映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』ネタバレなしの感想。吃音に悩む女子高生による傑作青春ドラマ

投稿日:9月 19, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「吃音であろうとも、向き合うべき相手がいる」

【映画】志乃ちゃんは自分の名前が言えないのネタバレなしのレビュー、批評、評価

聲の形という名作漫画がある。
聾唖(ろうあ)の女子高生が主人公で、耳が聴こえないため、上手く話せずにクラスメイトにいじめられてしまう話だ。
劇場アニメとしても制作されており、このブログでも感想記事をアップしているが、とんでもないクオリティに仕上がっている。映画ファンのみならずすべての人に見てもらいたい青春ドラマだ。

今作は、吃音に苦しむ女子高生の物語。
タイトル通り、他人の前ではどもってしまって自分の名前も言えない女の子が主人公だ。
人見知りだった人は、軽度のどもりをみんな経験しているのではないだろうか。
私も実は子供の頃はどもり気味で、人と話すことは苦手だった。今も人と話すときに興奮してしまい、たまに出るときがある。が、あまり気にはしていないレベル。

聲の形と比べると多くの人にとって身近な題材となっており、私も志乃ちゃんをまるで自分の子どものように応援しながら観てしまった。

高校に入学した大島志乃は、人と上手く話せない吃音症を抱えていた。学校初日の自己紹介の際に自分の名前を言えず、それがきっかけでひとりぼっちの学生生活を過ごすこととなる。ある日、ひょんなことがきっかけで同じクラスの加代と仲良くなる。音楽が好きで、ギターは弾けるが音痴な彼女は、思いがけず聴いた志乃の歌声に魅了される。二人はバンドを組み、文化祭に向けて猛特訓が始まる。

志乃ちゃんの特徴は他人、あるいは他人の前だと上手く話せない。
授業中、先生に指されたらどもってしまって答えられないし、1対1でも仲良くないと話せない。
それに対して、母が相手だと流暢に言葉がでてくる。
独り言ももちろん可能だ。

印象的だったのが、学校の隅で志乃ちゃんが1人でごはんを食べながら、独り言で架空の友達と話すシーンだ。
観ていて痛々しく思いつつも、理解はできる。
練習しているのだ。もし友達ができた時はこんなの風に話そう、といった感じで。

このシーンは本当に切ない。
彼女は決してネガティブになることなく、何とかしたいって思ってるからだ。自分の吃音を克服しようと頑張ろうとしている。
この姿を観たとき、観客は一気に彼女を応援するようになる。

先生の安直なアドバイスにはイライラさせられる。
学校初日に自己紹介できなかった彼女を生徒指導室に呼び出してこんなことを言う。
「名前くらい言えるようになろう」「緊張するのは友達がいないから。勇気を出して積極的になろう」などと。
それが出来ないから苦労してるんだって話だ。
悪意がないのはわかるが、せめて相手の立場になって考えて貰いたいもの。
志乃ちゃんはどうしたいのか、あるいはどんなことならやれそうなのか、と寄り添うようにして話を聞いてあげて欲しい。

だが、ちっぽけな勇気を振り絞って志乃ちゃんは動く。
志乃ちゃんの秘密基地(校舎の隅)の近くで超絶ヘタクソな歌声、いやノイズを垂れ流すクラスメイトが現れる。加代ちゃんだ。

志乃ちゃんは何か言いたげに話そうとするが、やはりどもってしまう。
すると加代ちゃんは「上手く話せないなら書けば」と紙とペンを渡す。
しかも「面白いこと書いて」と言って10、9、8……とカウントしやがるから、腹立つ。

しかし、志乃ちゃんはここでとんでもないホームランを打ちやがるから笑える。
ぜひ観て確認して欲しい。なかなかぶっ飛んだいい一言だ。
余談だが、私だったら「クソ音痴だね」と書いていた。

そんな感じで二人の交流が始まる。
観客はとても嬉しい気持ちになる。友達を作りたいと思っていた志乃ちゃんの思いが叶ったのだから。
私はもうこの時点で、志乃ちゃんから目が離せずにいた。彼女の幸せを願わずにいられない。

加代ちゃんの良いところは、ある意味、志乃ちゃんと対等に接しているところ。
吃音だからといって、必要以上に優しくしないのだ。
だから、二人の距離は加速的に縮まってく。

そう思うと、紙に書くっていうのはありかもしれない。
志乃ちゃんからしたら友達を作りたいのだから、筆談であろうとコミュニケーションは成立する。
結果的に志乃ちゃんの吃音症状は、加代ちゃん相手に限り和らいでいくのだ。

他にも志乃ちゃんに厳しい発言をするキャラクターもおり、やはりこの辺りは障害等をテーマとするドラマには必須となる。
人は誰だって自立しないといけない時が来る。障害とて例外ではない。
そういった時は人に甘えてはいけない。
人は自分の行動に責任を持たなければならない時が必ずやってくるのだ。

吃音の志乃ちゃんの歌が上手いっていう設定もお見事だ。
普段は話せないけど、歌は歌える。
いい多面性となっており、さすが『惡の華』でとんでもないキャラクター群を生み出した押見修造である。

歌がうまい吃音の志乃ちゃんと、ギターは弾けるけど音痴の加代ちゃんの二人が組み、文化祭を目指す。
人前で歌うことにビビる志乃ちゃんの特訓のため、遠くの街に出向いて路上に立つ。
彼女らに明るい未来は待っているのか。

やっぱり人前で何かするっていいことだと思う。
小説家や脚本家志望は学校などで添削してもらった方がいい。
人から評価を貰うから、今の能力と目指す目標に必須な能力の差異が可視化される。
それを現実として受け止め、ギャップを埋めていく作業が必要となる。
それが成長につながるのだ。

話を映画に戻すが、おちゃらけキャラの菊地。こいつが曲者だ。
菊地はテンションが高く、話せない志乃をバカする悪役然としたキャラとなっている。
一見、志乃とは正反対のノリの良い奴に見えるが、こいつがまた複雑な一面を持っており、それが明かされることで物語は意外な展開へ舵を切る。
菊池のキャラを観ると、『スイート17モンスター』を思い出す。

似たようなテーマを扱ったアメリカが舞台の女子高生の青春映画だ。
あなたが関心がわいたら、ぜひ観てもらいたい。

志乃ちゃんの味わう苦しみは自分が通ってきた道でもあるので、感情移入の仕方が尋常ではなかった。
素晴らしい青春映画だ。

志乃ちゃんは自分の名前が言えないの作品情報

■監督:湯浅弘章
■出演者:南沙良 蒔田彩珠 萩原利久
■Wikipedia:志乃ちゃんは自分の名前が言えない

志乃ちゃんは自分の名前が言えないを見れる配信サイト

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※2019年10月現在

志乃ちゃんは自分の名前が言えないと関連性の高いおすすめ映画

志乃ちゃんは自分の名前が言えないの裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

聲の形』★★★★☆4.5
高校生の石田将也は今までやっていたバイトを辞め、自室の家具を売り、銀行から全財産を引き出して封筒に入れて眠る母の枕元に置き、家を出て橋の上から投身を試みる。しかし勇気が振り絞れずに断念する。小学6年生の頃、将也のクラスに聴覚障害を持つ少女・西宮硝子が転校してくる。彼女は話すこともできないため、筆談用ノートでクラスメイトとの会話を試みる。しかし将也たちは彼女をいじめるようになる。

もし自分が聴覚障害になったとしたら、運命を憎んでしまいそうだ。
しかし、いくら憎んだところで世界が変わるわけではない。

先日、YOUTUBERカジサックの動画に出演したメンタリストDaigoがこんなことを語っていた。
「僕は小1から中2までいじめられてた。世界が変わることを期待して我慢していた。中2のある日、いじめられっこに母をバカにされてイラっとした。その時は図工の授業で、相手の命を奪ってやろうと、持っていたナタを投げつけた。幸いにも、手が滑って後ろにナタが吹っ飛んでしまったが、その日から『あいつはヤバイやつ』と思われていじめがなくなった」

と語った。
これについてDaigoはこういう受け止め方をする。
「待っていても世界は変わらなかった。ナタを投げるのは良くないが、自分が行動をしたことで、世界はあっさりと変わってしまった。その日から、自分の行動で世界を変えようと決めた」

素晴らしい考えだ。
そして彼が具体的にとった行動はこうだ。
「紙を半分に折って、左に自分の気に入らない部分、右にその正反対を書いた。そしてできることから1つずつ潰していった。天パーがイヤだったので直毛にした。眼鏡がイヤだったのでコンタクトにした。成績が下から3番目だったので、時間はかかったが1年かけてトップ3に入った」と。

自分がどうなりたいかわからないのなら、自分の気に入らないところの正反対を目指したらいいと。
非常にシンプルで分かりやすい方法だ。
動画を貼りつけておくので、関心が沸いたら観てみるといい。

志乃ちゃんも、『聲の形』の西宮硝子も世界が変わることを待っていた節があったのだ。
そして気づく。
人の助けなどで世界が変わることを待つのでなく、自分が行動を起こして変えて行かなければならないことに。

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年9月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。