映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『マイ・ブックショップ』ネタバレなしの感想。住民に邪魔されながらも開店した書店を守る女性店主を描く

投稿日:

■評価:★★★☆☆3.5

「本を愛する者と、本に無関心な者との戦い」

【映画】マイ・ブックショップのネタバレなしのレビュー、批評、評価

ネットが普及して情報化社会となった今、知識や情報を得る手段として新聞や本の存在感が薄くなってきている。
それでも私は死ぬまで本は読み続ける。
無料で見ることができ、誰にでも発信できるネットに対して、本は金銭が発生する以上、作者や出版社には一定の責任が要求される。そのため、何らかのエビデンスに基づいて書かれたりすることが多い。
信頼値の高さを基準として、私は本を手に取るということだ。(小説は情報ではなく、娯楽性としての水準の高さ)

本作に登場するレイ・ブラッドベリの小説『華氏451度』。
本が禁止となった世界で、見つけた本を焼く仕事をする主人公のSFだ。
私は未読だが、テーマはたぶんこうだろう。
「本を読まないとバカになるぞ!」

バカは言い過ぎかもしれないが、ようは機会損失ということ。
ただ本はあまり読まないと明言している著名人もいる。
元ライブドアの社長であるホリエモンは本をあまり読まず、ネットと自分が見聞きした情報を積極的に取り入れたりしている。
逆にメンタリストDaigoなんかは年間3000冊を読む本の虫だ。
『ダークナイト』『インターステラー』のクリストファー・ノーラン監督も本が好きで、ネットはほとんど見ないという。

まあいろんな生き方があるってことだろう。正解はない。自分にとって幸せになれるための選択を取ったらいい。
本作は華氏451度と同じテーマを現実劇で描いている。

1959年、イギリスの海沿いの田舎町。戦争で夫を亡くした女性・フローレンスは彼との夢であった書店を開業した。しかし町の保守的な住民は彼女の開業に対して好意的ではなかった。ある日、町の少年がフローレンスに1通の手紙を届ける。送り主はブランディッシュという名の男性で、「おすすめの本を少年に持たせてほしい」と手紙には書かれていた。彼は40年以上も自宅に引きこもっており、彼女は海で彼を見掛けたりするものの、会話したことは一度もなかった。そんな中、フローレンスは書店経営を少しずつ軌道に乗せていくが……。

舞台が田舎町のため、自然描写が多くて映像を眺めているだけでほっこりする。
海外の田舎町を舞台にした映画はファンタジー感があって良い。生えている植物や海の様子も、日本と微妙に異なっていたりする。
最近流行りの八十年代のホラーや青春映画なんかも雰囲気があるのでたまらない。

登場人物は中年ばかり。
映像のコントラストも落ち着いていて、だいぶ大人っぽい映画の印象だ。
いざブックショップが開かれると少年少女たちが手伝いに来るので、思っていたより堅苦しくなく、カジュアルな雰囲気となっている。
女性店主とバイトとして雇われる少女とのコンビは絵的にも面白い。(なぜか物語は中年と少女の組み合わせが多い)

少女はやたらクールで愛想の悪い子なのだが、大人の店主は店を手伝ってくれることに対していつも感謝を示す。
すると少女の氷のように冷たい人間性が少しずつ溶けて柔らかくなり、二人の距離が縮まっていく。そんな様子が観ていて微笑ましいのだ。
あんまり大人の女性と少女のコンビって見掛けないので鮮度もあっていい。

あと自分の店を持つっていうのは、誰もが一度は夢見るであろうことなので、共感指数も高い。
誰だって、自分の好きなことだけをしてお金を稼いで生活したいものだ。

そんな彼女のハードルは、難癖つけて書店を閉鎖に追い込もうとする町の権力者であるおばさん。
実に子供っぽいし、人の夢を壊しにかかるなんて最低きわまりない。
世の中には変わろうとする人と、足を引っ張る人がいる。
この映画を観ていると、いかに後者が醜く愚かであることがよく分かる。

おばさん以外にも、フローレンスはこの町の新参者ということもあって、町民たちから心を閉ざされている。
田舎特有の閉鎖的な空気感は日本のみならず、海外も同じということだ。

この映画は魅力的なキャラクターが多く、中でもブランディッシュは印象に強く残る。
豪邸に一人で住む男で、40年以上引きこもっていて町の誰とも交流をしない。
彼は本が好きで、フローレンスから本を送ってもらうことを楽しみにしている。
彼が最も気に入った本がレイ・ブラッドベリの『華氏451度』だ。

そういえば、はじめてブランディッシュに会いに行くとき、フローレンスは普段は無地の服を着ることが多いのに、この時に限っては花柄なんてめかしこむから可愛い。
さらっとこういった多面性を見せてくるのは自然で良い。
女性も、男がいないと生きていけない生き物なのだ。もちろん逆も然り。(私も)

この映画の良かったのが、本を通じて人と人が繋がっていくところだ。
逆に本に無関心な人は、主人公の敵となる。

実際もそうであることを改めて思い知らされる。
人の繋がりは、自分が大切にしているものを共有できる人と始まったりすることが多い。
映画やゲーム、スポーツなど。
その共有できるものを題材にして少しずつコミュニケーションを重ねる中で、それ以外の深い感情のやり取りに発展する人が親友になったり、恋人になったりする。

あなたが派手な展開が控えめな落ち着いた大人のヒューマンドラマが好きであればおすすめだ。
こういう映画は雨の日のようなしっとりとした気分の時に観たくなる。

余談だが、何だか観終わったあとは小説を読みたくなってしまった。
最近はシナリオの勉強のために映画ばかり読んでいたが、少しずつまた小説を読み出したいところ。

あなたがもし小説を読まないのであれば手に取ってもらいたい。
小説初心者であれば読みやすくて面白い本もあるので、ツイッター等で気楽に相談してくれたら返信します。

マイ・ブックショップの作品情報

■監督:イザベル・コイシェ
■出演者:エミリー・モーティマー パトリシア・クラークソン ビル・ナイ
■公式サイト:こちら
■Wikipedia:マイ・ブックショップ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):56%
AUDIENCE SCORE(観客):49%

マイ・ブックショップを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

マイ・ブックショップと関連性の高いおすすめ映画

マイ・ブックショップの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『万引き家族』★★★★☆4
日雇い労働者の柴田治、クリーニング屋でパートをしている妻信代、息子の翔太、信代の妹でJK見学店(風俗の一歩手前のような店)で働く亜紀、治の母の初枝ら五人は、東京下町の古家に住んでいた。表向きは初枝一人が住んでいることになっており、五人は彼女の年金と、夫婦のわずかな給料、足りなくなったらスーパー等で万引きをし、ぎりぎりの生活を送りながらも、笑顔の絶えない日々を過ごしていた。ある日、治と翔太は万引きの帰りにマンションのバルコニーで、震えている幼女を見つけ、見かねて連れて帰るが……。

地味な物語に見えるが、思った以上に大胆なストーリー展開を見せてくれる。
世界三大国際映画祭の一つ、カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルムドール賞を受賞するに値するまごうなき傑作。
ぜひ、テーマである「繋がり」について、この映画を観たあとにじっくりと考えてもらいたい。

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
ビデオパス:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

-⑨組織のなかで

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。