映画の海

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⑨組織のなかで

映画『ヒトラー ~最期の12日間~』ネタバレなしの感想。敗戦目前となったナチス・ドイツの生々しい惨状

投稿日:8月 23, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「ヒトラーの人間的側面を描いた戦争ドラマ」

【映画】ヒトラー ~最期の12日間~のネタバレなしのレビュー、批評、評価

誰もがイメージするヒトラーの印象といったら独裁者、極悪人あたりだろう。
映画界隈でもヒトラーをそのように描かなくてはいけないといった風潮が存在する。
少しでもヒトラーを良く描こうとするもんなら、世界中からは批判の的だ。主な理由はユダヤ人の大量虐殺が挙げられる。
日本における、原爆を肯定するようなものだろう。

実際にAKB48の派生グループ・欅坂46がナチス風の衣装をまとってライブを行ったところ、SNSで問題視され、音楽番組の放送が中止されたりしている。
よって、映画文化などにおいてヒトラー及びナチスはボコられる運命にあるのだ。

本作はそういった趣とは異なり、ヒトラーの人間的内面に迫った内容となっている。
もちろん制作は本国ドイツだ。

1945年4月20日、地下壕にて、総統個人秘書官のトラウドゥルはヒトラーの愛人であるエヴァや先輩秘書官とともに、ヒトラーの誕生日の準備を進めていた。ソ連軍はすでにベルリンに肉薄しており、ドイツの敗戦は時間の問題となっていた。SS長官ヒムラーなど幹部たちはヒトラーにベルリン脱出を進言するが、彼はかたくなに拒んでいた。

本作は世界史やナチス・ドイツの知識がなくても楽しめる作りになっているので、安心して観てもらいたい。
私の歴史の知識はビックリするほど皆無で世界一無知な小説家志望だが、本作は構えて観たわりにはスムーズに没入できた。

とはいえ、多少の前提知識があった方が理解もはかどるだろう。
あなたのために、ざっくりとしたナチスについての歴史をまとめてみた。

1919年9月、ヒトラーがドイツ労働者党に入党
1920年2月、国家社会主義ドイツ労働者党に改名。通称ナチス
1923年11月、ヒトラーがミュンヘン一揆と呼ばれるクーデターを起こす。後にヒトラーは投獄される。その間に「我が闘争」を執筆。
1924年12月、ヒトラー釈放
1930年9月、ヒトラーの巧みな演説で総選挙に勝ち、ナチスは第二党に
1933年1月、ヒトラーが首相に就任
1934年8月、ヒルデンブルク大統領の死後、ヒトラーは総統に就任
1939年9年、ポーランド侵攻を開始、第二次世界大戦が勃発
1940年4月、フランスを制圧
1940年9月、日本がドイツ・イタリアに近づき、日独伊三国同盟を締結。この辺りからユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)が本格化される
1941年6月、ソ連に侵攻するが、苦戦
1943年2月、スターリングラード(ソ連領内の工業都市)攻防戦に敗北して後退
1943年7月、同盟国であるイタリア降伏
1944年6月、連合国軍(アメリカ・イギリス・ソ連等)がノルマンディー(フランス北部)上陸。ドイツは追い詰められる
1945年4月、西から米英を主体とする連合軍、東からソ連軍がそれぞれベルリンを目指して侵攻

本作は1945年4月20日、ベルリンに迫るソ連から逃れるため、ナチス党の連中が逃げ込んだ地下壕を舞台としている。
敗戦間近な状態から物語は始まるのだが、ヒトラーは登場からひどい猫背だ。左手の痙攣も止まらず、精神の衰弱が見られる。

私がこの映画を見て興味深いと思ったのが、ヒトラーというより、敗戦間近の国の行く末だ。
彼らの世界が徐々に絶望に浸食されていく中で、様々な人間のリアクションが差異が見られる。

ヒトラーは愛人や女性秘書官、子供の前では紳士に振る舞いつつ、軍人やSS(親衛隊)の隊員には無理難題の命令を下す。
一方で、現状から目を逸らそうと酒やセックスに溺れる兵士もいれば、ヒトラーの愛人エヴァは狂ったように踊る。

たびたび、ベルリン市街に残る医者や子どもの視点からも描かれる。
街の惨状を映すためだろう。
医者の男は軍人からはベルリンを出るように促されるが、無視して残った怪我人を探し回る。
彼が見る景色もまた壮絶だ。
地下壕での狂乱はかわいらしいもので、ソ連と戦っている兵士たちはもっと現実的な地獄を味わっている。

私がこの映画において、一番強い印象を覚えたのは、ゲッベルス夫妻だ。
ゲッベルスは宣伝省の大臣で知られており、ようはナチスのプロパガンダ(政治的宣伝)を行った人物である。
ナチ党の勢力拡大に貢献し、組織内でも一番の知性を持っていた、なんてことも言われている。

ゲッベルスについて少し深ぼっておく。
元々ゲッベルスは、ヒトラーの思想に懐疑的な面も持っていたのだが、彼の能力を見抜いていたヒトラーは、何度も接触を繰り返して徐々に心を支配し、保守主義に理解を示させるように仕向けていった。
そうして彼は宣伝省の大臣となった。

ゲッペルスのこの映画での振る舞いは興味深い。
敗戦濃厚ということで、中にはヒトラーの意に反して降伏したがる人間も出てくるのだが、ゲッベルスはどんな状況になろうともヒトラー絶対なのだ。
恐らくなんだが、プロパガンダを繰り返すことで、自己洗脳的に傾倒が強くなったのではないか? と私は思っている。

実は私も似たような経験をしている。
とはいっても、全然軽いものなんだが。

私はこのような映画感想ブログを書いている。
特に面白いと思った映画は、このブログでいつも以上に熱く語ってしまう。
この行為は宣伝に近いものがあるが、熱を込めて記事を書けば書くほど、その作品に対しての愛着が強くなっていく。
結果的に予定ではなかった、Blu-rayまで買ってしまったことが何度もある。(物増やさないようにしているにも関わらず)

ゲッベルスに話を戻すが、彼は仕事として、ナチスの宣伝を日常的に行っていた。
つまり、他の軍人と比べて、自然に信仰心が育まれていったのではないだろうか。
もっと分かりやすく言うと、ナチスオタクになったということ。

他に特記すべきは彼の妻である。
彼の妻もまた異常なまでのヒトラー信仰者で、今作ではとんでもない行動を見せる。
ヒトラーの最期よりも強烈なインパクトを残しており、ぜひともあなたの目で確認してもらいたい。

この映画では描かれていないのだが、ナチスが白旗を上げたあと、多くのドイツ人女性はソ連軍兵士に強姦されたそう。
その数なんと10万人。
うち10%前後が性病にかかったそう。
多くの被害者女性が心的外傷を患い、自ら命を絶つ者も続出している。

これが敗戦だ。
もはや倫理観なんて存在しない狂った世界である。

あなたは関心が沸いただろうか?
シリアスな映画ではあるが、専門用語が飛び交うことも少なく、あくまで人間を描いている映画だ。
ナチスに関心があるのなら、ぜひ観てもらいたい。

最後に。

ナチスの軍服ってファッション的にやけにカッコ良くないか?
アイドルグループが衣装のモチーフにするくらいの影響力を未だに持っているわけだが、ナチスはブランディングのために軍服のデザインにも拘っていたのだそう。

当然、これもゲッベルスの策略である。
人に恐怖をすり込むため、軍服は貧相なものではなく、できるだけ長身で恰幅が良く見えるようなスタイルの黒一色の礼装、SS(親衛隊)の帽子の額にはドクロマークのデザインを監督した。

しかし、ゲッベルスのブランディング能力は素晴らしいものがある。
YOUTUBERになったらヒカキンを超えられただろうに。
惜しい時代に生まれたものだ。

ヒトラー ~最期の12日間~の作品情報

■監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル 
■出演者:ブルーノ・ガンツ アレクサンドラ・マリア・ララ ウルリッヒ・マテス
■Wikipedia:ヒトラー ~最期の12日間~
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):90%
AUDIENCE SCORE(観客):94%

ヒトラー ~最期の12日間~を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・見放題)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年8月現在

ヒトラー ~最期の12日間~と関連性の高いおすすめ映画

ヒトラー ~最期の12日間~の裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『ボーダーライン』★★★☆☆3.5
アメリカ南西部に位置するアリゾナ州チャンドラーで誘拐事件の容疑者宅に奇襲捜査が行われる。FBI捜査官のケイト率いるチームは家屋の壁から誘拐された者たちの大量の遺体を発見する。ケイトは国防総省のマット率いるチームに加わり、事件の主犯格とされる麻薬カルテルの親玉マニュエル・ディアスの捜査することとなる。マットのパートナーで所属不明のアレハンドロと合流し、国境を超えてメキシコのシウダー・フアレス市に移動する。

オープニングから圧倒される。
メキシコの麻薬カルテルのやばさを痛感するに十分すぎる映像である。
背景に流れるBGMの重厚感も凄すぎてちょっと笑える。
YOUTUBEの予告を貼り付けておくで観てもらいたい。音楽の存在感にビックリするだろう。

これはドイツ人作曲家ヨハン・ヨハンソンによるものだが、彼は残念ながら2018年2月9日に天に召されてしまった。原因は不明。残念で仕方ない。
この映画はもう一度観てレビューをしたい一本。

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・見放題)○(字幕・見放題)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年8月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。