映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑩スーパーヒーロー

映画『キリクと魔女』ネタバレなしの感想。赤ん坊が、男を食い泉を枯らす魔女の退治にむかう神話的ストーリー

投稿日:9月 5, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「個性的な描画、民族的な音楽、アフリカの村が舞台のユニークな冒険譚」

【映画】キリクと魔女のネタバレなしのレビュー、批評、評価

私には姪っ子がいるんだが、子供と接すると都会で汚れた心が洗われるような気分になる。
彼女らが純粋だからだ。
彼女が良く口にする「なんで?どうして?」といった言葉が子供特有の純粋無垢さを象徴している。

大人は、中途半端に身に付けた知恵や経験から、このような言葉を口にしなくなる。
しかし恥をかくことを何とも思わない子供たちは、容赦なく好奇心を剥き出しにするのだ。
本作はそんな好奇心から始まる物語である。

アフリカのある村で、一人の赤ん坊、キリクが自分の意志で生まれる。その村では魔女カラバによって泉は枯れ、男は食われて生活に困窮していた。キリクは「どうして魔女カラバは意地悪なの?」と尋ねると「それは魔女だからさ」と母は答える。納得できないキリクは生誕直後にも関わらず、超人的な足の速さで魔女の元に向かい、一人の村人を救う。その後は魔女を倒すため、母の力を借りて山の賢者に会いに行くが…。

第一印象としては観たことのない類の物語ということ。
そもそも生誕直後の赤ちゃんが、魔女退治をする物語なんて今まで観たことない。

本作はシンプルな物語だが、違和感の覚える箇所が多く、それらは説明されないまま幕を閉じてしまう。
いろいろ調べてみたんだが、やはり多くの神話がベースとなって作られており、それぞれに意味があることが判明した。

本作は「小人説話(小さ子)」をベースに作られている。
小人は、日本の文学では遠い国の異形の人として描かれることが多いが、竹取物語の『かぐや姫』や御伽草子の『一寸法師』など人間から生まれた物語も存在する。
ヨーロッパやアフリカにも多くの小人物語が存在し、本作を監督したミッシェル・オスロはフランス人で幼少期を西アフリカのギニアで過ごしており、この体験が作品に影響を及ぼしている。

私はこの映画を観た時、すぐに連想したのが桃太郎だ。
魔女退治という目的が、子供が鬼退治をするという流れを連想させたのだが、この作品の舞台はアフリカ。

背後に流れる民族的な音楽に、カラフルな自然描写は今まで触れたことのない感性の世界観だ。
これはかなりクセになる。
ジャンベも欲しくなった。(ウソ)
見始めたときは若干のクセを感じたのだが、すぐに慣れてくる。
むしろキリクの超然とした表情、特にそれを印象付ける円らな瞳には妙な愛着がわいてくるのだ。

とにかくキリクが可愛い。
やたらチビなのにやたら足早いし、頭がいい。
新生児にも関わらず、魔女を出し抜いて大人の村人を救うほどの知恵を持っているのだ。
しかし純粋無垢さは忘れずに持っており、そもそも魔女と対峙する根本的な動機は「どうして魔女カラバは意地悪なの?」といった疑問から始まっているのだ。

この知性の高い新生児が魔女と戦うという設定がユニークだ。
確かに子供の頃は小人説話に触れてはいるが、生誕直後というのが笑える。
そもそもキリクは自分の意志で母の産道から這いずって出てくるのだ。
やっぱりこのシーンがあるからこそ、キリクが普通の新生児ではないことを印象付けてくれるので、いい描写だ。

私がこの映画で一番好きなシーンは、魔女によって枯らされた泉のところだ。
序盤でキリクは泉が枯れた原因を探ろうとする。
ここも、好奇心を捨ててしまった大人との対比の描写でもあるのだが、実は、枯れた泉にはちょっとした秘密がある。
この秘密が明かれたときはビックリしたものだ。
自分の発想にない斜め上を行くもので、クリエイティビティを刺激されるユニークなアイディアだ。

あと、キリクは色んな場面で穴を通るのだが、これはイニシエーションを示している。
通過儀礼を意味する言葉で、集団や社会で一人前として認められる儀式のことを指す。
割礼、刺青など身体的な痛みが伴うものであったり、バンジージャンプのような勇気や度胸を試されるものもある。現代日本では成人式などが相当する。
今作では生まれ変わりを示す産道を通るといった意味で、キリクは穴をくぐることで成長し、目的地に向かうのだ。

こんな感じで多くの神話をモチーフにして今作は作られている。
だが、新生児が主人公ということもあって子供向け感が強い。
キリクは道中で多くの困難に直面するのだが、どれも可愛らしいもので、大人の鑑賞するにはちょっと物足りない。
終盤でちょっとしたひねりを見せてくれて興味深くはあるが、全体的な流れは普遍的な冒険譚でストーリーはそんなに強くはない。

ただ、世界観は非常にユニークで、日本人の感性では作れない映画ではある。
あなたが感心が沸いたなら一度は鑑賞してみるといい。
あと神木隆之介くんを始めとする声優陣がいい仕事をしているので、吹き替え推奨。

キリクと魔女の作品情報

■監督:ミッシェル・オスロ
■出演者(吹き替え):神木隆之介 浅野温子 山像かおり
■Wikipedia:キリクと魔女
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):96%
AUDIENCE SCORE(観客):87%

キリクと魔女を見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年9月現在

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執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。