映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『アド・アストラ』ネタバレなしの感想。宇宙で消息不明となった父を探しに行く

投稿日:9月 26, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3.5

「宇宙や父を通じて自身の葛藤と向き合う」

【映画】アド・アストラのネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作は、公開前は世間的にかなり期待値の高い映画となっていた。
宇宙が舞台だし、主演もハリウッドスターのブラッド・ピットということもあって、さぞかしドキドキワクワクさせてくれる冒険映画であると思われていたのことだろう。
だが、封を切られてみると評価や興行収入は散々だ。
興行収入ランキングの初週結果も3週目の『かぐや様に告らせたい』に負けて第3位といった中途半端さで、YAHOO映画レビューでも『かぐや様に告らせたい』より下の2.84点(5点満点)となっている。

実際に観てみたら一目瞭然で、明らかに万人受けする内容にはなっていない。
つまり駄作といったものではなく、期待と実際の中身のギャップによる結果である。

恐らく多くの人は、壮大な宇宙でとんでもない出来事が起こるエンタメを期待したんだろうが、テーマを語るメインストーリーは自身の葛藤と向き合うといった、ひどくミニマムな内容である。
誰にも知られず、ひっそりとシネリーブル池袋辺りで上映していた方が評価は高かっただろう。

舞台は近未来。太陽系は電気嵐”サージ”に襲われ、多大な被害をもたらしていた。ロイは、地球外知的生命体の探求に人生を捧げた父・クリフォードの背中を追いかけるように自身も宇宙飛行士となっていた。だが父は宇宙に探索に出発してから行方不明となっていた。ある日、ロイはアメリカ宇宙軍の基地に呼び出され、極秘情報を伝えられる。実は父は生きており、海王星付近にある彼が搭乗していたリマ号からサージが発生しているといった内容だ。ロイは火星の地下基地から父に通信する極秘命令を受け、宇宙に旅立つ。

エンタメってより文学的、哲学的といった方がしっくりくる内容。
初期の新海誠映画かってくらいに随所に心の声でロイの内面が描かれる。

テーマもボーイミーツガール、なわけないので、新海映画よりも対象客層は開かれていない。
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』や『メッセージ』辺りが好みは人は間違いなくハマるだろう。
彼が好む知的で、雰囲気のある映画だ。

個人的な意見となるが、自分の精神と向き合いすぎるのはどうなんだろうか?
向き合いすぎたところで哲学的になってしまって、答えが出ない。
しかし、彼は過剰なほど向き合ってしまっているので、どこかメンヘラ気味で退廃的な雰囲気を醸している。

人は何らかの問題を解決するとき、現実的な対処としては自分と向き合うより、意識を外に向けて実際的な行動に費やす時間のが長くなるものだ。
しかしこの主人公は自分と向き合い続け、それに耐えられなくなったのか現実逃避をして間違った対処をする。
それが宇宙飛行士だ。

宇宙が現場のこの仕事はかなり危険で、序盤からロイはトラブルによって命の危機に晒される。
それでも彼の心拍数が変わらず、平然とこなすのだ。
心のどこかでいつ死んでもいい、だからこそこの仕事が天職となっている、といった印象。
この辺りはやはり説明はされない。

そんな命と隣り合わせの日々を過ごしているとき、「父が実は生きている」といった極秘情報を伝えられ、彼の逃避人生が狂い始める。
つまり、現実的な行動を取らされる形となる。いや、彼もどこかで解決を望んでいたのだろう。
その後は父を探しに宇宙へ飛び出すストーリーと、自分の中に広がる宇宙(つまり精神)と向き合う二つのストーリーが同時進行していく。

定期的に実施される心理検査も注目するといい。
これが一番分かりやすい形で、彼の現状を示してくれている。

父は本当に生きているのか?
彼は知的生命体は発見できたのか?

「自分と向き合う」ということがこの映画のテーマとなっているが、さっきも言ったが答えが出るものではない。
ただ、この辺りは目的にもよるので正解があるわけではない。
彼は自分と向き合いながら現実逃避をしているのだが、別にダメなことではないだろう。結局のところ今の彼にとってそれが療養になっているのかもしれない。

誰しもが何らかの形で現実逃避をしていたりする。
仕事の辛さを忘れるためにゲームをしたり、映画を観たり、旅行をしたりなど。

彼もある過去の経験に未だに引っかかりを覚えており、それを受け止めるために「そう、これでいいんだ。これが俺の正解なんだ」といった具合に自分を言い聞かせる形で宇宙飛行士をしている。
よって、今の彼にとって現実逃避は必要なのかもしれない。

こんな風に、結局のところ哲学的になってしまう。
人間なんて人それぞれだ。
自分が正解だと思う行動を取ればいいのだ。
分からなかったら誰かに相談したらいいし、それがイヤなら自分と向き合って「これでいいんだ」と言い聞かせたらいい。
なぜなら誰にも迷惑かけないのだから。だから誰も彼を非難しない。

宇宙描写は息を飲むほどに美しいが、宇宙そのものが対立軸になることはない。あくまで対立するのは自分だ。
なのであなたが、こういった内に意識を向けた人間を描くややこしい映画が好みでないなら、無理して観ない方がいい。

私はこの映画、割と好きな方なんだが、その理由は私もこういった経験をしているからだ。
答えの出ない苦しみを味わい、それに気づかずに自分と向き合い続けてしまった。何なら今もしてしまう瞬間があったりする。昔に比べて短くはなかったが。
そんな感じで彼に共感できるので、見守るような形でぼんやりと画面を眺めていた。

あなたがこの映画を観たいと思ったのなら、行き着いた先に見た光景に、ロイはなぜそう思ったのか、なぜそういう行動を取ったのか。
この辺りを観終わったあとに考えてみて欲しい。

余談だが、rotten tomatoesの批評家評と観客評の差が凄くてちょっと笑える。
これほど賛否両論が別れる映画って逆に面白い。

アド・アストラの作品情報

■監督:ジェームズ・グレイ
■出演者:ブラッド・ピット トミー・リー・ジョーンズ リヴ・タイラー
■公式サイト:こちら
■Wikipedia:アド・アストラ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):82%
AUDIENCE SCORE(観客):45%

アド・アストラを見れる配信サイト

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Amazonプライムビデオ:-
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TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年9月現在

アド・アストラと関連性の高いおすすめ映画

アド・アストラの裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『メッセージ』★★★☆☆3.5
突如、世界各地に謎の宇宙船が出現する。言語学者のルイーズ・バンクスらは調査を開始し、宇宙船の中にいた2体の地球外生命体・ヘプタポッドと遭遇する。彼女らは、ヘプタポッドが飛来してきた目的を探るため、墨で描かれた彼らの文字言語を解読を始めるが……。

かなりのミスリードが多い映画。
あまり情報を仕入れずに映画を観てもらいたい。
ミステリー要素がエンジンとなってぐいぐい引き込まれるが、この映画で描きたいことはあくまでドラマ部分。
文字を解読できるのか、一体何の目的でヘプタポッドは地球にやってきたのか。

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)、○(字幕・有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年9月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。