映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『ミスミソウ』ネタバレなしの感想。暴暴暴暴力!

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「イジメとは思えない振り切った暴力の連続でありながら、ストーリー展開も大胆で予測不能」

【映画】ミスミソウのネタバレなしのレビュー、批評、評価

中学生のバイオレンス映画といったら、パッと頭に浮かぶのはバトル・ロワイアル。
修学旅行中のとある中学の1クラスが拉致られて孤島に連れていかれ、殺し合いをさせられるといった内容だ。
中学生が主人公でありながらR-15(15歳未満は鑑賞不可)の指定がかかっており、劇中では純朴な少年少女たちが拳銃やサブマシンガン、カマなどを武器で互いを傷つけあう。

なかなかインパクトの強い映画だが、本作はそれ以上に強い衝撃を受けた。
バトル・ロワイアルはBR法といった法律に基づいての彼らの所業に対し、本作は未熟ながらも明確な動機から生まれた感情のぶつかり合いである。
だからこそエネルギーが凄まじい。
まるで映像にぶん殴られたような強烈な映画体験だった。

半年前、父の都合で東京から田舎町・大津馬村に越してきた野咲春花は中学校で壮絶なイジメに遭っていた。家族に心配をかけないように隠して卒業まで残り2カ月を耐え抜こうとするが、暴力がエスカレートしていき、家族に気づかれてしまう。心配した両親は春花に登校しないように勧めるが、イジメっ子たちはついに春花の家を放火してしまう。両親は命を落とし、妹の祥子は大火傷を負って意識不明の重体となってしまう。

圧倒されてしまった。
久しぶりにガチンコのバイオレンス映画を観た。興奮もカタルシスも凄まじい。
観終わったあとは余韻が拭えず、しばらく何もすることができなかった。

だがこの映画、倫理観や道徳観が備わってないうちに見たらいけない。
ミスミソウごっこなんてやりだすアホなガキが出てきてもおかしくない。
そのくらいインパクトのある映画だ。

私はネバダ事件を連想した。
2004年に長崎県佐世保市の市立大久保小学校で、小学6年生の女の子が同級生をカッターで切りつけて命を奪ってしまった事件だ。
①被害者加害者ともに小学生
②舞台は学校
③インターネットを介したやり取りに端を発している

この3点から、この事件は話題となった。
当時、犯行に及んだ彼女の写真が出回ったのだが、【NEVADA】と書かれたパーカーを着ていたことから、ネバダ事件と呼ばれる由来となっている。
で、彼女の容姿が可愛らしく、世界一美しい殺人者ともネットでは囁かれていた。

恥ずかしながら最近知った事件だが、実行犯の彼女も精神的に未発達で善悪の判断がついていなかったようにも思える。
実際の加害者の心理状態は良くわからないが、どちらにしろ親の責任は大きいだろう。

この映画はこの事件が着想元になっているようにも思えた。
幼さゆえの嫉妬心や制御不能な感情の発露。
本作のいじめっ子は、一言でいえば「下らない」と思えるような動機が暴力に発展しているのだ。

映画に話を戻すが、とにかくバイオレンス描写が凄惨。
とはいえ、見所は人体破壊のみに留まっておらず、物語としてしっかりと作りこまれているところが憎い。

舞台は閉鎖された田舎町。
確かにこういった環境は横の繋がりが過剰に強いため、外部から来た人間を敵とみなす傾向にある。

これは以前鑑賞して記事にした『愛しのアイリーン』も同様である。

田舎に住むモテない中年オヤジの岩男が、やけになってフィリピンに出向いて結婚相手を見つけてくる話。
奥さんとなったフィリピン人のアイリーンは害虫扱いされ、村人たちから迫害を受けるのだ。

単純に「アイリーン可哀想」といった風にはならない複雑な構造にはなっているのだが、こういった鎖国的な思想は社会病理としか思えないし、いわば共産主義・社会主義のようにも思える。
ミスミソウでも春花は「東京に帰れ」なんてことを言われていじめられるのだ。

春花は2ヶ月で卒業を迎えるので、その期間を我慢したらいじめから解放される。つまり救いがある。
観客も思わず彼女の無事を祈ってしまう。

だが、そんな救いをへし折るかのような胸糞な暴力は続く。
廃校寸前だからといって先生もイジメを無視。この村にはクソな連中しかいないのだ。
そんな中、一人だけ彼女を庇ってくれる人間がおり、同級生の相場 晄(みつる)は彼女と同じように転校してきた男子生徒だ。
つまり味方は家族と彼のみである。

両親は彼女を守るために学校へ登校させることを辞める。素晴らしい親だ。
だが、春花の親にまで暴力が及ぶのだから笑える。

ここまできて観客はようやく理解するのだ。
この映画はリアルを描くつもりはない。
この映画は社会派とは真逆のただのバイオレンス映画であることを。

私が素晴らしいと思ったのは、バイオレンスが日常との地続きなところだ。
バイオレンス映画を連想すると、北野映画の『アウトレイジ』などのヤクザ映画辺りを連想しやすい。

ヤクザは確かに怖いけど、言ってしまえばファンタジーだ。
身近ではないからだ。日常でヤクザと接することはほとんどない。
しかし、中学生は誰もが経験する。
だからこそ彼らの暴力は魂をえぐるような痛みを覚える。

そして、イジメッ子たちはラインを超えてしまうのだ。
まあ今までも十分に超えていたんだが、いよいよ取り返しのつかないことをしてしまう。
彼女の家に放火し、両親の命を奪われる。さらに可愛い妹は全身火傷による意識不明の重体だ。

ここで見逃せないのが、この一件により加害者連中にリアクションの差異が発生するということ。
やばいことをやってしまったと嘆く者、何とも思わない者、中には興奮して心が踊った者までいる。

今までイジメッ子集団はみんなで春花をいじめることを楽しんでいたが、このことがキッカケでそれぞれ別の目的を抱くようになる。
果たしてこれがどのような展開をもたらすのか。

被害者である野崎は当然一番の変化を見せる。復讐の鬼となるのだ。
この映画はここから本番である。一体どのような結末を迎えるのか。

本作は雪国で、中盤以降から真っ白な雪が積もっていて綺麗な景色だ。
そんな中で春花はビビッドなカラーのコートを着ているので、やけに美しく見える。雪とのコントラストで印象的。まさに世界一美しい復讐者。

服装に関して言うと、後半、あるキャラの服装に注目してもらいたい。
露骨すぎて思わず笑ってしまった。
この流れを見ると、つまりそうである。これはあなたの目で確かめてもらいたい。

後半に行くにつれ、キャラクターの多面性によってストーリーが展開していき、予想もつかない結末を向かえる。
第一部はバイオレンスでみせ、第二部はストーリーでみせるといったところ。

このストーリーがまたとんでもない魅力でビックリしてしまった。
てっきり見所はバイオレンス描写のみかと思ったんだが、この映画がやけに評判がいい理由に納得だ。
冷静に考えたら前半の設定が緻密に作りこまれているので、ストーリーをおざなりにするわけがない。
原作者の押切蓮介のプロット力に今回はやられてしまった。

あなたは関心が湧いただろうか。
人体破壊描写に耐えられるのなら見る価値は大いにある。
私は面白い物語を書くために映画をたくさん見ているところもあるので、どうしてもヒューマンドラマを多くなりがちだ。たまにはこういう刺激的な映画もいい。

暴力ではあるが、感情としてのエネルギーのぶつかりあいといった感覚。
とにかく感情、感情、感情、それが今作では暴力といった形で表現されている。
デイミアン・チャゼルの『セッション』が好きな人には間違いなくおすすめ。

ミスミソウの作品情報

■監督:内藤瑛亮
■出演者:山田杏奈 清水尋也 大谷凜香
■Wikipedia:ミスミソウ

ミスミソウを見れる配信サイト

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

ミスミソウと関連性の高いおすすめ映画

ミスミソウの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『TIME タイム』★★★★☆4
舞台は近未来。人類は科学技術の進歩によって25歳から年を取らなくなる。更に過剰な人口増加を防ぐため、通貨が時間となり、人びとは自身の寿命で日常品などを購入して日々を生活していた。貧民街と富裕層の暮らす街にも隔たりがあり、通過するためには高額な通行料を請求されることもあって、実質的に隔離されていた。ある日、貧民街に住むギリギリの毎日を過ごすウィルは、マフィアから富裕層の男を救い、117年分の時間をお礼として貰う。それと同時にこの社会システムのせいで母親が時間切れとなってこの世を去ることに。ウィルは復讐のため、この街を後にして富裕層の住むエリアに向かうことに。

設定が作りこまれている上に分かりやすく、かなり引き込まれる内容。
物語は組織に抗うシンプルな復讐劇で、SFでありながら誰でも楽しめる内容となっている。
思わず「自分だったら生き残れるのか」なんてことを考えながら観てしまう。

U-NEXT:
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・見放題)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。