映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑦なぜやったのか?

映画『十二人の死にたい子どもたち』ネタバレなしの感想。良質なドラマが展開されるジュブナイルミステリー

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■評価:★★★☆☆3.5

「何のための命なのか?」

【映画】十二人の死にたい子どもたちのネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作の監督を務めた堤幸彦については持論がある。
彼はミニマムな世界観の名手であるということ。

というのも、スケールの大きな物語はどうも扱いきれていないように思える。
『20世紀少年』だったり、ドラマ『SPEC』の映画版であったり、世界観が大きくなればなるほど彼の魅力が削がれていく。

彼はシュールな笑いや、内輪ネタ的な演出が面白くて、例えば『金田一少年の事件簿(堂本剛版)』『サイコメトラーEIJI』、特に私が好きな『ケイゾク』『池袋ウエストゲートパーク』『SPEC』の3作品は至高である。
すべてドラマ作品だが、やっぱり彼は映画よりドラマの方が強みが生かされる。

本作はそういった笑いはないのだが、廃病院のみで展開されるワンシチュエーションのミステリー映画。
シナリオも良く、先が気になる展開に没入して楽しめた良作だ。

続々と子どもたちが廃病院に集まる。その数、十二人。彼らは集団で安楽死をすることを目的にやってきた。しかし、彼らが集まった地下室では、招かれざる十三人目の少年がいた。しかも彼は息をしていない。このまま安楽死を敢行するのか、それとも十三人目の少年の謎に迫るのか。彼らはこの集いのルール「全員一致」にのっとり、多数決をとりながら議論を進めていく。

ミステリーということもあってあまり情報を仕入れずに観たのだが、結構見入ってしまう設定だ。
それぞれが、会場に集まるところから始まるのは面白い。
彼らは実に様々な行動を取る。真っ先に地下室に向かう者や、トイレに行く者、廃病院を散策する者など。リアクションの差異によるキャラの書き分け作業と併せて、それぞれの行動が伏線にとなっている。このシーンはじっくり見ておくことをおすすめする。

そして、十二人が一堂に会した地下室に、謎の十三人目の少年の遺体がベッドに寝ている。
果たして彼は誰なのか、なぜ少年は天に召されたのか。

廃病院にはキャラの行動の外にも、さまざまな伏線が序盤から仕込まれていく。
エレベーターのドアがなぜか椅子で止められていたり、前日にはなかったはずの謎のタバコがベンチに捨てられていたり。

こういったものがそれぞれの事実と紐付いたり、あるいはキャラクターがこの集いに参加した動機などによってストーリーが展開していく。
テンポよく新しい展開が訪れるし、内容も興味深かったりするので、観客はぐいぐいと引き込まれていく。

中盤に差し掛かる辺りで、ゴスロリの子があるシーンで、あるキャラクターに持論を唱えるシーンは心を揺さぶられた。
容姿や趣向からただのメンヘラなのかと思いきや、他者の立場になって理解を示すような内容で、思わず目頭が熱くなった。
本作の中でも結構好きなシーンだ。

あとこのゴスロリの子が実は怪力っていう不思議設定も何気にツボ。
もっとこの設定生かした展開を見せても面白かったと思う。
実は犯人がゴリラみたいな男だったが、ロメロ・スペシャルで悶絶させるとか。あるいは丸太でぶん殴るなど。

それと、以前「祈りの幕が下りるとき」でミステリーの体裁でドラマを描くのに限界があると評したが、今作のようなドラマの描き方は新鮮味を感じて楽しめた。
殺人事件がベースとなるミステリーにありがちな悲劇的なだけのドラマにならなかったのは好感が持てる。
社会派ミステリーのような正統派ではないので、柔軟なストーリー運びが出来たといった印象。

本作の一番の弱点は、遺体の謎を解決しなくても、安楽死を決行したところで何の問題もないところだ。
それでも謎解きをする理由付けはされるんだが、「別にそうなってもいいじゃん」と観客は心の中で突っ込めてしまう。説得力に欠けるのだ。

そのせいか、何かと理由をつけて安楽死を決行しないところは観ていて苦しいものがある。
突っ込むのは野暮ではあるんだが、「その理由で止めるの!?」って思ってしまう箇所がたびたび見られる。このような設定の穴は映画から意識が離れてしまうので、もっと作り込んで欲しかった。
本作の根底となる設定部分の欠陥なので。

とはいえ、全体的にはまとまりもあって結構楽しめる良作。
あなたがもしジュブナイルミステリーが好きならハマるだろう。私は結構好き。

十二人の死にたい子どもたちの作品情報

■監督:堤幸彦
■出演者:杉咲花 新田真剣佑 橋本環奈
■Wikipedia:十二人の死にたい子どもたち

十二人の死にたい子どもたちを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年8月現在

十二人の死にたい子どもたちと関連性の高いおすすめ映画

十二人の死にたい子どもたちの裏ジャンルである【なぜやったのか?】に分類される映画。

『告白』★★★☆☆3.5
とある中学校の1年B組。終業式が終わったあとのホームルームで、担任の森口悠子は突如独白を始める。「わたしはシングルマザーです。わたしの娘は死にました。警察は事故死と判断しましたが、このクラスの生徒に殺されたんです」と。さらに、森口は自身がHIVに感染しており、犯人だと思われる二人の給食の牛乳に自分の血液を混入した事を告げる。

なかなかぶっ飛んだ設定の話。
原作小説も読んでいるがかなり面白い。
ただし、映画は映像のクセが強い。
私は中島哲也監督の作風がどうも合わないので、別の人間に監督してもらいたかった。
彼の作品で「渇き」も観たのだが、あまりにカット割りが激しすぎて頭痛がするレベル。(冗談ではなくマジ)

告白自体のシナリオは間違いないので、一見の価値あり。
個人的には原作の方が好き。かなり文体が軽くて読みやすいので、小説初心者には特におすすめ。こちら

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Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
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TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix: ○(見放題)
※2019年8月現在

-⑦なぜやったのか?

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。