるだろう。
奇抜な内容ではあるが、史実をモチーフとしている。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年7月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。