映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『翔んで埼玉』ネタバレなしの感想。埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!

投稿日:

■評価:★★★★☆4

「ダさいたま」

【映画】翔んで埼玉のネタバレなしのレビュー、批評、評価

本音を言うと、この映画に本気でレビューしたくない。
そんなことをしたら原作者や監督に「このクソみたいな映画を本気でレビューするなんてお前はみんなに笑われてるぞ」なんて陰口をたたかれていそうでイヤだからだ。そんな悔しい思いはしたくない。
しかし内容はめちゃくちゃ面白いという、何なんですかねこの映画。

夏のある日、埼玉県熊谷市に住む菅原家一家は、娘のマナミの結納のために父の運転する車で東京へ向かっていた。埼玉への郷土愛が一切ないマナミは、結婚を機に東京都民になる夢がかなうことにはしゃいでいた。すると、ラジオでDJが埼玉にまつわる都市伝説を語りだす。昔、埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受けており、通行手形なしで東京を出入りすることを禁じられていた。東京の名門校・白鵬堂学院では都知事の息子・壇ノ浦百美が埼玉を底辺とするヒエラルキーの頂点に君臨しており、そこにアメリカ帰りの転校生で美少年・麻実麗がやってくる。なぜか、差別を受けるZ組に所属する埼玉県民生徒を庇う麗に百美は不快感を覚え……。

まさかブログをやっていて、こんな困難に直面するとは思わなかった。
こんなにもレビューしたくない映画と遭遇するなんて。
だが、観た映画の全てを記事にするという鉄の掟を課しているため、逃げずにレビューしようと思う。

さて、本作は見たら知能がチンパンジー並みに低下しそうなアホ映画である。
何よりこの映画が凄いのは、突き抜けるほどにくだらない映画なのに、実はとんでもないバランス感覚で作られており、まごうなき傑作に仕上がっているところだ。

原作者の魔夜峰央は、たぶん相当いい人なんじゃないだろうか。
自分の能力の高さを一切見せようとせず、こんなアホな題材に本気を出して読者を笑かそうとしているのだから。
能力は戦闘力5未満だが、プライドの高さに限ってはベジータ以上の自負がある私は、何かしらの成果を上げた瞬間に臆面もなく自慢に明け暮れる愚鈍な人間であり、そんな私とは正反対の謙虚な人であることが推測される。

しかし、こんな作品に才能をつぎ込むなんて、たぶん魔夜峰央は相当バカだと思う。(褒めてます)

この映画の一番の特徴は、どうでもいいことにいちいちシリアスな設定を乗っけるところだ。
①通行手形がないと埼玉県民は東京に入れない。
②東京にて、埼玉県民疑惑のある者に、踏み絵として草加せんべいを踏ませる。
③サイタマラリアという謎の奇病がある。

など、挙げたらキリがない。
数分に一度は、このレベルのネタのぶっこんでくる。
しかも、このようなくだらない要素によって物語が重要な展開を迎えるので舐めているとしか言いようがない。

天才的なバランス感覚についても触れておきたい。
この映画の見所は、あくまで埼玉をディスることだ。(たまに他県も)
よりこの悪口を際立たせるため、物語のベースとなる世界観がハチャメチャとなっている。

中世ヨーロッパの貴族のような装いの洗練された主人公らが埼玉をディスるという抜け感が楽しいのだが、そんな世界観の中で現代的な車や原付が普通に登場する。
序盤の舞台となる、主人公らが通う白鵬堂学院の美術も中世風で凝っているのにも関わらず、後半では東京都庁が出てきたりと、もはやヤケクソ状態だ。

こういった世界観の不協和音に違和感を覚えないのは、見せ場を徹底的に絞っているため。
いわば、カメラで焦点を絞って周りをぼやかしているようなものだ。

あえて荒唐無稽にすることで、埼玉へのディスりが強調される仕組みとなっている。
観客は小ばかにされた埼玉を嘲笑うためにこの映画を観ているので、結果的に満足度が高くなるのだ。
バカみたいな話と思いきや、実は一流のプロット力で構成されているという、まさにバカの極みである。
だからこそ時代を越えて今、評価されているのだから安直にバカには出来ない。

というのも、この漫画の原作本は86年に刊行されているが、当時はまったく話題にならず。
最近になって日本テレビのバラエティ番組「月曜から夜ふかし」に取り上げられて話題となり、今では50万部突破しているというから何が起きるか分からない。

埼玉の成り立ちを描くという設定も実にうまい。
私が原作漫画は未読だが、本作は埼玉の建立秘話、といった感じで現代から過去を回想する形で描いており、これは映画オリジナル展開らしい。
いきなりこのぶっ飛んだ世界観を提示されるより、まず現代劇から見せてくれた方が観客は自然に映画に入り込めるため、素晴らしいアイディアだ。

そんな感じで、本作は現在と過去を交互に描いている。
現代劇の主人公は元AKB48の島崎遥香なのだが、演技がめちゃくちゃうまくてビックリした。
もっといろんな映画で主要キャストを担ってもいいレベルの演技力。

それとこの映画、原作者のみならず、監督も素晴らしい。
武内英樹監督の代表作に『のだめカンタービレ』や『テルマエロマエ』があることを観終わったあとに知って納得だ。
監督は原作物を実写化する際は徹底的に読み込み、作者に成りきるくらいに理解した上で映画作りに取り掛かるという。
その実直な姿勢が、見事なまでの完成度に到達しているのだ。

演出も素晴らしく、みんなの演技もバカげていて、それが世界観に良くマッチしている。
特記すべきは二階堂ふみである。

彼女がひたすら可愛い。
普段はクソミソに埼玉をバカにしているツンツンお坊ちゃまキャラだ。(一応男設定)
転校してきたレイにも最初は強い態度で接しているのだが、割と早い段階でレイに魅了され、たまたまキスすることになって恋に落ちる。(一応ボーイズラブ)
以降は何かとレイにキスを迫るデレデレキャラとなる。

このギャップが物凄く可愛いのだ。
普段は低い声なのだが、レイの前に限っては声をワントーン上げて女モードに切り替わるので芸が細かい。

エンディングの曲も面白かったし、最後の最後まで余すことなく楽しませてもらった。至り尽くせりである。
ここまでエンターテイメントに振り切ってくれると、文句なんて何も出てこない。
映画好きであれば観るしかない。こんなにもサービス精神旺盛な映画は珍しい。

ガラパゴス映画ではあるのだが、コンセプトは面白いので、ぜひとも全世界でもやっていただきたい。
先進国であれば、こういったバカにされても笑って済ませられる郊外の田舎町はあるだろうし、ぜひともいろんな国のいろんな僻地を面白おかしく紹介してもらいたい。

本来は最初に言うべきだったが、私の出身は神奈川県西部だが、普通に楽しめた。
地方の名産や、地方特有のコンプレックスを笑いにしているので、恐らく誰が観てもどっかしらで共感できて楽しめると思う。
都会生まれ都会育ちの人間も、上から目線で小ばかにする感じで楽しめるだろう。

悩みとか抱えている人に見せてあげたい珠玉の一本。
頭を空っぽにして観るべき傑作。
そして見終わったあとは驚くべきほどに何も残らない。

翔んで埼玉の作品情報

■監督:武内英樹
■出演者:二階堂ふみ GACKT 伊勢谷友介 島崎遥香
■Wikipedia:翔んで埼玉

翔んで埼玉を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

翔んで埼玉と関連性の高いおすすめ映画

翔んで埼玉の裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『十三人の刺客(2010)』★★★★☆4
江戸時代後期の弘化元年(1844年)。将軍の異母弟にあたる明石藩主・松平斉韶は横暴で残忍であり、それを訴えるため、石藩江戸家老間宮図書は老中土井大炊頭屋敷前にて切腹して自ら命を絶った。斉韶の凶悪な人間性が周りに知られることになるが、将軍の意により、斉韶にはお咎めなしとなる。斉韶の老中就任が来年に内定しており、筆頭老中・土井は斉韶暗殺のため、お目付役の島田新左衛門を呼び出す。

見所といったら稲垣吾郎扮する松平斉韶の暴虐っぷりに尽きる。
もはやジャニーズとは思えない振り切った怪演を見せており、稲垣吾郎の役者としての評価は本作で間違いなく上がったはず。
グロテスクなシーンもあるが、ストーリーはシンプル。時代劇が苦手な人でも観てもらいたい対組織映画の傑作だ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年9月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。