映画の海

約1100本の映画を鑑賞した小説家志望の男が、ネタバレなしで映画のレビューや解説を書いてます。(直近で観たものに限る。たまにアニメ・ドラマ・小説も)面白いおすすめ映画を探している人向けのブログ。

④難題に直面した平凡な奴

映画『CLIMAX クライマックス』ネタバレなしの感想。ただただ不快。変態的カルト作家の最新作

投稿日:11月 6, 2019 更新日:

■評価:★★★☆☆3

「ダンスは楽しい、アルコールは怖い」

【映画】CLIMAX クライマックスのネタバレなしのレビュー、批評、評価

本作の監督を務めるギャスパー・ノエは不快をエンターテイメントとするカルト映画を作りつづける作家の一人。
同じ属性でいうと『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』、最近では『ハウス・ジャック・ビルド』のラース・フォン・トリアーがあげられる。

ラース・フォン・トリアーよりもストーリー性に乏しく、演出面に力を入れている印象があり、それは後述したい。
彼は一貫してカタストロフをモチーフとして映画作りをしている。
映画はキャラの変化・成長を描くもの。多くの映画はスポーツの大会で優勝したり、お気に入りの異性と付き合えたり、といったストーリーでキャラの変化を描いてカタルシスを与えようとする。

彼は真逆で、正常な人間が壊れていく様を描く傾向にある。
理由としては人生がカタストロフィックなものだからと語っている。例えば災害であったり、戦争であったりなど。
確かに人間に限らず、すべての生き物は老化する。つまり死(破壊)に向かって生きている。
カルト作家なんて言われているが、彼は人一倍リアリズムを追求しているに過ぎないのかもしれない。

キレイにまとめてみたが、どっちにしろ激しく人を選ぶ内容だ。
彼の作品を好む人種は変態か映画オタクかメンヘラか中二病あたりである。(もちろん私もその中に該当)

1996年の冬。廃墟の校舎に集まったダンサー22人は、リハーサルを終えて打ち上げを楽しんでいた。彼らはそれぞれ個人的な問題を抱えており、サングリアを飲みかわしながら会話を楽しんでいた。しばらくするとダンサーたちは高揚し出し、やがてトランス状態に陥る。彼らは自分たちが口にしたサングリアにLSDが混入していたと結論づけ、犯人探しを始める。

1996年という舞台設定は気になるところだが、理由の1つに実際の事件をモチーフにしている。(クスリやダンサーの設定は脚色)

オープニングのワンカット長回しのダンスパフォーマンスシーンは素晴らしい。
独創性なダンスでずっと見ていられる。

このシーンにのみ振付があり、その後のダンスはすべて即興となっている。
こういうカッコいいダンスを見ていると思わず踊りたくなってしまう。本気で映画を観ながらダンスを習いにいこうか考えてしまった。
そのくらい彼らは楽しげにパフォーマンスしている。
自己主張の素晴らしさが伝わってくる良いシーンだ。

YOUTUBEにダンスシーンがアップされていたので貼り付けておく。

しかし、こんな心地良さに浸れるのも一瞬だけ。
残念ながら、あとひたすらカタストロフとなる。

打ち上げに振る舞われた酒を口にしたダンサーたちの様子がどんどんとおかしくなる。
飲んでないやつにクスリが混入された疑いがかけられ、ここからはただただ不快感を覚えるシーンの連続。
痛みであったり、子供の甲高い声、不安定なカメラアングル。

ユニークで感心したのが、ある男が主人公の女の子に好意を持って何度も迫るのだが、その度に嫌悪な態度を取られる。
男の私からしたらものすごく不快に感じてしまい、ちょっと笑ってしまった。
恋愛が思い通り行かないときほどフラストレーションが溜まることはない。さすがはギャスパー・ノエである。
そのくせ、大して興味のない女が執拗に迫って来るのだから面白い。

カメラアングルに合わせて、字幕にも不快演出を施すのだから性格ワルイ。
本当に頭のおかしい人なんだと思う。

こんな内容でクセしかないが、たまには悪くないもの。
普通の優等生的な映画ばかり観ていると、たまには違ったツボを押して欲しくなる。

この映画、ただ不快なだけではなく、ギャスパー・ノエのアート的センスを随所に感じさせる。
音楽は素晴らしい。
過去作の『アレックス』のときもそう思ったんだが、観客をトリップさせるような独特の音楽はくせになる。
サントラが出るなら欲しいくらい。

あとは、スタッフロールの文字の装飾も凝っていて良かった。こういう細かい拘りは結構好き。
これはフランス在住の日本人デザイナー・トム・カンによるもので、ちゃんと彼らの個性に合わせて一人一人文字を作ったとのこと。

彼のテーマカラーである、赤と黒もこのイカれた世界観にマッチしていて良い。

本作はほとんど台本が用意されておらず、即興で演じられている。
役者経験のある者が数名程度で、ほとんどの演者がダンサーとなっているため、狙った演技ができないと判断してこういう演出にしたそう。
さらに彼は人に指図が好きではなく、人間操作が苦手だという。
こういったカルト作風なので圧倒的なこだわりがあり、何テイクも重ねる印象があったが意外と柔軟性が高いようだ。

なので、彼の映画は演出を楽しむものだと思っている。
もしあなたがこの映画に関心が沸いたなら、ストーリーより演出面に注目して楽しんでもらいたい。
役者の演技、映像作り、音楽など意外と見所は多い。

頻繁に観たくなるような類ではないが、作為的に不快を与えてくる作風もたまには悪くない。
楽しい映画を狙って作って、結果的に退屈なときほど不快なものはない。
が、狙って見せてくるというのは意外にも楽しめるものだと、本作を観て学べる。
人を不快にさせるのも技術を要するものだ。

不快をエンタメとした作品はコチラ。

■ハウス・ジャック・ビルト

CLIMAX クライマックスの作品情報

■監督:ギャスパー・ノエ
■出演者:ソフィア・ブテラ
■Wikipedia:CLIMAX クライマックス
■映画批評サイト「rotten tomatoes」によるスコア
TOMATOMETER(批評家):70%
AUDIENCE SCORE(観客):67%

CLIMAX クライマックスを見れる配信サイト

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※2019年11月現在

CLIMAX クライマックスと関連性の高いおすすめ映画

CLIMAX クライマックスの裏ジャンルである【難題に直面した平凡な奴】に分類される映画。

『アレックス』★★★★☆4
マルキュスとピエールはパリのゲイクラブに押し入り、見つけた一人の男に凄惨な暴力を加える。マルキュスは婚約者であるアレックスが地下道でレイプされたことを知り、逆上して犯人を探していたのだ。

ストーリーはなんてことのない復讐劇。
原題の「ひっくり返せない(不可逆、取り返しがつかない)」がテーマとなっているが、そんなことよりもこの映画、別の見所が非常に多い。

CLIMAXと同様で、この映画も台本は4ページでセリフはほとんど即興。
そう思って役者のセリフを聞いていると結構楽しいものがある。

物語は時間軸を逆転させており、なんとエンドロールから始まるというアホっぷり。

CGの使い方もうまい。
走る車のなかにいるキャラを窓越しに出たり入ったりして撮るカメラアングルはアクロバットで面白い。
冒頭のワンカットのバイオレンスシーンもなかなか迫力がある。
こういう自然なCGの扱い方が地味に効果的。
すべてがニセモノではなく、本物の中にニセモノを忍ばせるというのが良いのだ。

CLIMAXと比べるとショッキングなシーンが多いが、この映画も演出面を楽しんで観てもらいたい。

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Amazonプライムビデオ:○(Blu-ray)
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※2019年11月現在

-④難題に直面した平凡な奴

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名前:柴田
年齢:30代
小説家志望。
趣味は映画、読書、ゲーム(最近はスプラトゥーン2)、お笑い、筋トレなど。
長所は人を楽しませることに一生懸命、短所は顔が丸い。