映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『荒野にて』ネタバレなしの感想。孤独な少年が馬を連れて、居場所のわからない叔母を探す旅に出る

投稿日:

■評価:★★★☆☆3

「家族を求める旅」

【映画】荒野にてのネタバレなしのレビュー、批評、評価

先日「人にすすめるほどの名作じゃないけど、自分が好きな映画は?」といった内容のツイートを見かけて思わず考えてしまった。
いろいろとあるんだけど、私が真っ先に思い浮かんだのが『HAZARD』だ。

園子温監督の初期作で、大学生が日常に退屈さを覚えて突如ニューヨークに旅立つ話。
大して中身のある物語じゃないし、何なら最後は中二病全開で、監督も見返すの恥ずかしいんじゃないか?ってくらいの稚拙さがある。
でもエネルギッシュ。
ただただ勢いや感情のみで突き動かされるキャラたちがどこか印象に残るのだ。

『荒野にて』も人にとってはそういう映画になりそうな匂いがする。
全体のトーンが低くて、キャラクターの感情や行動原理が読みづらい。
いわゆるアート作品だ。
HAZARDも実は『荒野にて』も共通点があり、二つとも若さゆえの勢いから旅がスタートしている。

15才のチャーリーは父のレイとオレゴン州ポートランドのデルタパークで二人暮らしをしていた。ある日、彼は競馬場に馬を出走させるために訪れていた馬主・デルと知り合い、厩舎で馬の世話をする仕事をさせてもらうことに。彼はそこにいた大人しい馬ピートを可愛がり、仲を深めていった。その後、父は手を出した女の亭主に襲撃され、その時に負った傷がもとで敗血症となってこの世を去ってしまう。チャーリーの身寄りは昔に一緒に暮らしていた叔母のマージしかいなかったが、彼女の住所がわからない。彼女のところに行かなければ養護施設に入れられてしまう。その頃、デルは試合に勝てないピートをメキシコに売って処分しようとしていた。チャーリーは意を決してピートを連れ出して、叔母のいるワイオミング州を目指す。

チャーリーは日中からジョギングしている。
年齢が15才にも関わらず。
どうやら学校には通っていないようだ。
食べ物も質素で家も老朽化が激しい。明らかに貧困である。

彼は馬主のデルという男と知り合って、馬の面倒を見るバイトをするようになる。
そこでピートという名前の大人しい馬を気に入る。
だがデルは冷徹で、馬はレースに負けたら売る(=屠殺される)と言う。
この辺りでチャーリーとデルの馬に対する価値観の違いが明瞭化する。

ちょっと気になったのは二人は食事に行った際、チャーリーは豚のようにメシにがっつくが、デルはマナーがしっかりしているところ。
どうやら親の教育にも問題がありそう。
このように説明がほぼないので、字幕を見逃す余地がない。
観やすい映画ではあるが、彼の感情や心理状態が掴みづらく、難解な内容となっている。

そのあと父が天に召され、チャーリーは養護施設行きを逃れるため、試合に負けて売られる運命のピートを連れて叔母に会いに行く旅に出る。
彼が住むオレゴン州から叔母のいるワイオミング州までは約860マイル=約1390キロ。
東京から福岡が1116キロなので、なかなか思いきった旅である。大して金を持っていないにも関わらず。

彼は自分の家族を探していたように思える。
もっと本質的に言うと、自分に愛情を注いでくれる存在を求める旅。

だからこそ、その反動としてピートを見捨てられなかった。
これは『存在のない子供たち』の主人公の少年・ゼインと被る。

ゼインはネグレクトに遭い、家から逃げ出すのだが、行き着いた先である母子と出会う。
しかしなぜかすぐに母はいなくなって子供と共に取り残されてしまう。
ゼインは自分も貧困でくたばりそうなのに、自分よりも他人の子供を生かそうとご飯を食べさせたりする。
この姿は印象的で、まるで愛情を受けてこなかった自分のような寂しい思いをさせないために、子供に愛を注いでるように見えたのだ。
チャーリーもゼインと似たような気持ちでピートを生かそうとしたのではないだろうか。

道中ではハートフルな出会いが多いのは嬉しい。
人間関係のトラブルもあるのだが、基本、出会う人は困っている彼を助けてくれる。そのおかげで何とかギリギリ旅を続けられるのだ。
なんていうか、ロードムービーはハートフルな展開を求めてしまう。

一人で旅をするのは何か理由があることが多い。
失恋であったり、自分が何者かを探すためであったりなど。
だからこそ、そんな旅の道中で触れる人間の温もりは、日ごろ安全な場所に身を置いている時よりも何倍も何十倍も暖かく感じるもの。
今やるべきことがあって、それに集中してる人ってわざわざ一人旅をしようとは思わない。

こんな感じで肯定的な意見を並べてはいるが、正直この映画はそんなに面白いとは思えなかった。
残酷なほどに広い荒野を馬とともに歩く姿は絵になるが、あまりに意図が掴めない映画だ。
結局、私は彼の行動には理解できなかったのでハマりきれなかった。

どう考えてもあんなでっかい馬を連れ出して旅をするなんて無謀すぎる。
デルから盗み出した車のガソリンも限度がある。
もしガソリンが尽きたところで、彼は馬に乗れるわけではない。
ピートのエサも用意しなければ死んでしまうことになる。
それにもし叔母の家に辿り着いたとして、ピートの面倒まで見られるのか、っていう疑問も湧いてくる。

結局のところ、ドラマを作るためにハードな選択を取っているようにしか見えず、あまりリアルな展開とは思えない。
ピートを生かしたい気持ちはわかる。自分が助けなかったら命は奪われてしまう。が、どう考えても自分一人で伯母の家に行くのが賢明判断だ。
もし仮にチャーリーに馬術が備わっていて、ピートに乗って叔母の家に行くというのなら別だが。
キャラクターがあまりに聖人君主なような行動を取ると、途端にリアルに感じられなくなってしまうものだ。

ただ、もしかしたら自分がチャーリーと同じくらいの年齢なら共感していたのかもしれない。
私くらいの年齢になると上記のような行動をリアルとするが、15才の少年だと「人に助けられるのが当たり前、人を助けてもらう前提で行動するのがリアル」と考えるのが自然かもしれない。
なのでこの年代の人が観た感想をちょっと聞いてみたいところではある。

荒野にての作品情報

■監督:アンドリュー・ヘイ
■出演者:チャーリー・プラマー トラヴィス・フィメル クロエ・セヴィニー スティーヴ・ブシェミ
■Wikipedia:荒野にて
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):91%
AUDIENCE SCORE(観客):74%

荒野にてを見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年10月現在

荒野にてと関連性の高いおすすめ映画

荒野にての裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『おっぱいバレー』★★★☆☆3.5
新任教師の寺嶋美香子は臨時教師として三ケ崎中学校に赴任することになる。しかし彼女は、一つ前に勤めていた学校である事件を起こしてしまい、生徒からの信頼を失ってしまって自信をなくしてした。美香子は男子バレー部の顧問となると、部員たちはやる気がなく、日ごろからスケベな妄想でいっぱいで、周囲からもバカにされていた。美香子は彼らを鼓舞させるため「あなた達が頑張ってくれるなら先生なんでもする」と宣言すると、彼らは「試合に勝ったらおっぱい見せて」と言われて、そのまま強引に約束させられてしまうことに。

少年たちのモチベーションはおっぱいだ。
男はおっぱいでここまで強くなる、ということが学べる高尚な映画である。
『荒野にて』の主人公はめちゃくちゃ深刻に旅をしていたが、この映画の部員たちのようにおっぱいを原動力とした方が人生はバラ色だ。

U-NEXT:-
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年10月現在

-②金の羊毛

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。