映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『うた魂♪』ネタバレなしの感想。自分の歌う姿がブサイクで歌えなくなってしまった少女の青春譚

投稿日:

■評価:★★☆☆☆2.5

「世界は歌で回っている」

【映画】うた魂♪のネタバレなしのレビュー、批評、評価

以前ハンドボールをやっている女性と会話をする機会があった。
私は詳しくないのだが、話を聞いているとかなり攻撃的なスポーツらしく「私が本気でやってる姿を絶対に好きな人や彼氏には見せられない」とのことだ。
確かに普段の自分とはあまりに違う獰猛な姿を見せたら100年の恋も冷められてしまうかもしれない。

これと似たようなことで見た目は可愛いのに、走り方がやたらとブサイクな女の子って学生時代に一人は見掛けたりした。
本作はそんなところから着想を得られた映画となっている。

七浜高校女子合唱部のかすみは歌が大好きな女子高生。ある日、かすみはひそかに想いを寄せている生徒会長・牧村純一から写真を撮りたいと頼まれ、てっきり自分に好意を持っているものだと思って有頂天になる。合唱コンクールの北海道予選壮行会で全力で歌うかすみを彼は撮影する。後日出来上がった写真を見ると、自分の歌っている姿がイメージとは違ってブサイクに見えてしまい、落ち込んでしまう。自信を無くした彼女は、顧問の先生に退部を申し入れることに。

結論から言うが、最後まで観るのが大変な映画だった。
狙いすぎな演出があまり多くて、映画ではなくTVの安っぽい再現ドラマだ。
分かりやすさを重視しすぎて、自然さが一切感じられないのだ。

TVは無料で誰でも見られるため、分かりやすさを求められるメディアだ。それも過剰なほどに。
接客業をやった人間なら理解できるだろうが、それだけ世間には自分が思っている以上にアホな人がいっぱいいる。(私もその一人)
だから、老若男女誰でもわかるような作りにして最大公約数を狙いにいく。
結果的にTVドラマは、演技もオーバーにして感情を表現するようになった。

それはコメディ演出でも顕著に現れる。
ボケに対してつっこむような漫才形式の演出はリアルじゃない。これはあくまで「お笑い」だ。
「お笑い」は当人たちのユーモアなやり取りを第三者に見せて楽しませるといった特殊なケースなので、ツッコミを入れることでボケの面白さを分かりやすく説明している。
TVドラマのコメディ演出でもツッコミが頻繁に見られる。

だが、映画は金を払って客が能動的に見に来るメディアだ。
TVドラマなどでは満足できないようなリアルさを求められるものだと私は思っている。(コンセプトにもよる)
なので映画のコメディ演出は、基本シュール系でいい。

シュールは日常に則した笑いだ。
本来、日常では人の天然ボケに対していちいち突っ込んだりしない。
相手がすぐに噛む人だったら「この人はこういう人だよな」って感じでスルーしたり、あるいは相手との距離がそんなに近くないケースだと心の中でつっこんだりする。「あ、今この人めっちゃ噛んだ。しかも噛んだことをなかったようにして誤魔化してやがる」などと。
これが日常だ。

TVドラマを批判しているのではなく、TPOをわきまえてほしい。
アイドル映画のようなTVドラマの延長線にあるコンセプトならまだしも、普通の映画は自然な演出で作ってもらいたい。
映画というメディアでは、理解をある程度観客に委ねてもらいたい。
あとはこっちで自由に理解する。それでいい。

最近でいうと『メランコリック』のコメディ演出は素晴らしかった。
シュールな笑いがどれも面白くて劇場は笑い声で溢れていた。誇張なしで、狙った笑いの打率は10割に近かったのではないだろうか。

『翔んで埼玉』では監督から「笑いを狙わずに本気で演じるように」といった演出指示が役者陣にされており、結果的にアホみたいな内容を本気で取り組む彼らがあまりに滑稽でたくさん笑わせてもらった。

若干脱線しちゃったがこの映画、観るに耐えられない誇張演出に対して本題となる合唱部分はむちゃくちゃ良かった。

主人公のライバル校であるゴリ率いる合唱部が歌う尾崎豊の15の夜は何度でも聞きたくなるレベル。
エモーショナルに歌い上げていて思わず見入ったし、何より選曲が新鮮だ。
音楽の教科書に乗っているような曲ではなく、聞き慣れたJ-POPを歌ってくれると何だかテンションが上がる。
それに合唱は大人数で行われるので、スペクタクル感があって良い。

私は毎年8月末に行われる高円寺の阿波踊りを何度か観に行ったことがあるのだが、百人規模の大人数で踊る姿には思わず引き込まれてしまう。
観るたび、大人数でリズムに合わせること自体がエンターテイメントになりえることを実感させられる。
さらにそれを踊りといった、感情のこもったパフォーマンスで見せられるからたまらない。
合唱も然りで、観ているこちらの気分は自然と高揚してしまうものだ。

もっと映画を熟知した作り手が手掛けていたら、もっと世に知られた作品になったと思う。
『スイングガール』『ダンスウィズミー』の矢口監督に作り直してもらいたい。

うた魂♪の作品情報

■監督:田中誠
■出演者:夏帆 ゴリ
■Wikipedia:うた魂♪

うた魂♪を見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:○(見放題)
Netflix:-
※2019年10月現在

うた魂♪と関連性の高いおすすめ映画

うた魂♪の裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『レディ・バード』★★★★☆4
舞台は2002年、レディ・バードは田舎町サクラメントのカトリック系の高校に通う女子高生。ニューヨークの大学に進むことを望む彼女に対し、母マリオンは地元の大学への入学を求め、いつも口論となっていた。彼女はカリフォルニア大学バークレー校(アメリカの公立大学ランキング1位の実績あり)を卒業しながらもスーパーでフリーターをしている兄ミゲル(養子)、うつ病でリストラ寸前の父、家庭を支える精神科の勤務医として働く母と、貧乏な生活をしていた。ある日、レディ・バードはシスターの勧めで参加したミュージカルのオーディションで、ダニーという生徒に一目惚れし……。

うた魂♪とは正反対の、作り物感が一切ないリアルな演出が冴えわたる。
実は細かい裏設定がたくさんあって、主人公の不自然にも赤い髪や自ら名乗るレディバードという奇妙な名前などにはすべて理由がある。観終わったあとに調べてみると面白い。
この手の精神的に未熟な女子が恋愛やら親やらに翻弄される青春映画って邦画にはあまりないので、もっと作ってほしいところ。

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・見放題)○(字幕・見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。