映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑤人生の節目

映画『心が叫びたがってるんだ』ネタバレなしの感想。物足りない理由

投稿日:10月 12, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「子供の頃のトラウマで話せなくなった少女の青春譚」

【映画】心が叫びたがってるんだのネタバレなしのレビュー、批評、評価

社会現象にもなったTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下あの花)』は長井龍雪・岡田麿里・田中将賀の3人によるアニメーション制作チーム「超平和バスターズ」のオリジナル脚本作品だ。
この珍妙な名前は劇中に出てきたキャラたちのチーム名がそのまま用いられている。

私も当時アニメを見てそこそこ楽しめた。
だが、若干の違和感を覚えていて、世間ほどのめり込むことはできなかった。
超平和バスターズの2作目となるのが『心が叫びたがってるんだ』である。

本作も世間では大ヒットしていて実写映画も制作されている。
あの花にそこまで乗れていなかったので敬遠気味ではあったのだが、超平和バスターズの最新作『空の青さを知る人よ』が昨日(2019/10/11)から劇場公開されるとのことで、思い切って鑑賞してみた。

小学生の成瀬順はしゃべることが大好きな活発な女の子。ある日、家の近くの山の上に建っている憧れのお城(ラブホテル)から父親と見知らぬ女性が車で出てくることを目撃する。彼女は父とその女性が王子様とお姫様と勘違いして、母に話してしまう。そのことがきっかけで両親の離婚を招いてしまう。家を出る父からは「ぜんぶお前のせいだ」と言われ、その日から順は人と話すと腹痛が起きるようになってしまった。高校2年生になり、未だ話すことのできない順は、「地域ふれあい交流会(文化祭みたいなもの)」実行委員に抜擢され、ミュージカルで主演を演じることになってしまい……。

第一印象は『カラフル』だ。
同名タイトルの原作小説がアニメ映画化されたものを鑑賞していて、大いに心を揺さぶられた。
母親の不倫などに端を発してスレてしまう中学生男子を描いている。

さらに話せない女の子というコンセプトは『聲の形』と『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を想起させる。
聲の形は聾唖者である小学生の女の子がいじめられてしまう話。

吃音で話せないが歌は歌える女子高生がクラスメイトからバンドに誘われるのが志乃ちゃん~だ。

この2作は素晴らしい出来栄えだったのでちょっとは期待して観たのだが、結論から言うと遠く及ばない結果となった。

構造は決して嫌いじゃない。
私が一番良いと思ったのが、弱者を御輿に乗せて担ぐといった構図だ。
もともとミュージカルに乗り気でなかったクラスメイトたちが、話せない彼女が主演をやるってことで奮い立つ=強制的に成長を遂げるのだ。
成長せざるをえない構図が良いのと、シンプルに成長を遂げる人数が多いので、観ているこっちも自然とテンションが上がってしまう。
観客も自然と彼らを応援したくなる。

実行員に選ばれた4人にはそれぞれ葛藤を抱えており、ミュージカルを成功させることが、それらの葛藤の解決にもつながる。
もちろん、道中では一筋縄ではいかない問題が発生し、ミュージカルの開催すらもあやうくなる。
果たして彼らは試練を乗り越えられるのか。

今の時代には珍しく、テンポがだいぶゆったりとしている。
悪いわけではないんだが、感情があまり動かされない時間が長いのはちょっと気になる。
もう少しシナリオに起伏があった方が物語に入り込みやすい。

一番気になったのは、話せないモノの名作である『聲の形』と『志乃ちゃん~』には遠く及ばない点だ。
理由は明白で、みんな主人公の順に優しすぎる。

声が出ないという障害を抱えた人には同情が寄せられ、周りは優しくしがちだ。
あるいは『聲の形』の序盤のようにマイノリティであるがゆえの迫害を受ける。
このような極端な対応を取られるのがベーシックな描き方だ。

前述の二作はさらに一歩踏み込んで、彼女らを普通の人間扱いをして現実の厳しさを突きつけるキャラクターが登場する。
このリアリティが素晴らしいのだ。
心が折れそうになりながらも、果敢に立ち向かおうとする彼女らを見ているとイヤでも目頭が熱くなってしまう。まるで自分の子供を見守るかのように手に汗を握りながら応援したくなる。

だが本作は劇中で城というワードが頻出するが、主人公の順は悪い意味でお姫様状態。
みんなが彼女を甘やかす。(厳密には厳しい扱いをするキャラも出てくるが、八つ当たり的な浅いレベルのもの。順の本質的な問題を指摘するような彼女にとってプラスに結びつく厳しさではない)

結局のところ、現実はそんなに甘くない。
甘くないからこそ、「話せない」というハードな葛藤を抱える彼女らを甘くしても仕方ない。
甘やかされてそのまま老人となって天に召されるのか?そういった末路は本当に幸せか?

現実を教えなければいけない。現実的な痛みを経験しなければいけない。
そういった痛みを乗り越えようと必死になるキャラクターを見ると、観客はリアリティーを感じて共感する。
なぜなら観客は厳しい現実を味わって今が在る。

『あの花~』でも思ったことだが、物語をキレイに作りすぎている。
現実よりもキレイで優しい物語を見せつけられたところで、観客の心は揺さぶられない。

順の心をもっとえぐってほしい。
群像劇としての見せ方は良かったが、「話せない」といった特殊設定を扱いきれていない印象だ。

心が叫びたがってるんだの作品情報

■監督:長井龍雪
■出演者:水瀬いのり 内山昂輝 雨宮天 細谷佳正 藤原啓治
■Wikipedia:心が叫びたがってるんだ
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):-
AUDIENCE SCORE(観客):53%

心が叫びたがってるんだを見れる配信サイト

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

心が叫びたがってるんだと関連性の高いおすすめ映画

心が叫びたがってるんだの裏ジャンルである【人生の節目】に分類される映画。

『ももへの手紙』★★★★☆4
事故で父を亡くしてしまったももは、母親のいく子が昔住んでいた瀬戸内海の「汐島」に移住することに。ももは、父が亡くなる直前にちょっとしたことで喧嘩してしまい、今でも心残りとなっている。さらに父は「ももへ」とだけ書かれた手紙を残していた。ある日、島での生活に馴れずにいたももの前に3匹の妖怪が現れ、家に住みついてしまう。

実力派のアニメーターが多く参加していて、アニメーションとしてのクオリティが高いのが特徴。
妖怪たちとの交流といったユニークなアイディアが物語を推進していくところも見所の一つ。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年10月現在

-⑤人生の節目

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。