映画の海

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②金の羊毛

映画『千年女優』ネタバレなしの感想。引退した大女優が30年越しにインタビューに応じる

投稿日:9月 20, 2019 更新日:

■評価:★☆☆☆☆1.5

「虚構と現実が入り混じるファンタジードラマ」

【映画】千年女優のネタバレなしのレビュー、批評、評価

虚構と現実の境目があやふやとなり、それが対立軸となって主人公が苦しむ物語はいくつかある。

所属しているバレエ団で、主役に抜てきされ、そのプレッシャーによって幻覚に苛まれる主人公を描いた『ブラック・スワン』。
千年女優を監督した今敏の初監督作品『PERFECT BLUE』では、熱烈なファンに追い掛け回されて精神が崩壊していくアイドルを主人公としたアニメ映画となっている。

PERFECT BLUEは当時、流行っていたサイコスリラー映画『セブン』が「いかに犯人が狂っているか」をテーマにした内容となっていたため、それを逆転させた形となっている。犯人ではなく、被害者が妄想で狂っていく様を描いたのだ。

本作も「境界があいまいになる」というモチーフを扱っているが、上記2作品とは大きく異なる作りとなっている。
上記二作品を闇とするなら、千年女優は光だ。

芸能界を引退して久しい大女優・藤原千代子は、彼女のファンであった立花源也のインタビューを受けることに。彼はインタビュー前、彼女に小さな箱を渡す。その中には古い鍵が入っており、「一番大切なものを開ける鍵…」と彼女は呟く。その後、自分の過去を語りだす。大戦中、彼女は学生時代に女優としてスカウトされたが親に反対されてしまう。その帰り、特別高等警察に追われている謎の画家の青年と出会い、彼を匿う。翌日、彼は1つの鍵を置いて姿を消しており、彼女は一目惚れした彼を追いかけるため、女優となって満州に渡る。

久しぶりに全編を通して退屈だった映画。
大女優のおばあちゃんをインタビューして過去を振り返る、といったコンセプトとなっており、この時点であまり食指が動かなかった。

評価の高い今敏監督作品を1から全部見ようと思ったのと、本作は各レビューサイトでなかなかの高評価を叩き出しているので、頑張って手に取ったのだが、びっくりするほど合わなかったので残念。

序盤で観客はこの二点に関心を抱く。
①なぜ立花はカギを持っているのか
②千代子はカギの男に会えるのか

千代子が語る過去の話がこれら二点に迫っていくのだが、とにかくこの回想シーンのエピソードが面白くない。
映画の中で意中の男を追いかける役を千代子が演じる、といった形をベースとして何パターンも見せられるだけだ。
更に取材している立花が、彼女のピンチを助けるヒーローとして回想シーンの中に現れる。
立花視点の物語なので、俳優が演じてるヒーローを自分と見立てて彼女の話を聞いている、といった設定だろう。

このようにどこまでが現実の彼女で、どこまでが映画の彼女なのか不明瞭な構造となっている。
それが本作の見せ場なんだが、やっぱり回想のストーリーが弱いし、何より立花が毎回乱入してくるので茶番としか思えなくなってしまう。私は「何を見せられているんだろう」と思いながら垂れ流される映像をボケーっと観るはめとなった。

たまには意表をつかれるような展開を見せてほしかったのだが、最後までその期待には応えてくれなかった。
そもそもこの千代子の過去を知りたいといった関心が湧かないので、前フリがあっても良い。
彼女がどんな功績をあげた女優なのか、など。
何の説明もなく彼女の回想が始まるので、物語に入りこむのにも時間がかかった。

『PERFECT BLUE』と同様、好きな人は好きといった印象。
私は『PERFECT BLUE』は好きだが、この映画はどうも受け付けない。

というか虚構をポジティブに描くというテーマはどうなんだろう。
ちょっと扱いをミスったら、頭のイカレたやつと見られてもおかしくない。

人は妄想でポジティブになるとしても、それを俯瞰で見て、現実的な対応をするのが普通だ。
ポジティブな虚構に入り込み、現実とごっちゃにしてしまうと、現実逃避しているだけのようにも思えてしまう。

実際にこういう人ってたまにいる。
苦しいことがあっても、「余裕余裕♪」などを口にしているのだが、結局は現実的な問題をスルーしているだけである。
これを良いか悪いかといったら、目的にもよるので一概にどっちとは言えないのだが。

この映画でも終わりに千代子がちょっとした一言を放つが、まったくもって共感できなかった。
私はやはり現実を生きたい人間なので、彼女の言葉を理解できない。

そういったことも踏まえて、このテーマはなかなか扱いづらいように思える。
もしもっと上手く活用して、万人ウケする物語に昇華させられる人がいるのならぜひ作ってもらいたい。
妄想を物理的に現実にするような設定のストーリーだったら、恐らく私はハマるだろう。
ドラえもん辺りでやっていそうだが。

千年女優の作品情報

■監督:今敏
■出演者:荘司美代子 小山茉美 折笠富美子 飯塚昭三 佐藤政道
■Wikipedia:千年女優
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):93%
AUDIENCE SCORE(観客):90%

千年女優を見れる配信サイト

U-NEXT:-
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Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
ビデオパス:-
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年9月現在

千年女優と関連性の高いおすすめ映画

千年女優の裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『インセプション』★★★★☆4
ドミニク・コブとアーサーは人が夢を見ている間に侵入し、機密情報を盗み出すスペシャリスト。だが、コブはとあることがきっかけで最愛の妻の命を奪った容疑がかけられ、国際指名手配されてしまっていた。ある日、日本人実業家サイトウは競争相手モーリス・フィッシャーが経営する企業を壊滅させるため、コブに仕事を依頼する。その内容は「インセプション」と呼ばれる、情報を盗み出すのとは逆に、相手の記憶に『植え付ける』という困難な作業だった。見返りとしてコブの殺人容疑を取り消すことを約束し、彼は依頼を引き受け、任務遂行のために仲間を集める。

今は亡き今敏監督、最後の作品である2006年のアニメ映画『パプリカ』が他人の夢に入り込む内容となっており、インセプションの着想元など言われることもある。が、ノーランは2002年の時点で本作の脚本の草案を映画製作会社のワーナーに見せているため、関連性はない。
筒井康隆の原作小説は1993年に刊行されているが、まあ読んでいないだろう。

本作は何より映像がダイナミックで非常に見応えがある。
夢の中ということで、物理法則を無視したとんでも映像の連発だ。

仲間を集めて任務遂行するチーム物の要素や、夢の中での独特のルールなど、とにかく見所が多い。
ノーランらしく、複雑な構成となっているので、一度で理解するのは難しい。
世界観は魅力があるので、繰り返し楽しむ価値のある映画だ。

U-NEXT:○(見放題)
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※2019年9月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。