映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

⑨組織のなかで

映画『ガリーボーイ』ネタバレなしの感想。スラム街に生まれた青年がラップで人生を変えていく

投稿日:10月 23, 2019 更新日:

■評価:★★★★☆4

「生まれがすべての格差社会に立ち向かう」

【映画】ガリーボーイのネタバレなしのレビュー、批評、評価

どれだけ科学が発展しようとも、弱者が努力で多くの障壁を乗り越えるサクセスストーリーはこれからも作られ続けるんだろうなあと思う。
勇気や希望を貰えて、明日を強く生きる活力となってくれる。私も好きなジャンルの一つだ。

史実がベースとなっている物語が多いのも、このジャンルの特徴。
フィクションに比べると、説得力が段違いなので結果的に得られるカタルシスが強くなるのだろう。
多少ドラマ性が弱くても「これ実話なんだよなあ」と考えるだけで+補正がかかって、そこそこの満足度は得られてしまうのだから面白い。
そう考えると史実って言葉はある意味、物語の演出としての役割も担っている。

とくに本作は『8 Mile』を彷彿とさせる内容だ。
アメリカを代表とするラッパー・エミネムの半自伝映画で、貧困に苦しむ白人青年がラップで成功を目指す物語となっている。

私の友人にエミネムのファンがいたので、DVDが発売された当時、すぐに鑑賞した。
ストーリーよりも音楽のが強烈な印象に残してくる映画だ。
私はべつにHIP HOP好きではないのだが、それでもこの「Lose yourself」はカッコ良くて死ぬほどリピートして聴き倒したくらいに当時はハマったもの。

このジャンルは名作が多いが、私が特におすすめしたいのは『ビリギャル』だ。
進学校に入った女の子が遊びまくってギャルになって結果的に成績が学年ビリになってしまい、いろいろあって慶應を目指す話。


これほど感動した映画もあまりないのだが、理由はいろいろある。
シナリオが素晴らしくて家族愛をテーマにしているところがツボだったのが一番だが、他に挙げるとしたら私がこの映画を舐めていたから。
私と同じ理由で、この映画に想定外の大量の涙を流させられた人も多いのではないだろうか。
あなたがもしビリギャルを舐めているのであれば、騙されたと思って試してもらいたい。騙しちゃったらごめんなさい。(アマゾンプライムで無料で見られるので、画像にリンクを貼っておきました)

前置きが長くなってしまったが、『ガリーボーイ』はNaezyというインドのラッパーをモデルとした伝記映画となっている。

青年・ムラドはインドの都市・ムンバイのスラム街で家族と暮らしていた。両親は今の生活から抜け出すため、頑張って稼いで彼を大学に通わせていた。しかしムラドは生まれが絶対であるインド社会に不満を抱えており、悪友とつるんだり、隠れて身分の違う裕福な暮らしをする医大生・サフィナと交際していた。ある日、大学構内でラップを披露していたMCシェールに魅了され、ラムド自身も歌詞を書いてラップするようになり、徐々にのめり込んでいく。自分の手で現実を変えるため、ラップのコンテストに参加して優勝を目指す。

主役のムラドを演じたランヴィール・シンのスター性には目を見張るものがある。
彫りが深く、トム・クルーズ似の迫力のある顔立ちで、やたら画面映えしていた。
あまりに華があるので、スラム街のおんぼろのバラックにいるのが浮いちゃうくらいの異彩を放っている。
この映画で女性ファンが増えるんじゃないだろうか。そのくらい男の私から見ても強烈なイケメンだった。(ゲイじゃないです)

彼が扮するムラドは生まれが絶対であるインド社会に反抗心を持っていて、大学に通いながらも悪友とつるんだり、付き合う彼女・サフィナは身分違いの裕福な女の子だったりする。

このサフィナが実に魅力的な子だ。
見た目は可憐で可愛らしい女の子なのに、ムラドに近づいてきた女がいるとわかると女の職場に乗り込んでボッコボコにしてしまう。
ただのサイコ野郎である。
ムラドも引いてて「暴力はやめてくれ」なんて言うのが何だか滑稽で良い。
でもリアルでは絶対に仲良くなりたくない。怖い。

だが彼女のこの攻撃的な性格には原因がある。
サフィナの両親が彼女にひどい抑圧を押しつけており、化粧はさせないし、パーティーや映画館に遊びに行くことは許さない。
当然、男の子と遊ぶことも禁止している。
彼女も彼女で、富裕層ならではの苦しみと戦っているのだ。

結局のところ、こういう偏執的な教育をする親が生まれる背景には社会の責任もあり、ムラドとサフィナが身分の違いを超えて惹かれ合うのは、何らかのシンパシーから来るものもあるのだろう。
この辺りは脚本の凄みを感じた。

ただ相手がイケメンだからとか、美人だからだけではなく、魂レベルで惹かれあっているのだ。
そして観る前は主人公の恋人の内面がここまで深掘りされるとは思っていなかったので、この映画の一番意外に感じたポイントだ。内容も申し分ない。
そういった意味でも女性にも受け入れやすい映画になっている。
ぜひあなたが女性なら、この映画を鑑賞リストに追加してもらいたい。思った以上に共感することは間違いない。

ムラドは反抗心を示しながらも基本的には純情ボーイだ。
彼の悪友は薬物の製造していたりするが、子供にも手伝わせたりしている。
そんな彼に対して「子供は巻き込むな!」と叱って本気のケンカに発展したりする。

仕事も潤沢にあるわけではないし、薬物を売ったりしないと子供たちを食わせることができないので、彼が悪の道に走ってしまうのも仕方ないのだが。貧困・スラムあるあるだ。

そんな純情ボーイのムラドはラップと出会ってのめり込む。
コンテストに参加することになるのだが、当然こんな環境なので多くの困難が彼の道を阻む。

そんなムラドは困難を突破するために、とある行動を取ってしまう。
このシーンを観た観客は胸を締めつけられる。
何が辛いって、彼には何の落ち度もないから。
彼はただ誠実に好きなこと、つまり音楽を真剣に取り組んでいるだけなのに理不尽の暴力を振るわれまくる。こういった不遇があまりに可哀想で、同情してしまった。

あと言い忘れてはいけないのがキャラクターについて。
ストーリーライン自体はシンプルだが、魅力的なキャラクターが彩りに溢れていて楽しませてくれた。
彼女は前述した通りだが、悪友はかなり印象的だ。
ネタバレになるってことはないのだが、この男については語りすぎるとこの映画の面白さを削いでしまう可能性があるので控えめにしておく。劇場に足を運んで直接確かめてもらいたい。

他にも、彼女のサフィナはお見合いすることになるのだが、相手の男が面白くてちょっと笑わせてくれる。
何てことのないシーンじゃないのだが、彼のちょっとした発言によって、結果的にサフィナのキャラクターをより立たせてくれている。
こういった豊かなキャラに囲まれているのも、ムラドの人間性が惹きつけているのかなあと何となく思ってしまう。
そのくらいムラドはいい男だ。(ゲイじゃないです)

少し前に観た『シークレット・スーパースター』はいまいちな出来映えだったが、最近観て近い内にレビューする予定の『バジュランギおじさんと、小さな迷子』といい、インド映画の底力を感じさせられる。
また話題となったインド映画があれば積極的に足を運びたいところ。
ロボット2.0でも見ようかな。

ガリーボーイの作品情報

■監督:ゾーヤー・アクタル
■出演者:ランヴィール・シン アーリヤー・バット
■公式サイト:こちら
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):95%
AUDIENCE SCORE(観客):87%

ガリーボーイを見れる配信サイト

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:-
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年10月現在

ガリーボーイと関連性の高いおすすめ映画

ガリーボーイの裏ジャンルである【組織のなかで】に分類される映画。

『日本で一番悪い奴ら』★★★★☆4
柔道の腕を買われて北海道県警の刑事となった諸星は、正義感が強くて熱い男だ。そんな真面目な彼に、先輩刑事の村井は「警察官は点数がすべて。裏社会の人間との接点を作ってS(スパイ)を作れ」とアドバイスをする。その言葉を鵜呑みにした諸星は暴力団の黒岩と密に接するようになり……。

こちらもガリーボーイと同様、史実に基づいた映画。
ガリーボーイは社会組織に抗う物語に対して、この映画は警察という組織の翻弄されてしまう男を描いている。
これが実話とは思えない衝撃映像の数々を目撃してもらいたい。

U-NEXT:○(見放題)
Hulu:○(見放題)
Amazonプライムビデオ:○(見放題)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:○(見放題)
※2019年10月現在

-⑨組織のなかで

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。