映画の海

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②金の羊毛

映画『ダンスウィズミー』ネタバレなしの感想。アンチミュージカルの傑作

投稿日:8月 19, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「ミュージカルが苦手な人でも楽しめるミュージカル・ロードムービー」

【映画】ダンスウィズミーのネタバレなしのレビュー、批評、評価

ミュージカルが苦手な人は結構多い。
というか実際に私もそうだった。(先月まで)
なぜ、日常生活の中でいきなり歌って踊りだすのか意味がわからないからだ。不自然きわまりない。
しかも周りのみんなも乗ってくれて、一緒に踊り出すしまつ。世の中そんなに優しい人ばかりではない。

で、本作の監督および脚本を務めた矢口史靖もそう思っていたタイプである。
彼はミュージカル映画が好きでありながらも、唐突に歌い出す演出には引っかかりを覚えていたそう。さらに、多くのミュージカル映画はミュージカル部分を外しても成立することが多いため、「もし自分がミュージカルを作るのなら、ミュージカルじゃなければ描きようがないものを作りたい」と考えていたとインタビューで語っている。
そこで『催眠術』というアイディアが浮かび、本作の制作に至った。

一流会社に勤める勝ち組OLの鈴木静香。彼女は子どもの頃の苦い思い出から、ミュージカルを毛嫌いするようになっていた。ある休日、姪っ子と一緒にさびれた遊園地に行き、怪しげな催眠術ショーを見学することに。発表会を控えている姪っ子が「催眠でミュージカルスターにしてもらいたい」とお願いするが、誤って静香がかかてしまう。「音楽を耳にすると歌って踊れずにはいられない体」になってしまった彼女は職場で失態を犯してしまう。彼女は催眠を解くため、催眠術師を探して全国を旅することに。

本作はアンチミュージカルといった形態で作られている。
つまり「ミュージカルなんて何がいいのよ?」と、メタ視点でミュージカルを揶揄する主人公の話だ。

そもそもこの映画、「催眠のせいで、音楽を耳にすると歌って踊れずにはいられない体」っていう設定が魅力的だ。
こんなに分かりやすく、ワクワクさせてくれるコンセプトの映画も珍しい。
催眠といういかにも安っぽい設定だが(かけるオッサンも胡散臭い)、そのせいで恋や仕事も失いかけたりと、日常が瓦解していく様にギャップを覚えて楽しい。

そんな静香を演じた三吉彩花がお見事だ
全く存じ上げない女優だが、華がありつつも、コメディエンヌとしての滑稽なキャラクターがはまっていて魅力的。
500人のオーディションから選ばれたらしいが、彼女なくては成立しないレベルである。

序盤は華やかで色気のあるOLだった静香が、催眠のせいで人生が転落していくと共にどんどんダサくなっていくのは笑える。あのグレーのハーバードTシャツはどこで買ったのだろうか。
できたらダサいファッションのバリエーションも楽しみたかった。

アカデミー賞6部門を受賞したミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』では、女優が様々なカラフルな衣装でミュージカルパートを演じている。
今作はアンチミュージカルといった様相を呈しているので、逆に色んなダサいファッションで歌って踊る姿も見たかった。

個人的に面白かったのが、ミュージカルシーンの間に唐突に挿入される現実視点のカットだ。
ミュージカルシーンでは彼女に合わせて、周りのみんなも楽しげに歌って踊っているのだが、すべては彼女の妄想ということになっている。
それにツッコミを入れるかのような現実視点がたまに映されるのだが、そのときの彼女があまりに滑稽すぎるのだ。
これぞアンチミュージカルならではの面白さである。
この演出は劇中で2回だけ見られるのだが、劇場では2回とも笑いが聞こえてきていた。

あと催眠術師を探すために依頼した興信所の調査員・渡辺に、自分が催眠にかかっていることがばれたシーンも笑えた。
渡辺は静香が催眠にかかっていることに勘づき、彼女にちょっとしたイタズラをするのだが、かなり面白い。
「もし自分の周りに静香のようなやつがいたら、自分だったら……」と観客は妄想してニンマリする。

渡辺はもちろん、彼女以外のキャラクターも魅力に溢れている。
多くのキャラに意外性のある多面性が描かれており、特に印象的だったのはchay扮するストリートミュージシャンの山本洋子だ。
彼女の持つ裏の顔はなかなかのインパクトがあり、もはやジャンルの垣根を超えてしまっている。

本作は『金の羊毛』という裏ジャンルに該当する映画だ。
明確な目的を持っている主人公が、それを達成する過程で、本当に自分にとって必要なことに気づくというシナリオである。
本作の静香も、催眠をとく旅の過程で今の自分に大切なものが見えてくるのだ。
つまり、ちゃんと彼女の成長も描かれているということ。
ただミュージカル演出を皮肉ったコメディに留まっていないし、やっぱり映画はテーマをちゃんと描いてくれると満足度は高くなる。

あとこの映画を観終わったあと、無性に『ラ・ラ・ランド』を観たくなった。
不満という意味ではないのだが、今作は懐メロによるミュージカルパートが多くて、どこか古っぽさを感じてしまう。
『ラ・ラ・ランド』はジャズ音楽に乗って歌って踊るミュージカルパートがスタイリッシュなので、その反動だと思われる。

とはいえ、見終わったあとの多幸感は今年劇場で観た映画ではトップクラス。
やっぱり夏はロードムービーがいい。
ミュージカル映画ではあるが、ロードムービーを期待して観ても充分に楽しめる。
というか本作の本質としては、都会の捕われた生活を送る静香が旅をするところにあるのだが。
あなたにもぜひとも観てもらいたい最高にエンターテイメント映画だ。

余談だが、ミュージカル嫌いは「いきなり歌いだすのは意味がわからない」って言ったりするが、ミュージカルが好きな人は普段の生活のなかで急に歌い出したりするそう。納得。

ダンスウィズミーの作品情報

■監督:矢口史靖
■出演者:三吉彩花 やしろ優 chay 三浦貴大 宝田明
■Wikipedia:なし

ダンスウィズミーを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年8月現在

ダンスウィズミーと関連性の高いおすすめ映画

ダンスウィズミーの裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『ラ・ラ・ランド』★★★☆☆3.5
舞台はロサンゼルス。女優の卵のミアはカフェ店員をしながらオーディションを受ける日々を過ごしているが、結果は散々。一方でセブはジャズピアニスト。古き良きジャズを愛でる彼は自分の店を開く夢を持っているが、姉には早く身を固めるように諭されていた。ある日、オーディションに落ちたあげく、車がレッカーされてしまったミアが偶然立ち寄ったバーで、セブが弾いていたピアノの音に魅了されてしまい……。

今週中にレビュー記事をアップする予定。
ワンカットによる長回しを多用しており、主演の二人がまるでそこで実際に歌って踊っているかのような臨場感が味わえる。
物語も結構好き。
観終わった直後よりも、じわじわと時間をかけて魅力が浸透してくる印象。早くまた観たい一本だ。

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年8月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。