映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑥バディとの友情

映画『見えない目撃者』ネタバレなしの感想。韓国の傑作スリラーの日本版リメイク

投稿日:9月 25, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「守るものがあるから強くなれる。母性の強い女性主人公の話」

【映画】見えない目撃者のネタバレなしのレビュー、批評、評価

この映画とは関係ないのだが、「芸能は楽しませるだけでなく、人と人、国と国をつなぐ架け橋になる」と、ある新聞の記事を読んで納得した。
今、日韓関係は戦後最悪な状況であるが、不思議と映画ファンから韓国を揶揄する言葉を聞いたことがない。
一度もだ。

韓国には素晴らしい映画がたくさんあって、彼らにはそれぞれ好きな韓国映画や韓国人俳優がいる。
つまり、彼らが韓国を批判する理由なんてないし、微塵も考えたことがないだろう。
それは韓国人も然りだ。

今作は韓国映画『ブラインド』の日本版リメイクとなっている。

私も以前見て、大いに楽しませてもらった。
今度も韓国映画を楽しんでいきたいし、その都度レビューしていくつもりである。

警察学校卒業式の夜、浜中なつめは夜遊びしている弟を連れ戻す途中に交通事故を起こしてしまう。それによって彼女は視力を失い、弟は命を落としてしまう。事故から3年が経った現在も、なつめは弟の死を乗り越えられずにいた。ある日、夜道を盲導犬パルと歩いていると車の接触事故に遭遇する。車の中から少女の助けを求める声を聞こえるが、それを伝えても警察には信用してもらえずにいた。彼女は現場にいたもう一人目撃者のスケボー少年を探し、独自に調査を開始する。

基本設定である主人公が盲目な点やテーマを除き、ほとんどがオリジナルで作られていてかなり好感が持てた。
犯人設定も一新されており、それによって事件内容や展開がまるで変わっているので、原作ファンでも新鮮な気持ちで楽しめる作りになっている。

何より吉岡里帆が良い。
彼女は自身が起こした事故によって弟を失い、精神科に通院している。
見えない演技はもちろん良かったのだが、いかにも精神疾患者といった感じの負のオーラを放っており、情緒不安定でどこか危なっかしい。
悲壮感漂う雰囲気作りはかなり素晴らしく、彼女にとって大きな躍進となりそうな演技である。

物語自体は原作の良さがあるので、満足度は結構高い。
ただし、不満点もかなり多かったので、それについて語っていきたい。

これは以前鑑賞した『アス』でも語ったのだが、なぜ犯人はすぐに二人に手をかけないのかが謎すぎる。

いくらでも仕留めるチャンスはあるのに、いちいちジラすのだ。
スリラー効果を狙ってのものなんだろうが、こういった安直な描写は恐さに欠けるので止めて欲しい。

「ちょっとでも隙を見えたらやられる」と思ってしまうくらいに緻密に描いてくれたら、観客は小便チビるくらいに怖くなる。
そのくらい振り切った演出を見せて欲しいところ。

ワンワンの見せ場を一つ省いてしまったのも残念だ。
原作では、田口トモロヲ扮する木村刑事にあたるチョ刑事とじゃれるシーンがあり、ここが物凄く良かった。
ほんの一瞬なのに、ワンワンとチョ刑事に愛着が湧いてしまうくらい素晴らしいシーンで、ここを観たいがためにブラインドを再視聴したくなるほど。
このシーンをなぜ再演しなかったのか。残念で仕方ない。

何でたかが一目撃者にいちいち刑事が捜査報告をするのかも理解に苦しむ。
確かになつめは元警察学校に通っていた警察官予備軍だが、別に報告する義務はない。

個人的に一番しくじってしまったと思ったのが、相棒となる男子高校生・春馬の描き方だ。
彼の存在感はよかったが、もう少しみすぼらしくしてもいい。
なぜならこの映画はバディ要素が強いので、反発しながらも次第にお互いがお互いの足りていない部分を埋め合うところがポイントになる。

原作では二人がぶつかりあうシーンが多く描かれていたのに対し、本作では割とスムーズに距離が縮まっている。
これをやってしまうと本作のテーマが少しブレてしまう。

テーマは「守るものがあるから強くなれる」。
なつめは非常に母性が強い女性で、事故から3年もたっているのに弟の死を払拭できないでいる。
さらに、捜査の過程で初対面の家出少女に対して「私の家にくる?」なんて台詞を口にするシーンもおり、テーマを示している。

だとしたら、次は春馬の描写も必要だ。
春馬に足りないところが多いからこそ、彼女は徐々に彼をほっとけなくなる。
が、この映画の彼はしっかりしているように見えるし、身なりもキレイで一人でも十分生きていけそうだ。例えなつみがいなくても。

この辺りはオリジナルの解釈が甘いように思える。
私は原作のラストカットが物凄く好きなんだが、そう思えたのは春馬に該当するギソプのキャラ造形がお見事だったからこそだ。

今作では残念ながら原作のラストカットは見られなかったが、もう少し春馬について丁寧に描いて欲しかった。
そのせいか、やけに献身的に彼が彼女に協力する姿に違和感を覚えてしまった。

脚本の穴が多くなってしまったのは残念だが、充分に楽しめる内容になっている。
とくに凄惨な描写が多く、犯人の凶悪さが分かりやすく映像で伝わってくるので、原作にはない見所の一つにもなっている。

余談だが、今回初めて池袋のグランドシネマサンシャインで鑑賞したのだが、素晴らしい映画館だった。本当に良かった。
豪奢な内装でラグジュアリー感があり、もしかしたら一番好きな劇場かもしれない。
とくに、エスカレーターで昇って行く際に壁に貼られた映画のポスターには目が行く。

チャップリン辺りから始まり、ロリータやエイリアンなどの名作映画のそれだが、何か法則があるのかと思って考えてみたら、その階に該当する年代に公開された映画となっている。
6階だったら60年代、9階だったら90年代といった具合に。

どんな映画のポスターが貼られているのかはあなたの目で確認してもらいたい。
こういった映画愛に満ち溢れた雰囲気は最高だ。思わず通いたくなってしまう。

見えない目撃者の作品情報

■監督:森淳一
■出演者:吉岡里帆 高杉真宙 大倉孝二 田口トモロヲ 浅香航大
■公式サイト:こちら
■Wikipedia:見えない目撃者

見えない目撃者を見れる配信サイト

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※2019年9月現在

見えない目撃者と関連性の高いおすすめ映画

見えない目撃者の裏ジャンルである【バディとの友情】に分類される映画。

『gifted/ギフテッド』★★★☆☆3.5
船の修理で生計を立てているフランクは、7歳になる姪のメアリーと隻眼(片目)の猫フレッドと海に近い田舎町で暮らしている。メアリーは小学校入学の初日、とんでもない計算の才能(ギフテッド)を見せ、担任教師ボニーを驚かせる。フランクは校長から彼女をギフテッドに適した私立学校に通わせることを勧められるが、これを断る。フランクは天才数学者であり、かつてミレニアム問題のひとつ「ナビエ?ストークス方程式」の解読にあと一歩、というときに自ら命を絶ってしまった姉の二の舞にさせないため、彼女を普通に育てる決心をしていた。

この映画でも、最初から二人の距離感が近いのはちょっと気になるところ。
最初は反発していて、徐々に二人が仲良くなっていく展開の方が間違いなく観客の心は揺さぶられる。
とはいえ、フランクとメアリーのキャラクターは魅力的だし、映像も美しい。
やけに心に残る一本だ。

U-NEXT:○(有料)
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※2019年9月現在

-⑥バディとの友情

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。