映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『ラ・ラ・ランド』ネタバレなしの感想。夢を叶える代償として、何を差し出すのか?

投稿日:8月 22, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「夢を追う若者たちのミュージカル・ラブストーリー」

【映画】ラ・ラ・ランドのネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作の監督デイミアン・チャゼルは「セッション」という映画で商業的に成功を果たして、陽の目を浴びるようになった。
ジャズドラマーを夢見る少年が、サイコハゲ教師にドラムのスパルタ教育をされる内容だが、これがまたとんでもないインパクトを持った映画である。あなたがもし観たことがないのであれば、早急に観るべき傑作。一生忘れることのできない映画体験ができることを約束する。

もともとデイミアン・チャゼル本人もジャズドラマーを目指していた。しかし、才能に限界を感じて夢を諦め、幼い頃から夢みていた映画製作の道へ進むこととなる。
実は「セッション」よりも何年も前に「ラ・ラ・ランド」の脚本は完成してたのだが、出資者を見つけることができなかった。
もう一つの構想であった「セッション」の方が先に映画化にこぎつけられ、そこで得た資金を用いて「ラ・ラ・ランド」の制作へ至る。

私はミュージカル映画にまだそこまで馴染んではいないが、本作は思った以上に楽しめた。ミュージカルはやっぱりいい。歌って踊っているシーンを見ていると普通の映画にはない多幸感があふれでてくる。

舞台はロサンゼルス。女優の卵のミアはカフェ店員をしながらオーディションを受ける日々を過ごしているが、結果は散々。一方でセブはジャズピアニスト。古き良きジャズを愛でる彼は自分の店を開く夢を持っているが、姉には早く身を固めるように諭されていた。ある日、オーディションに落ちたあげく、車がレッカーされてしまったミアが偶然立ち寄ったバーで、セブが弾いていたピアノの音に魅了されてしまい……。

最高のオープニングアクト。
高速道路の渋滞にハマった多くのドライバーによる、ワンカット長回しのミュージカルシーンだ。(厳密には3カットの繋ぎあわせ)
素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるし、やっぱり大人数でリズムを合わせるというのは、それだけで迫力がある。

このシーンはあまりに非現実的で賛否が分かれているシーンでもある。
ダメだった人は、現実的なものとして受け止めすぎてしまったのだろう。
物語の基本はフィクションだ。しかしリアルに描かないと人は没入できない。特にミュージカルはフィクションレベルが高い演出なので、ダメだった人の気持ちは理解できる。

一番好きだったのは丘の上でのミュージカルパートだ
ソフトのジャケットやチラシに使われている、二人が手を外に突き出して踊っているあのシーンだ。
日が落ちる空を背景に二人が躍るのだが、いくらなんでも絵になりすぎだろう。何だろう、このオシャレ感。あり得ない。
しかも二人というのがいい。大人数でのミュージカルは迫力があるが、二人でキレのいいダンスを見せてくれるので、やたらスタイリッシュに見える。

というか、外人補正が掛かっているようにも見える。
日本人が演じたらもっさりしそう。私も外人になりたい。

エマストーンの黄色いドレスが華やかで映像映えするし、タップもおしゃれ。音楽もポップでいい。
YOUTUBEでこのシーンの映像を見つけたので一応載せておく。

あとジャズピアニストを演じた主演の一人ライアン・ゴズリングが劇中で何度もピアノを演奏するのだが、吹き替えではなく本人によるものだそう。
3か月間、週5でレッスンを受け、それ以外でも自主トレに励んだという。
なかなかいい演奏を見せていたので、ちょっとビックリ。

デイミアン・チャゼル監督は空気感を大事にするため、吹き替えは使わずに役者に実演させることに拘っているんだとか。
前作「セッション」の主演・マイルズ・テラーも2カ月間ドラムを特訓して撮影に挑んでいる。頑張ったあげく、サイコハゲにいじめられる。

迎えるラストはなかなか折り合いがつけがたい。悪いという意味ではない。
一言であらわすなら、「夢を叶えるってそういうことだよな」だ。
恐らく監督のパーソナルな部分が反映されている。セッションも観ればすぐに分かる。

このラストだからこそ、劇中でのエピソード1つ1つに価値が生まれるのだ。
この映画は観終わった直後よりも、時間が経って愛着が湧いてくる類のそれだ。ここまで計算していたのであれば、デイミアン・チャゼルの脚本力は鋭いものがある。

ダメだったところも挙げていきたい。
ミュージカルシーンで演出やカメラアングルが奇抜すぎて、役者のダンスが見づらいときがある。
とくに序盤のクリスマス・パーティでのシークエンスはあまり好きになれない。もう少しダンス映えする見せ方をしてほしかった。

それと、ミアとセブは偶然会いすぎじゃないか?
序盤で最悪の出会い方をした二人だが、運命に導かれているかのごとく、何度も偶然会ってしまうのだ。
二人ともロサンゼルスに住んでいるとはいえ、冬から春にかけて四回もたまたま会うのは奇跡にもほどがある。二人とも宝くじ並の強運を持っているので、夢程度なら簡単に実現させられるだろう。
仕方なく、といった流れでもいいから、連絡先を交換する描写を入れた方が自然だ。あるいは二人の職場や良く通う店など、パーソナルな場所が近い、などといった設定にするとか。

終盤に向けての対立の持っていき方が、ちょっと強引なのも引っかかる。
本心が上手く伝わってないことに端を発しているので、だったら冷静に会話したらいいのにって思う。
何だかモヤモヤが残るシーンだ。
いい大人がこの程度のことで対立を起こすのは不自然すぎる。子どもにしか見えない。アメリカ映画にありがちではあるが。

とはいえ、全体的には好印象で、割と好きな映画だ。
ジャズのミュージカルは初めて観たが新鮮で良かった。
音楽もいいし、主演の二人のキャラも魅力的。ミアのカラフルな衣装の変遷も楽しめる。

ミュージカル好きには間違いなくハマれるだろう。
見慣れていない人は、「ヘアスプレー」のような底無しにポップなミュージカルから鑑賞することをおすすめする。

タイトルについても言及していおく。
『La La Land』のLAはロサンゼルスを意味している。
つまり夢みる若者たちが集まる場所。
オープニングの高速道路のミュージカルシーンで若者しか出てこなかったのは、「夢を追う若者たち」をテーマとした本作の世界観を示している。
La La Landという言葉自体アメリカに存在しており、現実離れした世界といった意味も含まれている。

余談だが、新海誠がこの映画を絶賛しているのがちょっと笑えた。確かにこの映画、彼が好みそうなテイストが満載である。
Wikipediaにコメント全文が記載されているので、あなたが興味が沸いたら下記のリンクからチェックしてみるといい。

ラ・ラ・ランドの作品情報

■監督:デミアン・チャゼル
■出演者:ライアン・ゴズリング エマ・ストーン
■Wikipedia:ラ・ラ・ランド
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):91%
AUDIENCE SCORE(観客):81%

ラ・ラ・ランドを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(有料)
※2019年8月現在

ラ・ラ・ランドと関連性の高いおすすめ映画

ラ・ラ・ランドの裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『スウィングガールズ』★★★☆☆3.5
東北地方の山河高校に通う落ちこぼれの鈴木友子ら13人の女子生徒は、夏休みの補習をサボるため、野球部の試合の応援に向かった吹奏楽部の昼食の弁当を届けることに。たくさんのトラブルに巻き込まれながらも何とか届けることができたのだが、弁当を口にした吹奏楽部のメンバーは食中毒となる。唯一食中毒を免れた吹奏楽部・中村拓雄は責任を取らせる形で友子たちを強制的に入部させる。次第に彼女らは演奏の楽しさを知り、ジャズにのめり込んでいく。

最近レビューした「ダンスウィズミー」の矢口史靖監督作品。

矢口は今作でミュージカルを撮りたかったのだが、さすがに楽器を演奏しながらだと厳しいとのことで断念し、ダンスウィズミーで念願が叶うことに。
本作は方言丸出しの田舎者女子高生たちのコミカルな音楽映画となっており、観終わったあとは幸せな気持ちになれる。矢口史靖監督の代表作の一つ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年8月現在

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。