映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

②金の羊毛

映画『運び屋』ネタバレなしの感想。じいさんというキャラが魅力的で愛しい

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■評価:★★★★☆4

「90歳の老人がクスリの運び屋をする」

【映画】運び屋のネタバレなしのレビュー、批評、評価

分断された家族とどう繋がるのか、をテーマとする本作。
タイトルにもなっている『運び屋』の仕事が再び繋がれるきっかけとなるのだからユニークだ。
当然、そう簡単修復できるわけではないので人間関係は難しい。

『ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』はこれもタイトルにもなっているゲームを通じて、会話のなかった父と息子が交流していく。

慶應を目指す『ビリギャル』は、受験を通じて冷え切った父との関係に修復の兆しが見える。

こうやって考えると、【何で分断された家族と再び繋がるのか大喜利】となっているように見えてしまう。
まあでも物語作りなんてそんなもんだ。
しかしこの3作、すべて実話がベースととなっているので興味深い。

90歳のアール・ストーンはかつて園芸家として名を轟かせていた。だが、インターネット時代に取り残されてしまい、廃業してしまう。仕事ばかりに夢中になっていたせいで、ないがしろにしていた家族からも見放され、彼は孤独な日々を過ごしていた。ある日、孫の結婚パーティに参加すると、そこにいた若者から「車の運転ができるならいい仕事がある」と話を持ちかけられる。貧乏なアールが何となく請け負ったその仕事はクスリの運び屋だった。

本作は90歳のじいさんが主人公だが、シリアスドラマと思いきや、コメディ映画となっている。
思わぬキャラクター映画でビックリした。しかもこのじいさんがまた魅力的なこと。

そもそも、じいさんがのどかな景色を覗く道をまったり走ってクスリを運ぶ、という画があまりに滑稽で笑える。
『老人』という属性の先入観を利用してミスリードするミステリーは見かけたことはあるが、運び屋ってのはまた新しい。
だが、本作は実話をモチーフとしている辺りが、まさに事実は小説より奇なり、である。

このアールという名のじいさんは家を差し押さえられて追い出され、その足で向かった孫娘ジニーのパーティでは彼女の祖母、つまりアールの前妻に追い出されるところから物語は始まる。

なかなか厳しいスタートだ。
園芸家としての仕事はネット販売に対応できずに廃業してしまった。
さらに仕事に邁進するあまり、家族を省みることはなく、見放されてしまっている。
貧乏と孤独の二重苦である。

その後、一度きりという約束でチャレンジした運び屋で思わぬ大金を手にしたアールは、孫のジニーの結婚パーティーの開催する。
みんなの前で孫に感謝され、まんざらでもないアール。

前妻のメアリーや娘のアイリスには冷たくあしらわれているアールだが、ジニーだけは常に彼に対して好意的である。
だからこそ、彼女の笑顔を見てしまったら再び運び屋に手を染めてしまうのは時間の問題だ。

こんな感じで、アールはどっぷりと運び屋という悪行に染まっていく。
なのにだ。
悪いことをしているにも関わらず、アールは自由でマイペースなのが笑える。

新車に買い換えるわ、運ぶ道中で寄り道した店で地方グルメを楽しむわ、デリヘルは呼ぶわ。
運び屋を繰り返すことで莫大な金を得てしまってから、開き直ったかのように欲望に身を投じるのは笑える。
潔くてよろしい。

そして、若者であれば普通に見えるシーンも、じいさんというだけで滑稽に見える。
アールは人生を諦めてない。
まだまだ楽しむ気満々なのだ。

何をしても許されると思って迷惑をまき散らす老人って良く見かける。
アールもそんな節があり、自由奔放すぎて多くの人間を振り回したり、失礼にあたる言動をたびたび見せる。

だが、彼は人の価値観を肯定して、受け入れる能力も併せ持っている。
決して否定しないし、変にプライドが高いわけじゃないので、むやみに相手の意見に逆らったりもしない。
アールは接する人間をつぎつぎと懐柔し、惹きつけてしまう。
観客も、思わず彼の虜になってしまう。
彼には悪意というものがないのだ。

序盤、コリンという麻薬取締局の捜査官が、ある麻薬カルテルのメンバーの一人を取っ捕まえて司法取引を持ちかける。
この映画はアールとカルテルの犯罪を追う捜査官コリンの二人の視点から交互に描く形で物語は進む。
果たしてアールにはどんな未来が待ち受けるのか。

皮肉なのが、彼は運び屋をすることで家族と向き合うことができるようになる。
造園仕事に夢中になっていた頃と違って、運び屋は一瞬で大金を手に出来るため、金だけでなく時間をも潤沢に与えてくれるのだ。
この2つを手にしたアールは積極的に家族との接点を作っていく。

しかし、運び屋を続けることは逮捕される危険もある。つまり繋がろうとする家族との分断の危機をも示唆する。
アールはどのような選択を取るのか。

音楽も良かった。
アールはカントリーミュージックを聴きながら鼻歌を歌って楽しげに車を運転する。
中でもウィリー・ネルソン「On the road again」は歌詞が頭に残る。

この曲は、仲間と曲を作りながら旅をする人生を送っていきたい、といったメッセージが込められている。
なんて素晴らしい歌詞なんだろうか。思わず旅をしたくなってしまうこと必至だ。

ラストシーンは印象的。とても切ない。
色んな解釈ができるようにあのシーンを採用したんだと思うが、イーストウッドはどんなメタファーをイメージしているのだろうか。

彼の監督主演作品は悲しい結末が多い。
んが、本作は切ないながらもどこか希望や幸福感が漂っている。
私がもし、彼の立場だったら最後のあの状況は幸せだと感じる。決して後悔はない。

運び屋の作品情報

■監督:クリント・イーストウッド
■出演者:クリント・イーストウッド ブラッドリー・クーパー ダイアン・ウィースト アリソン・イーストウッド
■Wikipedia:運び屋
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):70%
AUDIENCE SCORE(観客):66%

運び屋を見れる配信サイト

U-NEXT:○(有料)
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:○(有料)
Netflix:-
※2019年11月現在

【h4】運び屋と関連性の高いおすすめ映画
運び屋の裏ジャンルである【金の羊毛】に分類される映画。

『タクシー運転手 約束は海を越えて』★★★★☆4
1980年、韓国のソウル。娘と二人暮らしのタクシー運転手のキム・マンソプは、貧乏暮らしをしていた。ある日、タクシー運転手の集まる食堂で、ある運転手が外国人を十万ウォンで光州まで往復する仕事を受けた話を耳にし、キムは横取りしようと車を走らせる。一方で、日本にいた野心の強いドイツ人記者ピーターは、仲間から韓国の光州で異変が起きていることを聞き、空港に向かう。

ハートフル俳優、ソン・ガンホ主演の社会派ドラマ。
彼のハートフルっぷりでは緩和できないほどに残酷な事件を扱っている。
タクシー運転手という一見地味に思える仕事がカッコ良く見えるようになる映画で、これも実在の人物キム・サボクを基に制作されている。

U-NEXT:-
Hulu:-
Amazonプライムビデオ:○(吹替・有料)○(字幕・有料)
TSUTAYA TV:-
Netflix:-
※2019年11月現在

-②金の羊毛

執筆者:

名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。