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⑩スーパーヒーロー

映画『シークレット・スーパースター』ネタバレなしの感想。アミール・カーンの魅力のみが際立つ理由

投稿日:8月 21, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「家庭内DVに遭う女の子の反抗劇」

【映画】シークレット・スーパースターのネタバレなしのレビュー、批評、評価

最近、インド映画の躍進をよく耳にする。
そのきっかけとなった映画が2009年に制作された「きっと、うまくいく」だ。
インドの工科大学の寮を舞台にした青春映画で、世界各地で高い評価を受け、日本の各口コミサイトでも絶賛の嵐である。私もずいぶん昔に観たのだが、あまり覚えてないので、いずれ改めて鑑賞してレビューをアップしたい。

最近視聴した「パッドマン 5億人の女性を救った男」というインド映画も、キャラクターが魅力的でめちゃくちゃ面白かった。
夫が妻のために生理用品を作る話だ。やたらがたいのいいオッサンが生理用ナプキンを作る、というギャップに笑えるのだが、失敗して打ちのめされてもキチガイとも思える執着心で何度でも這い上がる。その姿に圧倒され、気づいたら彼の虜となっていた。

シークレット・スーパースターは公開前は認知すらしていなかったが、口コミの評判が良かったのでパッドマンの前例もあり、期待して劇場に足を運んでみた。
が、結果的にはかなり引っかかりを覚える映画体験となってしまった。

15歳の少女インシアは音楽が大好きで、いつか歌手になることを夢見ていた。しかし極度に亭主関白な父ファルークは母ナズマに日常的に暴力を振るう最低な男。彼はインシアの音楽の趣味にも否定的だった。ある日、音楽のコンクールに出れずに悲しんでいるインシアを見たナズマは、自身のネックレスを換金し、彼女にパソコンをプレゼントする。喜んだインシアは、父にバレないようにブルカを被って顔を隠し「シークレット・スーパースター」と名乗ってギターの弾き語りの動画をYOUTUBEにアップする。彼女の曲は人気を集めるようになるが……。

このあらすじを見たらわかると思うが、ストーリーは物凄くシンプルだ。
分かりやすい展開でテンポも良く、150分という長尺の上映時間だが、あっという間にエンディングを迎えていた。

この映画で印象的だったのは、落ち目の音楽プロデューサー・シャクティだ。
彼を演じるのは「きっと、うまくいく」で主演を演じた名優アーミル・カーン。インド映画界の宝である。

この髭のオッサンは、見た目から面白さがにじみ出ている。
髭ヅラでTシャツが張り裂けるほどの筋肉ダルマ。
こんな姿のオッサンが、深刻な顔してクソみたいな曲をクソマジメに歌ったりのだ。笑わない方が難しい。ちなみに劇中の彼は離婚裁判中である。
彼が何かするたびに劇場では笑いが発生しており、もはや良くしゃべるマッチョな「FF14 光のお父さん」の吉田鋼太郎だ。
(FF14 光のお父さん:無口な父がある日、急に仕事を辞める。息子は父と交流するため、仕事を辞めた秘密を探るため、オンラインゲームFF14をプレゼントし、ゲーム内でこっそり仲間になることに)

ただこの映画、全体的にキャラクターの描き方には難がある。
主人公インシアを最後まで好きになれなかった。
とはいえ、彼女の境遇には同情はする。
愛する母に暴力を振るい、自分の夢である音楽を奪おうとするダメ親父の元で生まれてしまったから不憫で仕方ない。
しかし同情=好きにはならない。

そもそもインシアは性格が悪く、自分を助けてくれる同級生の男チンタンに対して当たりがきつすぎるのだ。気分屋で普段は彼に対してツンツンしているのだが、利用できるとなると急に愛想が良くなる。この描写は違和感でしかなかった。
特に携帯のシーンはなかなかの醜悪さを炸裂させている。
こんな描き方をされたら、とても彼女を応援する気にはなれない。

チンタンからインシアを好きになったのだが、こんなに彼女の性格が悪いと気持ちが冷めてもおかしくないだろう。
なぜ彼がそこまで彼女に好意を持ちつづけるのか理解に苦しむ。

せめてインシアには、歌以外の見せ場を作るべきだ。
チンタンも何かに困っており、そんな彼をインシアが手を差し伸べたり、などといった描写など。
あまりに彼がマザーテレサのごとく、性格の悪い彼女を助けるので不自然極まりない。

音楽プロデューサー・シャクティはキャラクターとしては面白いのだが、主人公であるインシアの描き方が下手くそなので、完全に彼女を食ってしまっている。
観終わったあとは、良くも悪くもシャクティの印象しか残っていない。
劇中ではシャクティはインシアを立てるような存在ではあるのだが、キャラの魅力は完全に逆転してしまっている。

さらに終盤で、あるキャラが大きな決断を見せるのだが、明らかにその前にもその決断するタイミングあっただろ、と思わずツッコミたくなった。そう思ったのは私だけではないはず。
少なくとも二回はあった。弦とパソコンのシーンだ。
詳細は直接観て確かめてもらいたい。
なぜ、あの場面で決断をするのか?
答えは、ドラマチックに見えるからだ。つまりご都合主義である。

曲に関しても言いたいことはある。
曲自体はいい。特に母を歌う曲は良くて心を揺さぶるものがあった。
インシアは劇中ではYouTubeに曲をアップするのだが、いくらなんでもバズるの早すぎる。一曲目からは上手くいきすぎだ。
いい曲だとは思うのだが、メロディが頭に残るようなタイプでもないので、レンタルどころかYouTubeでもう一度聞きたい、といった欲求にまでは至らなかった。(いや、でもチャムチャムは残るかも)

音楽映画の曲で比べるならば、最近見たアラジンの「スピーチレス」や、シング・ストリートの「Drive It Like You Stole It」には遠く及ばず。
一曲目からバズるのであれば、そのくらいのクオリティの曲を聞かせて欲しかった。
今作の母へ送る曲「Nachdi Phira」と、上記2曲のYOUTUBEの動画を埋め込んでおくので、ぜひ聞き比べてもらいたい。

Nachdi Phira / Secret Superstar
Naomi Scott – Speechless (Full) (From “Aladdin”/Official Video)
Drive It Like You Stole It / Sing Street

そんな感じなので、ラストのいかにも涙を誘う展開には全く乗れなかった。
ついつい悪い部分の指摘が多くなってしまったがストーリーラインは良いのでつまらない映画ってことではない。
引っ掛かりのある箇所が普通の映画より多いので、もう少し脚本を練って、穴を潰して欲しかった。

正直、この映画はあざとさ100%だ。
観客の涙を誘うためだけに作られているような映画である。
インシアの弟グッドゥにも感動させるような見せ場が用意されてるので、だったら序盤で彼にワガママな行動を取らせてインシアを困らせたらいいのに、と思う。これを入れるだけで、終盤の彼のある行動に観客はギャップを覚え、強い感動を覚える。
このようなちょっとした一手間がないので短絡的に見えてあざとさが強調され、映画から意識が離れてしまう。
期待していただけにキャラ設定の甘さが随所に見られるちょっと残念な結果となった。

あなたはこの映画に関心を持っただろうか。
もし見るのであれば、あまり過度な期待をしないことをおすすめする。

恐らくこれ、邦画だったら世間の評価はもっと悪くなっていただろう。
今はまだマイナー扱いインド映画だから評価が寛容となっている印象。

シークレット・スーパースターの作品情報

■監督:アドヴェイト・チャンダン
■出演者:ザイラー・ワシーム メヘル・ヴィジュ ラージ・アルジュン アーミル・カーン
■Wikipedia:シークレット・スーパースター
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):90%
AUDIENCE SCORE(観客):87%

シークレット・スーパースターを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
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TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年8月現在

【h4】シークレット・スーパースターと関連性の高いおすすめ映画

シークレット・スーパースターの裏ジャンルである【スーパースター】に分類される映画。

響 -HIBIKI-』★★★★☆4
不況に苦しむ出版業界。文芸雑誌「木蓮」編集部に新人賞の応募要項を無視した「お伽の庭」というタイトルの原稿が届く。破棄するように命じられた編集者の花井ふみは、気になって読んでみると、あまりのクオリティの高さに衝撃を受ける。原稿には「鮎喰 響」という名前のみで住所が書かれておらず、彼女を探すために奮闘する。その頃、15歳の響は高校に入学していた。

欅坂46の平手友梨奈主演。
私は欅坂46どころかアイドル自体に関心がないのだが、平手友梨奈のポテンシャルの高さに圧倒される一本となった。
決して演技が凄いというわけではなく、存在感があるのだ。まさにスターである。
シナリオも良く、アイドルに興味がない人でも存分に楽しめる映画だ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年8月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。