映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『千と千尋の神隠し』ネタバレなしの感想。世界の頂点を手にしたアニメの金字塔

投稿日:

■評価:★★★★☆4.5

「ひと夏の冒険物語」

【映画】千と千尋の神隠しのネタバレなしのレビュー、批評、評価

伏線が回収される瞬間は心地いい。
その瞬間は梨汁ブシャー!
じゃなくて脳汁がドバドバ出るような気持ち良さがある。
しかし、伏線をあえて回収しない作品って実は多い。
伏線をすべて回収するのは自然じゃない!と思っているのか、あえて放置して観客に解釈をゆだねるのが狙いだ。

その筆頭は小説家・村上春樹である。
何かのエッセイで「伏線を回収すればいいってものじゃない」的なことを言っており、彼の言い分に私も納得した。(詳細は忘れた)
ただ彼の場合、裏設定を作らずに意味深な伏線をただちりばめているだけなので、無責任すぎるが。

大体、伏線を回収しないような作家はひねくれジジイがほとんどだ。
千と千尋の神隠しを監督した宮崎駿もまた然りである。
今作もまあ性格の悪さが炸裂している。

10歳の少女・千尋は両親と共に車で引っ越し先へ向かっていた。道中で迷子になり、森の中にある奇妙なトンネルを見つける。千尋の父は興味を持ってトンネルをくぐり、母と千尋は後に続く。トンネルの先には無人の街があり、そこの飲食店にあった食べ物を父と母は食べてしまう。すると二人は豚へと変身してしまう。千尋は戸惑い、帰り道を探すが……。

ほぼ初見。
10代の頃に一度見たがあまり理解できず、今回はTVで放送されるということで改めて鑑賞してみた。

結論から言うと、異様な完成度の高さと緻密な作りこみと難解さが入り混じったとんでもない作品で、言葉では表現するのは難しい面白さがあった。

一筋縄ではいかないストーリーではあるが、ユニークなアイディアの数々で、シンプルに楽しませてくれる。
序盤でトンネルをくぐる。
この、いかにも異世界への扉を開く描写は普遍的だがワクワクさせられる。

その先には廃墟のような謎の町が姿を現す。
日本とはちょっと違った様相の町並みで雰囲気があり、日常とは異なる印象を観客は受ける。

最初に訪れるショッキングなシーンはブタだ。
千尋の年代にとって親はすべてで、親がいないと生きていけない。
そんな親がブタになったら、確かにショックだ。千尋の命に関わること。

しかし、親をブタにするって、とんでもない発想だなあと思う。どんな脳みそをしてるんだろうか。
ブタはただの動物じゃない。なぜなら人間はブタを日常的に食べるものだから。
そんな生き物に成り下がってしまったら最悪だ。
結構心理的なショックを覚えてしまった。

しかも、ブタは理性を失ったかのように食い物をあさり、そんな哀れな両親は何者かにムチでしばかれる。子供目線からしたら酷い衝撃を受けるだろう。
宮崎駿の性格の悪さが滲みでている。一体どんな顔をしてこのシーンの絵コンテを描いたのだろう。見てみたいものである。

その後も、千尋が両親を助けてるために働くこととなる油屋(風呂屋)の客の八百万の神たちのユニークな造形。
油屋のボス・湯婆婆のルックスなんて化け物でしかない。
この強欲ババアである湯婆婆が本作の敵となるのだが、彼女が唯一言うことを聞いてしまうのが坊という名前の赤ちゃん。歩けない乳児のくせに異様にでかい。でも可愛い。
その後に現れる、オクサレ様のいかにも腐臭が画面を通してただよってくるようなヘドロ感や、カオナシの造形など、もう宮崎駿特有のユニークなアイディアの数々のてんこもりだ。

設定やデザインはお見事としかいいようがない。唯一無二の作家性だ。
分かりやすく観たまんまを楽しませてくれるのだが、それだけではない。

キャラクターの唐突で脈絡のない言動や、違和感を覚える現象など、描写を作為的に抜いているとしか思えないシーンが数多く映される。
例えば、オクサレ様から出てきた大量のゴミのようなものや、千尋がハクの背中に乗ったときにあるひらめきをするシーン、というかハクなんて謎そのものだ。

これらは劇中には明かされない。
観客が考えて読み解く必要がある。
ほとんどすべての要素が意味があるため、観客が違和感を覚えたシーンのほとんどは解答が存在する。その解答こそが本作のテーマである。
良くもまあ丹念に作りこまれた作品だ。

観終わって思ったんだが、宮崎駿の精神を受け継いでるって意味での真の後継者ってエヴァンゲリオンの監督・庵野秀明しかいないんだろうなと思う。(庵野秀明は風の谷のナウシカの原画として参加しており、巨神兵の破壊シーンは彼の手によるもの)
エヴァンゲリオンの膨大な知識に基づいた緻密な設定は観ていて頭がおかしくなる。作り込みが普通じゃない。
二人に言えることだが、こんな完成度の高い映画を作りつづけたら身が持たないだろう。どれだけ命かけてるんだ。考えただけで恐ろしい。

実際に宮崎駿は、前作に当たる「もののけ姫」の制作を終わったあと、疲れ果て、引退宣言をして山小屋で療養していたという。
よく宮崎駿の山小屋には、スタッフの子どもたちがよく遊びに来ており、少女たちは持参した漫画本を山小屋に置いていった。
宮崎駿はその漫画を読んだとき、恋愛話ばかりであることに辟易し、「10歳の少女たちが本当に必要としているものは別にあるのでは?」と考えるようになった。その後、彼女たちに映画をプレゼントすることを目的として、引退を撤回してアニメ映画界に回帰した。千と千尋の神隠しはこのようにして生まれた。
詳細はWikipediaに書いてあるので、気になったら確認してほしい。下記にリンクを貼っている。

あなたは今作を見たことがあるだろうか?
ジブリ映画は内容はもちろん、キャラクターの表情の動きがあって観ていて心地がいいので、何度でも観たくなるもの。
もののけ姫もまだ一度しか観てないので、いずれは改めて鑑賞してレビューしたいところ。

千と千尋の神隠しの作品情報

■監督:宮崎駿
■出演者:柊瑠美 入野自由 夏木マリ 神木隆之介
■Wikipedia:千と千尋の神隠し
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):97%
AUDIENCE SCORE(観客):96%

千と千尋の神隠しを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年8月現在

千と千尋の神隠しと関連性の高いおすすめ映画

千と千尋の神隠しの裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『ゴーストワールド』★★★☆☆3.5
ロサンゼルス郊外の田舎町に住む幼馴染みのイーニドとレベッカ。二人は高校生活や家庭に冷めた感情を持っていた。ある日、二人は暇つぶしで出会い系の広告に応募し、冴えない中年男・シーモアと出会う。

高校卒業したばかりの二人の女性の物語。
「レディ・バード」「スウィート17モンスター」に通ずる思春期の節目を描いた良作。
今作もキャラクターが魅力で中年男・シーモアに扮したスティーヴ・ブシェミの冴えない感がたまらない。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(DVD)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年8月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。