■評価:★★★☆☆3.5
「頭空っぽにして楽しみたい人向け」

【映画】エグゼクティブ・デシジョンのネタバレなしのレビュー、批評、評価
最近、潜入暗殺モノに大きなハズレがないことに気づいてしまった。
周りに敵しかいない環境下に少数精鋭で侵入し、対象の命を奪うというミッション。暗殺という性質上、タイムリミットが発生するケースも多い。捕まれば拷問されたあげく、命を奪われる。ミッションそのものの失敗=世界規模の危機へ発展する。
そのためスリルが爆発的に高まって観客は一気に没入してしまうのだ。
私が最初に認識したこのジャンルの作品といったら漫画『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編だ。
キメラアントという種類の巨大なアリが動物及び、人間までも食ってしまう。キメラアントが生み出した子供は食った生き物を能力を引き継いでおり、人間の知能、動物の身体能力を併せ持った凶悪な怪物が大量発生してしまう。放っておけば、世界中にキメラアントが蔓延ってしまう。
キメラアントは独裁国家東ゴルトー共和国(北朝鮮的)を乗っ取っているため、少数精鋭の手練れのハンターたちが潜入し、キメラアントの王と、その護衛軍を暗殺するという話。
割と最近観た『ハイドリヒを撃て!』も似たよう内容だ。
ナチスNO.3の男、ラインハルト・ハイドリヒが統治するチェコスロバキアに二人の軍人が潜入し、彼を暗殺するというもの。エンスラポイド作戦と呼ばれているこの出来事は史実である。
この2作の面白さはちょっと次元が違うレベルだ。
本作はハイジャックされた飛行機に潜入してテロリストを制圧するといった内容。
前述した2作ほどではないが、設定上、一定の緊張感は担保されているし、充分に楽しめた一作だ。
アテネ発ワシントンD.C.行きのジャンボジェット機がテロリストたちによってハイジャックされる事件が勃発。彼らは指導者の釈放を要求するが、真の狙いは飛行機に積んだ化学兵器を使ってワシントンを壊滅させることにあった。軍事技術研究員からの提案により、テロリストを制圧するため、軍の特殊部隊が空中輸送機をドッキングさせ、ジェット機に乗り込む作戦を実行する。
序盤から飛行機に空中輸送機をドッキングさせて潜入という破天荒なミッションが行われる。
この時点で面白い。
こういったダイナミックな作戦は、いかにもハリウッド映画といった感じである。
本作は飛行機を占領しているテロリストの制圧及び、爆弾処理の二つのミッションを遂行する形で物語が進む。
私が特に魅力的に感じた演出が1つある。
特殊部隊が潜入早々にカメラを仕込んで、制圧されている船内の様子を一方的にウォッチするという状況を作り出したことだ。
隠密で潜入しているため、テロリストらは機内に特殊部隊が潜んでいることを知らない。
そのため、相手の動向を一方的にチェックできるというのは、最強のアドバンテージである。
カメラが見つかるスリルを味わいつつも、いつ、どのタイミングで反撃するのか、観客はそんなことを考えて胸を躍らせてしまう。
これは小説家・貴志祐介が好む手法で、彼の著作で良く見られる。
ぶっちゃけちょっと多すぎな気がする。
彼の代表作は『クリムゾンの迷宮』『鍵のかかった部屋』『黒い家』『青の炎』『新世界より』『悪の教典』。
『クリムゾンの迷宮』では、この演出がかなり効果的に使われているので、もしあなたが『強力な敵の動向が一方的に筒抜け』という演出がツボであれば読んでみるといい。
かなり読みやすい本で、普段小説を読まない人を小説好きにさせるくらいの面白さがある。
クリムゾンの迷宮ほど一気読みしたくなる小説もなかなかない。
話を映画に戻す。
映画序盤から気になっていたのが、特殊部隊の黒人の男。
あと調べたらやっぱりそうだったのだが、ターミネーター2に出てくるダイソンさんだ。
あなたがターミネーター2を観たことがあるのなら、すぐに彼の顔が頭に浮かぶだろう。
そのくらいターミネーター2では非常にインパクトのあるキャラクターを演じており、今作での彼は早々にお荷物となる。
完全に製作陣におもちゃにされているのは笑える。
ダイソンさんのキャラを意識した演出であり、ターミネーター2ファンであれば今作の面白さは1割増しとなっている。
で、この映画ずっとスリリングで面白いんだが、長いあいだ平行線を辿っており、アクションシーンが少ないのは残念。
個人的には敵の戦力をちょっとずつ削るようなエピソードなどがあっても良かった。
特殊部隊が積極的に責めてくれないので、ちょっと物足りない。
現実に即した描写なのかもしれないが、フィクションのエンターテイメント映画なので、もう少しストーリーの起伏が欲しい。
あと、テロリスト連中の凶悪さがあまり描かれていないのも残念。
確かに空の上という厳しい状況下なので、描かなくても緊張感が生まれるだろうと判断したのかもしれないが、潜入暗殺モノは最低でもR15指定くらいのハードな描写は欲しい。
『HUNTER×HUNTER』や『ハイドリヒを撃て!』は拷問シーンもかなりエグいので、こういった描写があると緊張感が強くなる。
思わず味方が敵に捕まってしまった最悪の状況をイメージしてしまうのだ。
正直、本作の敵はあんまり魅力的ではない。
というか、味方のキャラクターも目立った特徴がないので、圧倒的に描写不足だ。
それでもストーリーや演出が面白く、そこそこ楽しめる映画ではある。
あなたが関心が沸いたのであれば見ることをおすすめする。
たまにはこういったテーマもないようなエンタメに特化した映画も楽しい。
エグゼクティブ・デシジョンの作品情報
■監督:スチュアート・ベアード
■出演者:カート・ラッセル ハル・ベリー スティーブン・セガール
■Wikipedia:エグゼクティブ・デシジョン
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):64%
AUDIENCE SCORE(観客):53%
エグゼクティブ・デシジョンを見れる配信サイト
U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在
エグゼクティブ・デシジョンと関連性の高いおすすめ映画
エグゼクティブ・デシジョンの裏ジャンルである【難題に直面した平凡な奴】に分類される映画。

『ハードコア』★★★☆☆3.5
舞台は近未来。ヘンリーはロシア高空の研究施設で目を覚ます。ケガを負い、記憶喪失で声も出せない。彼は言われるがまま、彼の妻と名乗るエステルという女性にサイボーグ手術を施される。その最中、エイカンという念力を使う男が引き連れた武装集団に襲われ、ヘンリーとエステルは地上に逃げる。
GoProで撮影された全編一人称視点の低予算アクション映画。
200~300万で制作されたらしく、カメラを止めるな!とほぼ同額。
監督のイリヤ・ナイシュラーはロシアのロックバンド、Biting Elbowsのメンバー。元々彼はFPSのゲームが好きなこともあって『Bad Motherfucker』という曲で全編一人称視点のMVを作ってYOUTUBEで投稿した。
それがバズって、本作のプロデューサーに声をかけられ『この作品を90分に引き伸ばして映画にしないか?』と提案されて制作されたのがハードコアだ。
正直ストーリーは大したことないんだが、斬新さが突出している。こんな映画は観たことがない。
上記のMVを楽しめたなら、一度は観てみることをおすすめする。
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Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(吹替・見放題)、○(字幕・見放題)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:○(見放題)
※2019年9月現在