映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

①家のなかのモンスター

映画『アス』ネタバレなしの感想。突如、赤装束を着たドッペルゲンガーたちに襲われるホラー

投稿日:9月 12, 2019 更新日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「格差が生み出した闇」

【映画】アスのネタバレなしのレビュー、批評、評価

ジョーダン・ピール監督の前作『ゲット・アウト』は非常に優れたホラー映画だ。

主人公の黒人青年は、恋人である白人の彼女の実家に行くことになる。
彼は黒人ということもあるので、「両親には話したかい?僕のこと(黒人であること)」と尋ねると「いいえ。でも両親は人種を気にしたりしないわ」と答える。
しかし、いざ彼女の家に行くと、黒人の使用人がたくさんいたり、家族が異様に優しく迎えてくることに彼は違和感を覚える。
翌日家族が開いたパーティに参加するのだが、来たのは白人ばかり。やはり彼らの行動もどこかズレている。

といったストーリーだ。
人が潜在的に持つ差別意識を上手く利用して違和感を与えてくるという、演出・脚本にともに優れた傑作だ。
そんな抜群のセンスを感じてしまった監督の最新作なので、大きな期待を持って劇場に足を運んだ。

1986年、アデレードは両親とともにサンタクルーズの行楽地を訪れる。そこのミラーハウスに入った彼女は自分にそっくりな少女と出会い、あまりのショックで失語症となってしまう。現在、大人になり、話せるようになったアデレードは結婚し、二人の子供を持つ母となっていた。ある日、一家はサンタクルーズの別荘に行くことになる。その日の夜、彼女は夫に以前、この場所で遭遇した出来事を話すと突如停電が発生。息子のジェイソンが、玄関先に赤い服を着た4人の不審者が手をつないで立っている姿を目撃する。彼らは、自分たちとそっくりな人間、ドッペルゲンガーだった。

今作は脚本の穴が目立つ結果となった。

トラウマを持つアデレードと、その夫と子ども二人の一家はバケーションの間、別荘で過ごすことになる。
夜、玄関先に家族4人にそっくりなドッペルゲンガーたちが突如出現するのだ。
このシーンは物凄く怖かったし、観客は「この先何が起こるのだろう」と期待感を煽られる。

ドッペルゲンガー全員が同じ赤い服を着ていることもあって、悪名高い胸糞映画『ファニーゲーム』を連想させた。
(ファニーゲーム:ある一家がサマーバケーションで別荘で過ごしていると、白装束の男二人がやってくる)
平和な一家を唐突に訪れる、といった流れも同様であり、オマージュだと思われる。

しかし残念ながら、序盤でピークアウトを迎えてしまった。
あとはひたすら「何を見せられているのか」といった展開が続くことになる。
家に侵入してきたドッペルゲンガーたちの、いかにもこちらを恐がらせようとした振る舞いは鼻につく。

娘ドッペルゲンガーはサイコパス感を出したいのか終始ニヤニヤ。
マスクを被った息子ドッペルゲンガーは犬のような態勢を取って、唸り声を上げている。
こういった安直な演出はかなり冷める。
普通でいい。顔も真顔でいい。

ドッペルゲンガーという特殊設定なので、変に演出するだけで「怖がらせたいんだろうなあ」といった意図で伝わってしまい、安っぽく見えてしまうのだ。
普通を装い、不意に予想外の行動・能力を見せてほしい。
それだけで充分に怖くなる。

もっとダメだったのか、ドッペルゲンガーたちの行動の規則性がハッキリしないところ。
なぜ、アデレード一家の命をすぐに奪わないのか。
アデレード一家以外にはノータイムで手に持ったハサミで刺しにいくのに、なぜか彼らにだけはなかなか手をかけない。

家に侵入した直後だっていくらでも仕留めるチャンスはあるのに、アデレードのドッペルゲンガーは余計なことをべらべらと独白する。
敵役本人がいろいろと話すシーンも何だか怖さに欠けるのだが、すぐに命を奪わないことで観客に緊張感を与えようとしているのなら演出として稚拙だし、何か意味があるのなら、それは全く伝わっていないので脚本としてレベルが低い。

鏡写しの行動もそう。
あれは一体どういう条件でそのような行動を取るのだろうか。

それと、ドッペルゲンガーたちが良く手をつなぐ意味も良くわからない。
一応、とあるシーンが伏線となっており、社会派テーマが内包されているのだが、それはあくまで真意だ。
もっと表面的な意味を持たせてほしい。
ドッペルゲンガーたちが手をつないでいる間はこちらが手出しできなくなる理由があるのなら納得できるが、そうでもないのなら「隙だらけなんだから、その瞬間にアメリカ人の大好きな銃で倒したらいい」と観客は思ってしまう。

オチは予想外でビックリさせられたが、それまでがこんな感じなので総合的な満足度はそれほど高くない。
エンタメなので、もっとシンプルで分かりやすい物語が観たかった。
『ゲット・アウト』はムダなシーンが一切なく、実に単純明快なミステリースリラーとして楽しませてくれたのに。
今作は中盤以降、早く帰ってマックの月見バーガーを食べることで頭の中はいっぱいだった。

どうも力が入りすぎているようにしか見えない。
前作にあれほどの成功を収めて期待が大きかった分、気合いが入って設定を作り込みすぎてしまったのだろう。
力が抜けてリラックスして作れるであろう、次作に期待。

アスの作品情報

■監督:ジョーダン・ピール
■出演者:ルピタ・ニョンゴ ウィンストン・デューク エヴァン・アレックス シャハディ・ライト=ジョセフ
■Wikipedia:アス
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):93%
AUDIENCE SCORE(観客):61%

アスを見れる配信サイト

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※2019年9月現在

アスと関連性の高いおすすめ映画

アスの裏ジャンルである【家のなかのモンスター】に分類される映画。

『ゲット・アウト』★★★★☆4.5
黒人のクリスは恋人である白人女性のローズの実家に週末、遊びに行くことになる。ローズは両親に自分が黒人であることを伝えておらず、クリスは心配するが、彼女は「両親は人種を気にしたりしないから大丈夫」と彼を安心させる。家に到着すると、彼女の両親から手厚い歓迎を受けるが、なぜか黒人の使用人が何人もおり……。

実はほぼアスと同じストーリーラインを辿っている。
序盤で違和感を与えてドキドキさせ、その正体を後半で明かすといった流れのミステリースリラー(ホラー)といった感じ。
ゲット・アウトはその怖がらせる手法が実に秀逸で、最後まで画面から目が離せなかった。

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-①家のなかのモンスター

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。