映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『ジョーカー』ネタバレなしの感想。触るな危険。真に受けやすい人は見ない方がいい

投稿日:10月 9, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「弱者が権力に立ち向かう」

【映画】ジョーカーのネタバレなしのレビュー、批評、評価

私はこれまで、貧困層は生まれてしまってもいいと思っていた。
ただし条件が1つあって、誰でも富裕層になれるチャンスが与えられているのであれば、に限る。

私はてっきり日本やアメリカのような先進国レベルの貧困層は、誰でも富裕層になるチャンスはあると思っていた。YOUTUBE等のメディアで個人が自由に発信できるからだ。
が、この映画を見ると、ちょっとその意識も変わりつつある。
もし自分が主人公・アーサーと同じような悲惨な境遇に置かれていたら、希望を信じ続けられただろうか。

財政難に陥ったゴッサムシティ。その街の住人の大道芸人・アーサーは病気がちの母を介護しながらも、自身も緊張すると発作的に笑い出してしまう精神疾患を持っていた。ある日、アーサーは大道芸人の派遣会社の同僚から護身用にと銃を渡される。それを小児病棟での仕事中に落としてしまい、会社をクビになる。その帰り、電車の中で笑いが止まらないアーサーを同乗していたエリートサラリーマンたちが暴行を加える。衝動的にアーサーは彼らを射殺してしまい、彼はその場から逃げ出す。後日、この事件は貧困層から富裕層への復讐として社会的に認知されてしまい……。

言うまでもなくジョーカーはアメコミ『バットマン』の人気悪役キャラであり、本作はジョーカー誕生譚である。
早めに伝えておくが、特にバットマンシリーズを予習しなくても問題ない。
事前に持っておくべき知識が要求されることがないので、一本の映画として成立している。
何ならこの映画の後にバットマンシリーズの1つである『ダークナイト』を観たら、まるで続編のように楽しめると思う。
ダークナイトはジョーカーとの対立がメインとなる話だ。

正直この映画、中盤まで「これ面白いか?」と思いながら観ていたんが、終盤に差しかかるあたりからアーサーがジョーカーへと変容していく流れにはゾクゾクしてしまった。
なかなか凄い物語だ。
何が凄いって、キャラクターの変化のジャンプ力がとてつもない。しかもその劇的な変化が世界そのものに影響を与えてしまっている。このダイナミックさはエンタメとして実に強烈だ。
ただし、危険な映画でもあるので後述したい。

アーサーはTHE・社会的弱者だ。
緊張したときに笑いが止まらなくなってしまう病気なんてあるのか、って感じだがなかなか辛いものがある。
「自分がこの病にかかってしまったら」と観客は思わず考えずにはいられまい。
一気に彼に同情してしまった。

が、このアーサーのキャラ造形には疑問を覚える。
彼の目的がいまいち不明瞭なため、いくら不遇を強いられようと、同情はするが共感には至らなかった。
この辺りが中盤まで、この映画の面白さに首をかしげてしまった一番の理由である。

一応アーサーはスタンドアップコメディアンを目指しているみたいだが、その目的は一体何なのか。
金持ちになって、母を楽にさせたいのか?
あるいは芸人として成功してみんなに認められたいのか?
彼は人生を諦めているのか、それとも希望を持っているのかが伝わって来ないので、ただただ不条理に囲まれている可哀想な人、といった印象止まりである。
生きる目的はもちろん、善意ももっと分かりやすく描いていい。
子供を笑かしたり、親の介護したりしているが、どうも彼を善人といった印象を持てずにいた。

そんなアーサーは仕事帰りに、富裕層のエリートサラリーマンに絡まれてちょっとしたトラブルに巻き込まれる。
この出来事がアーサーをジョーカーへと変容させるきっかけとなり、終盤ではもはや以前の彼の面影すらない。
まるで世界がひっくり返ったかのような変化の遂げ方は凄まじいし、最後まで観るとなぜこの映画がここまで世間を熱狂させたり、「劇薬」などといった強烈なワードが並べ立てられるのか納得できる。
微妙なキャラ造形に対して、シナリオは一級の出来映えだ。
アーサーが自身が望んでいない方に転がっていくといったところもむちゃくちゃ面白い。

言ってしまえば、N党立花とマツコ・デラックスの対立構造をハードにしたような映画だ。
立花はいわば弱者の代表みたいなもの。
そんな彼がNHKという既得権益層の強者に立ち向かうといった対立構造に世間は熱狂し、彼を持ち上げて議員として当選させてしまった。
当初は色物扱いだったのにもかかわらず。

そして『TVタレント』であるマツコ・デラックスは、TVで立花を批判した。
マツコはすでにTVというメディアにどっぷり浸かった強者としての属性を持っている。
世間は強者より、弱者の味方をする性質を持っていることを理解している立花は、ここぞとばかりにマツコに噛みつくことで世間の話題をかき集めた。
映画でも『TVタレント』はポイントだ。

立花自身は悪意もなさそうなので自由にやってもらって構わないが、この映画は悪を肯定するような方向性となっているので、真に受けやすい精神的に未成熟な人間が観たら危険だ。
あくまでフィクションの物語として一線置きたいところ。
こういう映画が熱狂してしまう社会は在り方として正常なのだろうか。

しかし、最後のアーサーの扱われ方は印象的だ。
一瞬のシーンだが、アーサーの変化を上手く表現していて素晴らしい。
めちゃくちゃ面白いのが罪深い映画である。

ジョーカーの作品情報

■監督:トッド・フィリップス
■出演者:ホアキン・フェニックス ロバート・デ・ニーロ
■公式サイト:こちら
■Wikipedia:ジョーカー
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):69%
AUDIENCE SCORE(観客):91%

ジョーカーを見れる配信サイト

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Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年10月現在

ジョーカーと関連性の高いおすすめ映画

ジョーカーの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『翔んで埼玉』★★★★☆4
夏のある日、埼玉県熊谷市に住む菅原家一家は、娘のマナミの結納のために父の運転する車で東京へ向かっていた。埼玉への郷土愛が一切ないマナミは、結婚を機に東京都民になる夢がかなうことにはしゃいでいた。すると、ラジオでDJが埼玉にまつわる都市伝説を語りだす。昔、埼玉県民は東京都民からひどい迫害を受けており、通行手形なしで東京を出入りすることを禁じられていた。東京の名門校・白鵬堂学院では都知事の息子・壇ノ浦百美が埼玉を底辺とするヒエラルキーの頂点に君臨しており、そこにアメリカ帰りの転校生で美少年・麻実麗がやってくる。なぜか、差別を受けるZ組に所属する埼玉県民生徒を庇う麗に百美は不快感を覚え……。

東京や横浜の人間にバカにされる埼玉県民が復讐する話。
ジョーカーを見て暗い気持ちになったら、口直しにこの映画を見よう。
とはいえ、翔んで埼玉もひどく真剣な内容だ。埼玉県民が自身のプライドをかけ、命がけで権力者に挑む胸熱映画だ。

U-NEXT:○(有料)
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Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
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※2019年10月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。