映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『複製された男』ネタバレなしの感想。もしも、自分と同じ顔の人間を見つけてしまったら

投稿日:9月 15, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「普遍的テーマをドッペルゲンガーという形で描く」

【映画】複製された男のネタバレなしのレビュー、批評、評価

『ドッペルゲンガー』は世界中で古くから神話などで語られている。
死や災難の前兆とも言われている現象で、今も劇場公開されている『アス』でもドッペルゲンガーを題材としている。

魅惑的なのか、ドストエフスキー『分身』、エドガー・アラン・ポー『ウィリアム・ウィルソン』、芥川龍之介の短編『二つの手紙』などと、古典作品も多く存在しており、作家は一度は扱いたくなる類のものらしい。

本作は難解だと聞いていて先延ばしにしていたのだが、いざ観てみるとイメージしていたものとはだいぶ違った印象を受けた。
その辺りも踏まえて感想文を書いていこうと思う。

大学の歴史講師アダムは恋人もおり、平和な日々を送っていた。ある日、同僚から1本の映画を勧められる。何気なしにレンタルビデオ店に足を運んで手に取り、家に帰って鑑賞する。すると、自分とまったく同じ顔の俳優を目撃する。恐怖と共に生まれた好奇心から、アダムは翌日からその俳優探しに奔走することに。そして彼の居場所を突き止め……。

めちゃくちゃ面白かった。
ストーリーはいたってシンプル。台詞も最小限にとどめられており、かなり観やすい作りになっている。
なので誰が観ても理解はできる内容だ。
表面的には。

難解と言われる所以は、劇中にちりばめられた伏線が分かりやすい形で回収されずに終わるところだ。
この映画は『ボーダーライン』『メッセージ』『ブレドランナー2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品で、何だか湿度の高そうなジメっとした名前だが、本作もそんな感じで完全理解を目指すという意味では一筋縄ではなかない。

女が全裸で自慰をし、その様子を男たちが囲むように見つめる謎のオープニングから始まる。
画面は黄色味かかったノスタルジックな雰囲気。
主人公で大学教授のアダムは、支配・独裁者をテーマにに講義をする。
序盤からバッキバキに作られた世界観は魅惑的で、掴みどころのない、不安定なBGMも相まって一気に引き込まれる。

かなり世界観の構築に長けている印象を受けた。
ボーダーラインやメッセージも特異な世界観を持っており、恐らくドゥニ・ヴィルヌーヴ作品が1つでも好きならすぐに入り込める。
彼の作品が未見であれば、『複製された男』から入ってもいいくらいだ。

開始、15分辺りでアダムは自分と同じ顔の男を発見する。
そして二人は会う約束を交わすのだ。
果たして、どんな会話をするのか。
正体は誰なのか。
こういったミステリー要素に観客はグイグイ引っ張られる。

しかし、思った以上に怖いといった印象を持った。
視覚的な怖さではなく、想像力をかき立てられる類のそれだ。

彼らは見た目こそ同じだが、中身は正反対。
穏やかな性格のアダムに対して、俳優のアンソニーはアクティブで感情的。
観客は『この二人、出会って良かったのだろうか』『この出会いはアダムの今後に、どのような変化をもたらすのか』といったことを思い、頭の中は妙な不安感で満たされる。

そういえば、アンソニーの奥さんが物凄くキレイな人だった。
劇中では身ごもっているのだが、その美しさに気づいたのは後半のとあるシーン。
男に対して、一連のある言動を取ったときだ。
男の根源的に持つ欲求をわしづかみにされたような奇妙な感覚を覚え、そのとき初めてこの女性が美しいことに気づいた。
何なら神々しさを覚えてしまった。
妊娠しているというのも関係しているのだろう。強烈な女性性を感じてしまったのだ。

それとこの映画、結末が全く想像できないのも魅力的だ。
今作を評価したい一番のポイントはそこかもしれない。
だからこそ、この物語に引き込まれる。

実際、多くの映画は、観始めて10分程度で結末が想像できるようなものばかりだ。
例えば男女が出会ったらくっつくし、モンスターが出てきたら退治する。

なので、そこに向かう過程を楽しんだりするものだが、今作は仮説すら立てさせない。
そして迎えるラストカット。
あれはいったい何なのか。
もう意味がわからない。完全にこの映画に翻弄されてしまった。

個人的には凄く映画的で、文学的なため、かなりタイプの作品だ。
文学的というのは、キャラクターの言動の真意やテーマが表立って描かれず、観客が深掘ることで理解していくような作風ということ。
この映画はジョゼ・サラマーゴというポルトガル人作家の小説を原作としており、なんとノーベル文学賞受賞者である。
村上春樹も取っていない高尚な文学賞だ。
私はIQ5のサル並の知能しか持ち合わせていないので、この作家の本は読めそうにないが、関心は強い。挑戦してみようかな。

余談だが、彼の著作に『白の闇』という小説があり、『ブラインドネス』というタイトルで映画にもなっている。
あなたはこの作品観たことあるだろうか。
ある日、運転中の男の目が突如失明してしまい、その現象が周りにも波及していく内容だ。
この映画の面白いのが、政府に感染症と認定されてしまい、失明者は隔離されてしまう。収容所では治安が劣悪化し、様々な問題が発生する、といった流れだ。人間の本質的狂気を失明させるという設定であぶり出すのがテーマである。

日本・ブラジル・カナダ合作であり、日本からは伊勢谷友介と木村佳乃、ハリウッド女優で『ハンニバル』でクラリスに演じたジュリアン・ムーア、私が最もリピートした青春映画の名作『天国の口、終りの楽園。』で主演したメキシコ俳優ガエル・ガルシア・ベルナルらが出演している。
私は視聴済みだがかなり楽しめた。
ユニークな設定で深いテーマを描いており、そういった意味では今作にも通ずるものがある。

話を映画に戻すが、ジャンルとしてはミステリーから中盤以降はスリラーへと移行する。
繋ぎ目を感じさせないくらいスムーズにスリラーへと変調させているのが素晴らしい。
そこで描かれるドラマも良い。普遍的なテーマを複製された男(ドッペルゲンガー)という形で表現したアイディアが面白いのだ。

ただ、やはり好みは別れる。
多くの伏線が回収されないので、納得できない人は多いだろう。そういった人が評価を低くしており、平均値が下がっている。 真価がクチコミには反映されないタイプの映画とも言える。

パッと見は難しい感じではないので気楽に観るといい。
ハマったらラッキーだし、ハマらなくてもこの摩訶不思議な世界観を体感できるのは良いと思う。

一応下記にWikipediaのリンクを貼っているが、「作品解説」の項目がネタバレとなっているので注意してほしい。
観終わったあとに確認することをおすすめする。
一文しか書かれていないが、本作の核心に触れている。

余談だが、私の足りない頭では、伏線の意味はまったく解読できなかったので、Wikipediaや解説サイトを漁ってようやく理解に至った。
この物語の本当の意味を知ったときは心をわしづかみにされ、すごく心地の良い気持ちになった。

複製された男の作品情報

■監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
■出演者:ジェイク・ギレンホール メラニー・ロラン サラ・ガドン
■Wikipedia:複製された男
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):71%
AUDIENCE SCORE(観客):63%

複製された男を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年9月現在

複製された男と関連性の高いおすすめ映画

複製された男の裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『海街diary』★★★☆☆3.5
舞台は鎌倉。十五年前、家を出た父が闘病の末に亡くなった。父は再婚しており、遠く離れた山形に住んでいたことを香田家の三姉妹は知る。自分たちを捨てた父との確執から、長女の幸は仕事を理由に次女・佳乃と三女・千佳を告別式に送り出す。二人を駅で出迎えたのは、腹違いの妹すずだった。翌日の葬儀には来ない予定だった幸が現れ、すずに「鎌倉で一緒に暮らさないか」と持ちかける。

『万引き家族』の是枝監督作品。
地味な内容なのに妙に惹かれる映画だ。
姉妹にはそれぞれの葛藤があり、すずを迎え入れたことで少しずつ変化が生まれる。
世界観も美しく、洗練された演出により、本当に彼女らが存在しているとしか思えない圧倒的リアルで描かれたヒューマンドラマ。

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

-⑤人生の節目

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。